糖尿病を併発した心疾患患者が安全に運動療法を開始・継続 世界初のガイダンスを発表 運動中の血糖管理に焦点を当て低血糖にも対処

 糖尿病を併発した心疾患患者が、より安全にリハビリテーション運動を行うことができるようにするための世界初のガイダンスを、英国のユニヴァーシティ カレッジ ロンドンやスウォンジー大学、カナダのヨーク大学などの国際共同研究グループが発表した。
 運動の前中後の血糖コントロールの改善を支援し、運動への参加を阻むおそれのある血糖イベントのリスクを防ぐことを目的に、9つの推奨事項を提示している。
低血糖を抑えながら安全に運動 運動による血糖変動に焦点
 糖尿病を併発した心疾患患者が、より安全にリハビリテーション運動を行うことができるようにするための世界初のガイダンスが、英国心血管予防リハビリテーション協会(BACPR)、カナダ心血管予防リハビリテーション協会(CACPR)、国際心血管予防リハビリテーション評議会(ICCPR)、英国スポーツ・運動科学協会(BASES)によって承認された。ガイダンスの詳細は、「British Journal of Sports Medicine」に1月29日にオンライン掲載された。

 1型糖尿病(T1DM)および2型糖尿病(T2DM)は、心血管疾患の重要な前駆および併存疾患であり、両タイプの有病率は依然として世界的に上昇している。現在、欧州、北米、オーストラリアで心臓リハビリテーション(CR)に参加している参加者の約25%が2型糖尿病だと報告されている(全糖尿病患者の90%以上が2型糖尿病)。

 心疾患患者の血糖コントロールを改善することで、将来の心血管の健康関連の予後を独立して改善できるかについては議論があるが、血糖コントロールが十分に行われている患者では、効果的な運動プログラムの実施が勧められている。良好な血糖コントロールにより、運動中の急性血糖イベントのリスクを軽減するのにつながるだけでなく、心臓リハビリテーションの運動コンポーネントの必要な生理学的および心理社会的目的を達成するのに役立つ。

 運動療法に利点が多く、ストレス軽減や順守率・自己効力感の向上など、効果的な行動変容と強く関連する。そのため心臓に障害を抱える患者の健康とフィットネスを高めることを目的とした、運動・活動レベルの改善は、心臓リハビリテーションの中心を成すが、一方では、運動自体が障害となり患者を危険にさらすことが懸念されている。

 糖尿病を併発した心疾患患者にとって、低血糖につながる血糖変動は強く懸念される。低血糖はめまい、見当識障害、不安傾向など、多くの症状を引き起こす可能性があり、糖尿病患者が日常生活に運動を取り入れることを妨げる主な障壁となっている。

 低血糖の問題は、そうした心疾患患者が糖尿病のない患者に比べ、心臓リハビリテーション・プログラムを開始し継続する比率が低いことを説明している。

 新しいガイダンスでは、運動中の急性の血糖変動がもたらすリスクを減らすために、リハビリテーション活動中の血糖値の管理に焦点を当てている。その目的は、糖尿病患者に自信を与え、リハビリテーション運動を行い維持できる比率を高め、全体的な健康状態を改善することだ。

 ガイダンスでは、医療専門家に次のような項目に配慮して、明確なアドバイスを提供するよう求めている。
▼心血管疾患と糖尿病の両方の患者が使用している医薬品のあいだで発生する可能性のある相互作用。
▼そうした患者に最適な種類の運動、理想的な強度レベル、および運動を行うにあたり1日でもっとも安全な時間帯。
▼1型糖尿病と2型糖尿病のそれぞれの患者で異なる要件。

 「運動を安全に行うことは、心血管系の障害を抱える糖尿病患者の健康を改善するために不可欠だ。そうした患者が増えているなかで、患者のニーズを満たすような心臓リハビリテーション・プログラムが必要とされている」と、共同著者の1人であるスウォンジー大学のリチャード・ブラッケン氏は言う。

 ブラッケン氏は、同大学スポーツ運動科学部のA-STEM研究チームおよび同大学医学部糖尿病研究グループのライフスタイル研究グループのリーダーで糖尿病専門医だ。

 「医療専門家が糖尿病患者に運動プログラムを提供して継続してもらうために、安全で効果的に運動を続けられるという安心感を与えることが必要となる。新しいガイダンスが、心臓リハビリテーション計画を設計する助けになり、患者の全般的な健康を高めらるのに貢献することを願っている」としている。

New guidance on how cardiac patients with diabetes can exercise more safely(スウォンジー大学 2021年2月4日)
Acute glycaemic management before, during and after exercise for cardiac rehabilitation participants with diabetes mellitus: a joint statement of the British and Canadian Associations of Cardiovascular Prevention and Rehabilitation, the International Council for Cardiovascular Prevention and Rehabilitation and the British Association of Sport and Exercise Sciences(British Journal of Sports Medicine 2021年1月29日)
[Terahata]

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