【新型コロナ】新型コロナウイルスを5分以内に検出 超高感度・世界最速で検出する革新的技術を開発 理研・東京大・京都大

2021.04.21
 新型コロナウイルスを世界最速の5分以内に検出する技術を開発したと、理化学研究所、東京大学、京都大学の研究グループが発表した。
 従来の抗原検査の「迅速・簡便さ」とPCR検査の「感度の高さ」を両立させた新しい診断法で、短時間で大量の検体を診断することが可能だという。
 企業と連携して2年程度での実用化を目指す。

新型コロナウイルスを世界最速の5分以内に検出
汎用的な感染症診断技術としての展開に期待

 理化学研究所、東京大学、京都大学の研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)由来のウイルスRNAを「1分子」レベルで識別して、5分以内に検出する革新的技術の開発に成功したと発表した。

 研究成果は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの超高感度・迅速診断装置の開発を含む、次世代の感染症診断法の核心技術としての応用展開が期待できるとしている。

 現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染診断では、主にタンパク質抗原を検出する方法(抗原検査)とウイルスRNAを増幅して検出する方法(PCR検査)が利用されており、それぞれスクリーニング、確定診断など用途に応じて使い分けされている。

 感染が疑われる場合、抗原検査を用いたスクリーニングが行われる。抗原検査は30分程度と迅速かつ簡便にウイルスを検出できるため、スクリーニングには適しているが、検出感度や特異度の低さに起因する検出エラーの多さが問題となっている。

 一方、次のステージの確定診断として用いられているPCR検査では、専門的な技術や装置を用いて検体からRNAを精製し、さらに増幅の過程を経て検出にいたる。PCR検査は感度が優れ、確定診断に適しているが、検出の前処理に最短で1時間程度がかかること、また増幅に起因する検出エラーも発生することから、大量の検体を迅速に解析し、診断につなげることが困難だ。

 そのため、PCR検査の「感度の高さ」と抗原検査の「迅速・簡便さ」を両立させた新しいウイルス検出法の開発が急務とされている。

従来のCOVID-19の診断法
抗原検査はスクリーニング用として行われ、PCR検査で診断が確定される。
出典:理化学研究所、2021年

 そこで共同研究グループは今回、世界最先端の「マイクロチップ技術」と「核酸検出技術(CRISPR-Cas13a)」を融合させることで、世界最速の新型コロナウイルスの検出法「SATORI法」を開発した。

 マイクロチップ技術は、半導体製造プロセスを活用して微細構造をチップ上に造形する技術。今回の研究では、容積3fM(1fMは1000兆分の1モーラー)の世界最小レベルの微小試験管を約100万個集積したマイクロチップを造形した。また、CRISPR-Cas13aは、ガイドRNAと複合体を形成し、ガイドRNAと相補的な1本鎖RNAと結合すると活性化し、1本鎖RNAを切断するRNA依存性RNA切断酵素。

 SATORI法を用いると、5分以内でウイルスRNAを1個ずつ識別して検出できる。検出感度は5fMであり、新型コロナウイルス感染者の検体中のウイルスRNA量を検出する感度を満たしている。また、ランニングコストは9ドル程度と安価であるという利点もある。

 SATORI法によるウイルスRNAの検出原理は以下の通り――。

 (1) 核酸切断酵素Cas13aと蛍光レポーターの混合液にウイルスRNAを混ぜると、特異的にウイルスRNAとCas13aの複合体が形成される。  (2) 複合体が形成されるとCas13aの酵素活性がオンとなり、蛍光基と消光基がつながった蛍光レポーターが切断される。  (3) (2)の複合体と蛍光レポーターの混合液を、3fLの微小試験管が100万個集積されたマイクロチップアレイに小分けにして封入すると、Cas13aの切断活性に伴いウイルスRNAが存在する試験管だけ蛍光シグナルが1分以内に大きく上昇する。  (4) 蛍光シグナルの有無を二値化し、そのデジタル信号からシグナル有の微小試験管の個数をカウントする。カウントされる試験管の個数が検体中のウイルスRNAの個数に相当するため、ウイルスRNAの存在を1分子レベルで判別・検出できる。

SATORI法によるウイルスRNAのデジタル検出
出典:理化学研究所、2021年

 このSATORI法は、疾患バイオマーカーの検出などにも活用できるため、がんなどの基礎疾患の早期・層別化診断などを目指した、血液や尿などの身体への負担が少ない低侵襲性の液性検体の解析を基盤とした次世代の診断方法の基盤になるとしている。

 研究成果は特許出願済みで、今後は実用化を希望する企業との研究開発を進めていく予定。

 研究は、理化学研究所(理研)開拓研究本部渡邉分子生理学研究室の渡邉力也主任研究員、篠田肇研究員、東京大学先端科学技術研究センターの西増弘志教授、同大学大学院理学系研究科の濡木理教授、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の野田岳志教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、科学誌「Communications Biology」にオンライン掲載された。

SATORI法の将来展望
ウイルス感染症の多種・迅速診断から癌などの基礎疾患の早期・層別化診断に至る「核酸のデジタル検出」を基盤とした次世代のリキッドバイオプシーのイメージ。
出典:理化学研究所、2021年

理化学研究所 開拓研究本部 渡邉分子生理学研究室
東京大学 先端科学技術研究センター
京都大学 ウイルス・再生医科学研究所
Amplification-free RNA detection with CRISPR-Cas13(Communications Biology 2021年4月19日)

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