「メトホルミン」から発がん物質を検出? 厚労省や糖尿病学会は「服用を中止しないで」と注意喚起
2019.12.12
2型糖尿病患者の血糖コントロールのために処方されている「メトホルミン」について、一部の国で、発がん性物質であるNDMAが検出されたと発表された。
これを受けて、厚生労働省や日本糖尿病学会などは、「日本国内のメトホルミン製剤からNDMAは検出されていない」「糖尿病をコントロールするためにメトホルミンの服用を続けることは必要。医療従事者に相談することなく、メトホルミンを中止するの危険」と注意を呼びかけている。
これを受けて、厚生労働省や日本糖尿病学会などは、「日本国内のメトホルミン製剤からNDMAは検出されていない」「糖尿病をコントロールするためにメトホルミンの服用を続けることは必要。医療従事者に相談することなく、メトホルミンを中止するの危険」と注意を呼びかけている。
メトホルミンから発がん物質が検出?
厚生労働省は12 月9日に、「メトホルミン塩酸塩における発がん物質の検出に対する対応について」を発出した。 これは、シンガポール保健科学庁(HSA)が、ビグアノイド系血糖降下薬であるメトホルミン塩酸塩を含有する製剤から発がん性物質であるN‐ニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出されたことにともない、一部の事業者がメトホルミンの自主回収に着手したと発表したのを受けたもの。 厚労省は下記のように強調している――。
メトホルミンは血糖降下薬の中でも重要な薬剤の1つであり、服用の中止により様々な併発症のリスクを生じる可能性があります。
現時点において、日本国内のメトホルミンを含有する製剤からNDMAは検出されておらず、医療機関等に対しては、従前のとおりメトホルミンの処方を行っても問題ないこと、患者から相談を受けた場合には、糖尿病に対する治療の必要性について改めてご説明いただくとともに、服用を中止しないよう回答いただきたいことについて、周知方お願いいたします。
日本や米国では「がんリスクの上昇は懸念されない」
現時点では、日本で使用されているメトホルミン製剤から、発がん性物質であるNDMAは検出されておらず、国内各企業で調査中の段階だ。 メトホルミンの自主回収に着手したことを発表したHSAは、「検出されたNDMAの量は1日許容摂取量(0.0959μg/日)を上回るものの極微量であり、回収対象となっている製剤を短期間服用したことによるリスクはきわめて低い」と報告している。 また米国食品医薬品局(FDA)は、「1日許容摂取量のNDMAを70年間毎日摂取した場合であっても、発がんリスクの上昇は懸念されない」とアナウンスしている。日本糖尿病学会「メトホルミンの服用を中止しないで」
日本糖尿病学会は厚労省の連絡を受け、12月10日に公式サイトで医療従事者向けにお知らせを掲載。下記のことを強調している――。
現時点では我が国のメトホルミン製剤からは当該物質(NDMA)は検出されておらず、現在国内各社において調査中の段階です。メトホルミンは血糖コントロールに有効な薬剤であり、本事務連絡でも今のところ従前通りにメトホルミンを服用しても問題なく、患者さんから相談を受けた場合には糖尿病に対する治療の必要性を説明するとともに、同剤の服用を中止しないように回答するよう医療機関などに周知する旨要請しています。
なお、FDAも、医師や薬剤師に相談なく服用を中止しないよう注意喚起を行っている。
検出されたNMDAは微量で発がんリスクの懸念はない
FDAによると、米国では、降圧薬である「アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)」の一部や、胃酸分泌抑制薬である「ラニチジン塩酸塩」から、少量のNDMAが検出された。 FDAは他の薬剤についても調査中だが、メトホルミンなどの糖尿病治療薬に含まれるNDMAは微量だと報告している。さらに、12月5日の時点で、米国市場でのメトホルミンのリコールは発生していないとしている。 また、欧州医薬品庁(EMA)も、「服用の中止によりさまざまな合併症のリスクが生じる可能性がある」ことや、「このようなリスクは微量のNDMAによる影響より極めて重大である」ことなどをアナウンスし、服用を中止しないよう注意喚起を行っている。 メトホルミン塩酸塩における発がん物質の検出に対する対応について(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課/厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課 2019年 12月9日) メトホルミン塩酸塩における発がん物質の検出に対する対応について(日本糖尿病学会2019年 12月10日) Statement from Janet Woodcock, M.D., director of FDA's Center for Drug Evaluation and Research, on impurities found in diabetes drugs outside the U.S.(米国食品医薬品局(FDA) 2019年12月5日)[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]