アディポネクチンは善玉? 高血圧でのアディポネクチン高値は脳・心血管病リスクに関連

 高血圧患者における血中アディポネクチン高値は脳・心血管病の発症リスクに関連するという従来の予想を覆す調査結果を、熊本大学が発表した。
血中アディポネクチン値を高めることは必ずしも有益ではない
 脂肪細胞から分泌されるタンパク質「アディポネクチン」は、インスリンの働きを正常に戻す作用、動脈硬化を防ぐ作用、心臓を保護する作用など、生体に有益な多彩な生理活性をもつ"善玉"体内物質として注目されている。

 また、肥満、2型糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病では、しばしば血中のアディポネクチン値が低下することが問題視されており、それが生活習慣病の悪化や動脈硬化を促進し循環器疾患の発症リスクを高めることが懸念されている。

 そのため、血中アディポネクチン濃度を高めることは生活習慣病や循環器疾患の予防・治療に有益であると考えられており、それを目的とした新しい治療法の臨床応用が期待されている。

 しかし、熊本大学の研究では、患者の病態によっては血中アディポネクチン値を高めることが必ずしも有益ではなく、むしろ循環器疾患発症の高リスクと関連するという、予想外の結果が示された。

 研究は、熊本大学大学院生命科学研究部(医学系)の光山勝慶教授、同大学病院地域医療・総合診療実践学寄附講座の松井邦彦特任教授、同大学保健センターの副島弘文准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、英国のオープンアクセスジャーナル「Scientific reports」に掲載された。
高リスク高血圧患者では心血管疾患・腎疾患の発症リスクが上昇
 研究グループは、長寿科学振興財団の支援を受けて行った「ATTEMPT-CVD」研究で得られたデータをもとに、血中アディポネクチン濃度と高血圧患者での循環器疾患発症リスクとの関連性について解析した。

 「ATTEMPT-CVD」研究(研究代表者:小川久雄・元熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学教授、現国立循環器病研究センター理事長)は、全国の168医療機関が参加した、高リスク高血圧患者対象の多施設共同無作為化2群比較オープン試験。研究目的は、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)による降圧治療群とARB以外の降圧薬による治療群の効果を比較検討すること。

 「ATTEMPT-CVD」研究で追跡した外来高血圧患者1,228人を、血中アディポネクチン濃度の違いにより4グループに分け、血中アディポネクチン低値から順に、
・ Q1(アディポネクチン値:0.84-3.56 μg/mL)
・ Q2(同3.57-5.28μg/mL)
・ Q3(同5.29-7.87μg/mL)
・ Q4(同7.88-41.59μg/mL)
と分類した。

 これら4グループの3年間の追跡期間中の血圧値はほぼ同等だった。しかし、心血管疾患発症/腎機能悪化の複合評価項目であるイベント発生数はQ1で17例、Q2で18例、Q3で19例だった。アディポネクチン最高値グループであるQ4では35例であり著明に多くなった。

 さらに、性別、年齢、心血管病の既往有無、糖尿病の有無、尿中アルブミン排泄量、血漿BNP、糸球体ろ過率、喫煙の有無などの交絡因子で調整後も、Q4グループは独立して心血管疾患発症/腎機能悪化の複合評価項目のイベント発生と有意な関連があった(ハザード比1.949;95%信頼区間:1.051-3.612;P=0.0341)。

 以上から、血中アディポネクチン高値は、高リスク高血圧患者における心血管疾患・腎疾患の発症リスクと有意に関連していることが明らかになった。

 「これまでの研究では、血中アディポネクチン値を高めることが生活習慣病改善や健康寿命の延伸に有益であると考えられていたので、今回の高血圧患者での解析結果は予想外のものだった」と、研究者は述べている。
熊本大学大学院生命科学研究部生体機能薬理学
Total adiponectin is associated with incident cardiovascular and renal events in treated hypertensive patients: subanalysis of the ATTEMPT-CVD randomized trial(Scientific reports 2019年11月12日)
[Terahata]

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