COVID-19無症状・軽症患者に対する「アビガン」の効果を検証 有意差なしも「有効な可能性」 藤田医科大

2020.07.15
 藤田医科大学は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した無症状・軽症患者を対象とした、アビガンの臨床試験の最終結果の暫定的な解析結果を公表した。
 通常投与群では遅延投与群に比べ、6日までにウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向がみられたものの、有意差には達しなかった。

アビガンのウイルス量低減効果を検討 最終報告

 「SARS-CoV-2感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を目的としたファビピラビルの多施設非盲検ランダム化臨床試験」は、同大学を代表機関とし、全国47医療機関で実施されている(責任医師:藤田医科大学医学部感染症科 土井洋平教授)。

 「アビガン」(一般名:ファビピラビル)は、すでに国内で抗インフルエンザウイルス薬として承認されている薬剤で、ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐというメカニズムを有している。インフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスであるSARS-CoV-2に対しても効果が期待され、臨床試験が実施されている。

 同研究は、3月上旬~5月中旬に、COVID-19患者計89名が参加して実施された。うち44名がアビガンの通常投与群(1日目から内服)、45名が遅延投与群(6日目から内服)に無作為割り付けされた。遅延投与群の内1名は割り付け直後に不参加を希望したため、臨床的評価は通常投与群44名、遅延投与群44名で行われた。

 また、ウイルス量に関する評価は、研究への参加時にすでにウイルスが消失していたことが後日判明した19名を除外し、通常投与群36名、遅延投与群33名で行われた。研究参加中に重症化または死亡した患者はいなかった。

 事前に規定された主要評価項目である「6日目まで(遅延投与群が内服を開始するまで)の累積ウイルス消失率」は、通常投与群で66.7%、遅延投与群で56.1%、調整後ハザード比は1.42(95%信頼区間 0.76-2.62、P値=0.269)だった。

 事前に規定された副次評価項目である「6日目までのウイルス量対数値50%減少割合」は通常投与群で94.4%、遅延投与群で78.8%、調整後オッズ比は4.75(95%信頼区間 0.88-25.76、P値=0.071)だった。

 事前に規定された探索的評価項目である「37.5℃未満への解熱までの平均時間」は通常投与群で2.1日、遅延投与群で3.2日、調整後ハザード比は1.88(95%信頼区間 0.81-4.35、P値=0.141)だった。

 アビガン投与に関連する有害事象としては、血中尿酸値の上昇が84.1%、血中トリグリセリド値の上昇が11.0%、肝ALTの上昇が8.5%、肝ASTの上昇(いずれも検査値異常)が4.9%にみられた。これらの異常値は、内服終了後(16日目または28日目)に再度採血された患者(38例)のほぼ全員で平常値まで回復していることが確認された。また、痛風を発症した患者はいなかった。

 以上より、通常投与群では遅延投与群に比べ6日までにウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向がみられたものの、統計的有意差には達しなかった。

 有害事象については、検査値異常としての尿酸値上昇がアビガン投与中の患者の大半にみられたが、投与終了後には平常値まで回復し、その他重篤な有害事象などはみられなかった。

 「今回の結果からアビガンのCOVID-19に対する有効性について結論を下すことはできないものの、ウイルス消失や解熱しやすい傾向はみられた。今後、患者数を増やして研究を行えば、有意差が出るのではないかと思う」と、研究者はコメントしている。

 同研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の研究課題「SARS-CoV-2感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を目的としたファビピラビルの多施設非盲検ランダム化臨床試験およびアビガンを投与された中等症・重症患者における臨床経過の検討を目的とした多施設観察研究」の一環として実施されている。

COVID-19関連研究開発課題情報―治療薬関連―(日本医療研究開発機構)

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