呼気中のアセトンガスを精密に測定 糖尿病・肥満の診断などに応用 息を吹き込むだけで体脂肪の燃焼をモニタリング

 東北大学は、紫外ランプを用いた簡易な装置を用いて、呼気中のアセトンガスを精密に測定し、運動後の脂肪燃焼の様子をモニタリングすることに成功したと発表した。
 アセトンガスは、インスリン欠乏により糖質を取り込めず、先に脂質を消費してしまう糖尿病患者の呼気中に高い濃度で含まれている。そのため、この研究の手法を無侵襲の糖尿病診断へ応用することが期待される。
紫外ランプを用い呼気中のアセトンガスを精密に測定
 生体でエネルギー源として糖質より脂質が使用されるようになると、脂質代謝の副産物としてアセトンが生成され、血中アセトン濃度が増加する。この血中アセトンは、揮発性のアセトンガスとして呼吸にともない体外に放出される。

 そのため、呼気中のアセトンガス濃度をモニタリングすることにより、脂肪燃焼の様子を知ることができ、代謝能力の評価や脂質燃焼に効果的な運動法の開発へとつながると期待される。

 東北大学の研究グループは、紫外ランプを用いた簡易な装置を用いて、呼気中のアセトンガスを精密に測定し、運動後の脂肪燃焼の様子をモニタリングすることに成功した。

 研究グループは、真空紫外光という極端に波長の短い光にアセトンガスが強力に吸収されることに着目し、健常者の呼気中で濃度1ppm程度のアセトンを0.03ppmという高精度に測定することに成功した。

 研究は、同大学大学院医工学研究科・工学研究科の松浦祐司教授らの研究グループによるもの。研究成果は、科学誌「Sensors」に掲載された。
小型・低コストで、リアルタイムで測定可能
呼気中アセトン濃度の測定装置の外観

出典:東北大学大学院医工学研究科、2021年
 脂質代謝で生じるアセトンガスはごくわずかなため、脂肪代謝をモニタリングするためには高い測定精度が必要となる。

 これまで、ガスクロマトグラフィーを用いた質量分析装置が主に用いられてきた。しかし、これらの装置は大型かつ高価であるとともに、測定に時間がかかり、リアルタイムでの測定ができないという難点がある。そのため、小型・低コストで、かつリアルタイムでの測定が可能な装置の開発が望まれていた。

 研究グループは今回の研究で、中空光ファイバと呼ばれる細い管状の光ファイバの中に呼気を閉じ込め、そこへ真空紫外光を当てて、アセトンガスに光が吸収されて弱くなる度合いを測定した。

 測定装置を構成する機器は、真空紫外光を発生する重水素ランプ、中空光ファイバ、そして小型分光器の3つというシンプルな構成だ。これにより、小型かつ低コストを実現し、測定に要する時間も6秒程度で、ほぼリアルタイムでのモニタリングが可能になった。

 分光器は、さまざまな波長(色)が混ざった光を波長ごとに分解してその強さを調べる装置。ガラスでできたプリズムに光をあてると、光は屈折して出てくるが、波長によってその曲がる度合いが異なるため、波長ごとに分解することができる。
運動後の脂肪燃焼をモニタリングするのに成功 無侵襲の糖尿病診断へ応用も  この装置を用いて、実際に脂肪燃焼のモニタリング実験を実施した。実験では、30分の運動を15分の休憩をはさんで3回行った後、休息をとり、その間の呼気中アセトン濃度を測定した。

 その結果、呼気中アセトン濃度は運動中はほぼ一定であったのに対して、運動後に徐々に増加することがわかった。これは、主に運動後に脂肪燃焼が生じていることを示している。

運動後の呼気中アセトン濃度変化

出典:東北大学大学院医工学研究科、2021年

 また、この装置でアセトンと同様に脂質代謝の指標となるイソプレンも同時に測定することが可能であり、2つのガスを同時にモニタリングすることで、脂質代謝の詳細なメカニズムを解明できる可能性がある。

 アセトンガスは、インスリン欠乏により糖質を取り込めず、先に脂質を消費してしまう糖尿病患者の呼気中に高い濃度で含まれている。そのため、この研究の手法を、無侵襲の糖尿病診断へ応用することも期待できるとしている。

東北大学大学院医工学研究科
Vacuum ultraviolet absorption spectroscopy analysis of breath acetone using a hollow optical fiber gas cell(Sensors 2021年1月12日)
[Terahata]

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