テルモ、フランスDiabeloop社とインスリン自動投与制御システムの共同開発契約を締結

 テルモは11月17日、フランスDiabeloop社とインスリン自動投与制御システム(AIDシステム)の共同開発契約を締結したと発表した。今後、日本ではテルモが同システムを独占的に販売する。また将来的な海外展開も視野に入れているようだ。
 当編集部では、インスリンポンプの処方経験が豊富な川村智行先生(大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学)に、AIDシステムへの期待や展望について伺った。
パッチ式インスリンポンプを用いたAIDシステム開発を目指す 投与制御アルゴリズムとCGMの連携により

 インスリン自動投与制御システム(AIDシステム: Automated Insulin Delivery system)は、患者の状態に合わせた量のインスリンが、インスリンポンプから持続的に投与されるシステム。持続グルコースモニタリング(CGM: Continuous Glucose Monitoring)でリアルタイムに測定した皮下のグルコース濃度に連動することで、インスリンの自動投与を実現する。

 本システムには、CGMとインスリンポンプに加えて、適切な投与量を算出し両者を連動させる投与制御アルゴリズムが必要となる。

 今回テルモと共同開発契約を締結したDiabeloop社は、投与制御アルゴリズムを搭載したスマートフォン型の専用端末「DBLG1」を開発。同端末とCGM・インスリンポンプとを組み合わせたAIDシステムをすでに欧州で展開している。このアルゴリズムは、無線通信でCGMから得る5分ごとのデータに加え、患者の状態、血糖値の推移、食事・活動のデータ入力をもとに、適切なインスリン投与量を算出する。

 テルモは、2018年より日本で唯一のパッチ式インスリンポンプ「メディセーフウィズ」を販売している。また同社は、2019年より米Dexcom社のCGM「Dexcom G4 PLATINUMシステム」を日本で販売している。

 今回の共同開発契約にもとづき、テルモのパッチ式インスリンポンプ「メディセーフウィズ」、Diabeloop社の「DBLG1」、Dexcom社のCGMが連動するAIDシステムの日本での実現を目指すとしている。

 今後、臨床試験や日本での製造販売承認を見据えた開発を両社で進め、本共同開発の完了後、日本ではテルモが同製品を独占的に販売する。また、将来に向けて海外への展開も両社で検討していくという。

メディセーフウィズとDBLG1でのAIDシステムイメージ
出典:テルモ株式会社プレスリリース

 今回、当編集部では、開発が目指されるパッチ式インスリンポンプによるAIDシステムへの期待や展望について、川村智行先生(大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学)に伺った。

日本初のチューブフリーポンプ「メディセーフウィズ」

 テルモのパッチ式インスリンポンプ「メディセーフウィズ」(MEDISAFE WITH)は、糖尿病患者の日常的な活動を制限せずに治療できるよう、2018年に同社が発売した日本初のパッチ式インスリンポンプだ。皮下に留置したプラスチック製のカニューレを通して、インスリンを持続的に投与する。

 インスリンのカートリッジやポンプ機能を手のひらサイズ(ポンプ本体は長さ77.9mm x 奥行40.1mm x 幅18.9mm)に集約させ、インスリンを注入する機器と操作するコントローラを分けることで、体に装着する機器は34gと軽量*でチューブフリーな設計に仕上げられている。
*ポンプ本体、カートリッジ、ホルダー。インスリンは含まず

 投与操作は、無線通信でタッチパネル式のリモコンによって行い、基礎投与(べーサル)や追加投与(ボーラス)などの各種設定を場所や服装を気にせず実施できる。

 同社は、患者が自身の生活に合わせた治療をできるように、パッチ式で使い勝手に工夫を施したメディセーフウィズをグローバルでも展開し、これからも、患者のより良い未来の実現を目指すとしている。

メディセーフウィズ装着イメージ
出典:テルモ株式会社プレスリリース

メディセーフウィズのリモコン(左)とポンプ本体(右)
出典:テルモ株式会社プレスリリース

AIDシステムへの期待、展望

 日本ではすでにインスリンポンプ(ミニメド640Gシステム、日本メドトロニック)とCGMを連携させたSAP(Sensor-Augmented Pump)療法が使用可能となっている。
「SAP療法では、得られたグルコース値をインスリンポンプの画面で確認することが可能です。またグルコース測定値が事前に設定した下限値に近づくとインスリンの自動投与を一時停止し、測定値が回復すると投与を再開する機能があります」と川村先生は言う。

 では、SAP療法とパッチ式インスリンポンプによるAIDシステムの違いは何だろうか。今回テルモとDiabeloop社が共同で開発に取り組むAIDシステムの特徴は、インスリン投与制御アルゴリズムだという。
「SAP療法含む現在の日本のインスリンポンプ療法では、測定値に応じたインスリン投与量の自動調整まではまだ実現しておりません。基礎インスリンの投与があり、そのうえで追加インスリンの投与があります。さらにその中でも糖質インスリン、補正インスリンに分け、様々な要因を考えながらインスリン量を調整していく必要があります。一方、Diabeloop社のインスリン投与制御アルゴリズム「DBLG1」は、取得したデータをもとにそういった調整を自動で行います。このアルゴリズムを使用したAIDシステムの開発がもし実現すれば、生体内で膵臓が担っている本来のインスリン分泌機能に近い形となる可能性があると考えられます」

 テルモは、現在扱っている糖尿病領域における製品群に、AIDシステムを加えることで、日本の糖尿病患者へのさらなる貢献を目指すとしている。

テルモ株式会社
パッチ式インスリンポンプメディセーフウィズ
Insulin pump therapy, multiple daily injections, and cardiovascular mortality in 18168 people with type 1diabetes: observational study(British Medical Journal 2015年6月22日)
Management of diabetes mellitus: is the pump mightier than the pen?(Nature Reviews Endocrinology 2012年2月28日)
Effect of Sensor-Augmented Insulin Pump Therapy and Automated Insulin Suspension vs Standard Insulin Pump Therapy on Hypoglycemia in Patients With Type 1 Diabetes A Randomized Clinical Trial(The Journal of the American Medical Association 2013年9月25日)
Closed-loop insulin delivery in adults with type 1 diabetes in real-life conditions: a 12-week multicentre, open-label randomised controlled crossover trial(The Lancet Digital Health 2019年5月1日)
[dm-rg.net]

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編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
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