重症低血糖を経験した2型糖尿病患者は転倒リスクが2倍以上に ARIC研究

2020.09.17
重症低血糖の既往があると転倒リスクが2倍――ARIC研究
 重症低血糖を経験したことのある2型糖尿病患者は、転倒のリスクが2倍以上に上昇することが明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のAlexandra K. Lee氏らによる前向きコホート研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」9月号に掲載された。

 高齢糖尿病患者の低血糖は転倒リスクを高めると考えられるが、その関連を前向きに調査した研究は少ない。そこでLee氏らは、アテローム性動脈硬化症のリスクを検証しているコホート研究「The Atherosclerosis Risk in Communities Study」(ARIC研究)の登録者データを用いて、両者の関連を前向きに検討した。

 解析対象は、1996~1998年にARIC研究に登録された2型糖尿病患者1,162人。ベースライン登録の以前、および登録後13.1年(中央値)の追跡期間中に発生した重症低血糖イベントと、追跡期間中の転倒リスクの関連を解析した。

 重症低血糖は、医療処置を必要とする低血糖とし、具体的には、入院、救急部門の受療、または救急車の要請を要したものと定義した。転倒は、1996~2013年までの医療請求データから把握した。解析対象者のうち、ベースライン以前または追跡期間中に重症低血糖を起こしたのは149人だった。

 転倒の粗発生率は、重症低血糖の既往のない患者では100人年あたり2.17(95%信頼区間1.93~2.44)だった。それに対し、重症低血糖の既往がある患者では8.81(同6.73~11.53)だった。

 Cox回帰分析により背景因子を調整した結果、重症低血糖の既往のある患者の転倒リスクは、既往のない患者の2倍以上高いことが分かった(ハザード比2.23、95%信頼区間1.61~3.07)。この関連は、年齢、性別、人種、BMI、糖尿病の罹病期間、身体機能障害で層別化したサブグループ解析でも一貫して認められた。

 以上より著者らは、「糖尿病患者の重症低血糖は、転倒リスクと関連している」とまとめるとともに、「高齢糖尿病患者の血糖管理に際しては、転倒リスクを考慮して管理目標を個別化する必要がある。低血糖の既往と将来的な低血糖リスクを評価することが、高齢患者の転倒に対する効果的な予防介入につながる」と述べている。

[HealthDay News 2020年9月4日]

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