持効型インスリン「デグルデク」 夜間低血糖発現を抑制し血糖変動幅も縮小
2013.05.23
第56回日本糖尿病学会年次学術集会
既存の持効型溶解インスリン製剤の治療で血糖コントロールが困難な1型糖尿病患者を対象に、新規の持効型溶解インスリンアナログ製剤である「インスリン デグルデク」(以下、デグルデク)に切り替え、持続血糖測定(CGM)で評価したところ、血糖の変動幅が縮小し、夜間低血糖の発現も減少したことが報告された。加古川西市民病院の小林寛和氏らが、第56回日本糖尿病学会(5月16日~18日、熊本)で発表した。
既存の持効型溶解インスリン製剤の治療で血糖コントロールが困難な1型糖尿病患者を対象に、新規の持効型溶解インスリンアナログ製剤である「インスリン デグルデク」(以下、デグルデク)に切り替え、持続血糖測定(CGM)で評価したところ、血糖の変動幅が縮小し、夜間低血糖の発現も減少したことが報告された。加古川西市民病院の小林寛和氏らが、第56回日本糖尿病学会(5月16日~18日、熊本)で発表した。
デグルデクは、皮下に入るとマルチヘキサマーを形成し、投与部位に一時的にとどまる。マルチヘキサマーから亜鉛が放出されることで徐々に単量体が解離し、ゆっくりかつ持続的に血中に移行する。この作用持続化の機序により、デグルデクは1日1回の投与で血糖降下作用が24時間を超えて持続する。 一方、従来の持効型インスリン1日1回投与では作用が24時間持続せず、1日2回投与を必要となり、また作用のピークがあるため、就寝前投与で夜間から早朝の低血糖発現が懸念される場合がある。 今回の検討の対象となったのは、血糖コントロールが不十分の1型糖尿病患者のうち同意が得られた4例で、それまで投与していた持効型インスリン製剤をデグルデクに切り替え、切り替え前後における血糖値の変動をCGMなどにより確認した。 入院の3人(症例1、2、3)はカーボカウントにもとづき超速効型インスリンの投与量を調節し、変更前後でCGMを実施した。外来の1人(症例4)は血糖自己測定(SMBG)で変更前後の血糖値の変化を評価した。 症例1 47歳女性(糖尿病罹病期間17年、糖尿病神経障害あり、HbA1c10.2%)
・持効型インスリンとしてインスリン デテミル14単位を就寝前に行っていた。これを同単位のデグルデク(就寝前投与)に切り替えた。
・切り替え前日の平均血糖値は214.0mg/dLだったが、デグルデクへの切り替え2日後は165.7mg/dLに改善した。
・平均血糖変動幅(MAGE)は69mg/dLから60.5mg/dLに、血糖値変動の大きさを示す指標であるM値も149.7から37.9にそれぞれ改善した。
・CGMで評価したところ、切り替え前には無自覚性の夜間低血糖を発現していたことが判明したが、デグルデクに変更後2日には夜間低血糖の発現は認められなかった 症例2 38歳女性(糖尿病罹病期間1年、糖尿病合併症なし、HbA1c9.2%)
・持効型インスリンとしてインスリン グラルギンの1日2回投与(朝4単位、就寝前14単位)を行っていた。これをデグルデクの就寝前1日1回投与(18単位)に切り替え、2週間程度で12単位まで減量した。
・血糖値は134.2mg/dLから117.9mg/dLに改善した。
・MAGEは125.5mg/dLから102.7mg/dLに、M値は94.3から50.5へと改善した。 症例3 41歳女性(糖尿病罹病期間6年、糖尿病合併症なし、HbA1c8.2%)
・グラルギンの1日1回投与(就寝前6単位)を行っていた。これを同単位のデグルデク(就寝前投与)に切り替えた。
・血糖値は193.0mg/dLから変更3日後150.3mg/dLに低下した。
・MAGEは140.0mg/dLから123.8mg/dLに、M値は99.9から35.0へと低下した。 症例4 35歳女性(罹病期間17年、糖尿病合併症なし、HbA1c7.7%)
・変更前はグラルギンを朝11単位、就寝前に13単位を投与していた。これを、デグルデク就寝前20単位に切り替えた。
・SMBGによる平均食前血糖は変更前の153mg/dLから変更後3日間の平均は108mg/dLに改善した。
・デグルデク変更後には低血糖発現頻度も減少した。 小林氏は、1型糖尿病で(1)頻回の夜間低血糖が起こる患者、(2)1日の血糖変動が大きく食前血糖値が安定しない患者、(3)持効型インスリンを複数回投与している患者に対しては、デグルデク導入を検討してもよいのではないかと提案している。「糖尿病患者の治療戦略に新たな道を切り開く可能性がある」と述べ、デグルデクに期待を示した。
第56回日本糖尿病学会年次学術集会
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]