HbA1c8%が超えると心不全リスクが上昇 心筋梗塞既往患者の入院は9倍に

2014.05.01
 国立循環器病研究センター(国循)は、血糖コントロール不良群では心不全の入院が多く、特に心臓病を発症したことのある患者では、心不全を防ぐために良好な血糖コントロールが必要であることを、5年間の追跡調査で明らかにしたと発表した。

血糖コントロールが不良の患者では心不全入院が多い

 糖尿病患者が血糖コントロール不良の状態が続くと、心筋梗塞や脳卒中、腎臓病などに加えて、心不全の危険性も高まる。しかし、糖尿病の管理状態と心不全発症との関係は明らかでなく、心不全予防の観点から、どの程度の糖尿病管理が必要かは不明だった。

 そこで、国立循環器病研究センターの研究チームは、血糖コントロールが心臓病にもたらす影響を調べるために、2000年1月から2007年12月までに、糖尿病・代謝内科に紹介された608名の2型糖尿病患者を追跡調査し、入院が必要な心不全を発症した頻度を調査した。

 対象となった患者の平均年齢は66歳、68%が男性だった。8割が高血圧と脂質異常症を合併しており、5割が心筋梗塞や狭心症を有していた。研究チームは、入院が必要な心不全を発症した頻度をカルテで調査するとともに、もともとのHbA1cの値とその後の心不全入院頻度の関係を解析した。

 平均5.2年間の観察期間に、15%の患者が心不全で入院したが、事前に血糖コントロールが不良であるほど心不全入院が多いという結果になった。

 日本糖尿病学会は、合併症予防のための血糖コントロール目標を「HbA1c 7%未満」として、治療強化が困難な際の目標値を「8%未満」と定めている(「糖尿病治療ガイド2012-2013」)。また、厚生労働省の定める「健康日本21(第二次)」では、2013年度から2022年度までの10年間の具体的な目標として「血糖コントロール指標におけるコントロール不良者の割合の減少(HbA1cが8.4%以上の者の割合の減少)」を挙げられている。

 今回の研究でも、HbA1c値が8%を超えて悪くなると、心不全による入院も増え、特に心筋梗塞など心臓病の既往のある患者で糖尿病管理の影響が大きいことが示された。

 また、もともと心臓病がある患者は、特に血糖コントロールの影響が大きい傾向がみられた。過去に心臓病を発症したことのある患者(軽症と中等度以上)とない患者の3群に分けて解析したところ、心臓病の既往のある患者で特に血糖コントロールの影響が大きいことが判明した。
 さらに、心筋梗塞の既往のある方とない患者で、より詳細にHbA1c値を分けて解析したところ、心筋梗塞の既往がある患者では、HbA1cが「8%以上と6.9%以下」で心不全の危険性が高まる傾向がみられた。一方、もともと心筋梗塞の既往のない患者では、HbA1cが低い方が心不全が少ない傾向がみられた。
 「血糖コントロールは心不全予防の観点からも重要で、HbA1cを少なくとも8%未満に抑える必要性があります。この目標を達成することで心不全の発症も予防できる可能性が明らかになりました」と、研究チームは述べている。

 なお、「心臓病を合併した糖尿病患者に対してHbA1c7%未満を目指した治療を行う場合は、心不全を悪化させない指導法や治療法を慎重に選択することが重要となる」と付け加えている。

 この研究は、国立循環器病研究センターの岸本一郎糖尿病・代謝内科医長と小川久雄副院長らの研究グループによるもので、結果は医学誌「Diabetes Research and Clinical Practice」オンライン版に4月18日付で発表された。

国立循環器病研究センター
心不全(国立循環器病研究センター)

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