「1型糖尿病を根絶するための研究」を支援 日本IDDMネットワーク

 1型糖尿病患者を支援する活動を展開している認定NPO法人「日本IDDMネットワーク」(理事長 井上龍夫、本部 佐賀市)の取り組みに、全国から注目が集まっている。
1型糖尿病を治る病気にする
 「日本IDDMネットワーク」は1型糖尿病とインスリン依存状態(IDDM)の患者と家族を支援している認定NPO法人。本部を置く佐賀県のふるさと納税などを活用し、1型糖尿病の根絶に向けた研究を支援する活動を展開している。

 同法人が取り組むプロジェクトは、1型糖尿病の治療法の確立を支援し、「1型糖尿病を治る病気にする」ことを目指すというもの。
子供たちを注射から解放する挑戦
「1型糖尿病研究基金」を設立
 1型糖尿病は、現在の医療では根治できない難病だ。原因不明で突然、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊されることで発症する。小児期に発症することが多く、発症すると生涯にわたり毎日4~5回の注射あるいはポンプによるインスリン補充が必要となる。

 糖尿病患者の大半を占める2型糖尿病に対し、1型糖尿病の発症率は10万人当たり1~2人と少なく、患者と家族の精神的、経済的負担は深刻だ。

 日本IDDMネットワークは2005年に「1型糖尿病研究基金」設立し、1型糖尿病の根絶(予防+根治+治療)を目指す研究を支援している。2019年4月現在で計56件、2億8,880万円の研究費助成を行っている。

 同法人への直接の寄付や、佐賀県庁への「日本IDDMネットワーク指定」のふるさと納税などで、全国から支援を得ている。認定NPO法人への寄付は税制優遇措置が受けられる。
1型糖尿病の根治治療を開発する研究
 IDDMネットワークが4月2日に発表した、助成を決定した研究は次の通り――。

○1型糖尿病モデルマウスを用いた新規インスリン基礎分泌促進ペプチド(タークペプチド)の前臨床研究
研究代表者:佐伯久美子(国立国際医療研究センター研究所・室長)
1型糖尿病を発症しても多くの患者は長期間インスリン産生細胞である膵β細胞が残存していることが分かっている。この研究はその残存β細胞の機能を向上させる安全な飲み薬の開発を目指したもの。この研究によりインスリン分泌を復活させ、さらに自己免疫作用による攻撃にも抵抗力がつくことで、移植医療への応用にも展開されることが期待される。

○1型糖尿病に対するIL-7R標的Antibody-drug conjugate(ADC)の開発
研究代表者:安永正浩(国立がん研究センター先端医療開発センター・新薬開発分野ユニット長)
1型糖尿病の主な原因である「自己免疫」を制御する新しい治療法に挑戦する研究。自己免疫のメカニズムの解明とその暴走を制御する薬剤開発はこの病気の本質に迫る治療法であり、将来的には再生医療との組み合わせで根本的な治療法開発につながることが期待される。

○1型糖尿病に対する根治治療としての自己由来脂肪幹細胞から作成したinsulin producing cell自家移植法臨床応用に関する研究開発
研究代表者:池本哲也(徳島大学病院消化器・移植外科特任准教授)
1型糖尿病の有力な治療法候補である「膵島移植」は膵島の提供者(ドナー)不足が現実的な障害になっている。この研究は患者自身の皮下脂肪から膵島細胞を作成し、患者自身に移植する自家移植を目指したもので、この研究によりドナー不足、免疫抑制剤使用などの現在の移植治療の課題を解決できる可能性がある。

○ヒト膵島を用いた膵β細胞量増大の実現に向けた研究
研究代表者:白川純(横浜市立大学医学部内分泌・糖尿病内科講師)
1型糖尿病患者にわずかに残っているβ細胞の量を増やすことで根本的治療につなげる研究。研究では、ヒトのβ細胞を使用して直接的にヒトに効果をもつ細胞量調節因子を見出すというアプローチをしている。この研究は糖尿病の大部分である2型糖尿病の根本的治療にもつながる可能性がある。
「針を刺さない血糖値センサー」
クラウドファンディングを開始
 日本IDDMネットワークは現在、「針を刺さない血糖値センサー」の開発に向けたクラウドファンディングへの支援を募っている。

 ライトタッチテクノロジーが製品化を目指している「針を刺さない血糖値センサー」は、小型で高輝度の赤外線レーザーを用いて、糖以外の血液成分の影響をうけない「中赤外光」を使い、血糖値を測定するというもの。

 現在の血糖自己測定(SMBG)は、穿刺器を使い指先などから血液を出し、それをもとに血糖値を測定する。測定のたびに指先を針で刺さなければならず、とくに1型糖尿病の子どもにとって、その痛みが負担になっている。

 「針を刺さない血糖値センサー」は、採血型の血糖測定の代用になるもので、患者を肉体的・精神的・経済的な負担から解放するものとして期待されている。

 同NPO法人は、その試作器の開発費用、臨床研究の費用、データ解析の費用などの資金を提供するため、クラウドファンディングでの支援を呼びかけている。
佐賀県のふるさと納税での寄付を呼びかけ
 日本IDDMネットワークは、富山大学附属病院の中條大輔特命教授が研究代表者として進める「発症早期1型糖尿病に対する免疫修飾療法の有効性と安全性に関する研究」への支援を、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングで呼びかけ、約1,000名の支援者から3,000万円を超える寄付を集めた。

 助成の対象となった、中條特命教授の研究は、1型糖尿病の原因である「自己免疫」を制御するため、薬剤を用いて自己免疫の制御を試みるという国内初のもの。3月18日に富山大学で贈呈式が行われた。

 また、1型糖尿病に関する研究に取り組む福岡大学基盤研究機関再生医学研究所の小玉正太所長らが進める「臨床応用にむけたバイオ人工膵島の長期生着に関する研究」にも、1,000万円の研究助成を行った。

 1月30日に開催された贈呈式では、日本IDDMネットワーク専務理事の大村詠一氏から福岡大学の山口政俊学長に目録が手渡された。

 さらに、京都府立大学大学院生命環境科学研究科動物機能学研究室の井上亮氏ら進める「バイオ人工膵島移植実現に向けた感染症検査体制の構築」の研究にも、2回目の助成も行った。

 京都府立大学で1月15日に開催された贈呈式には、京都府立大学の築山崇学長も出席。井上氏は、「バイオ人工膵島移植の実用化」の鍵となる安全性の確保や、感染症検査体制の構築実現に向けた意気込みを語ったという。
内容を一部修正しました(4月15日更新)。
[Terahata]

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