糖尿病合併症の検査の実施率に全国で格差 糖尿病腎症の検査の実施率は最高31.6%、最低10.8% 国立国際医療研究センター

 国立国際医療研究センター糖尿病情報センターなどの研究グループは、「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」を用いて、治療ガイドラインで推奨されている糖尿病の検査の実施状況について、都道府県や施設でばらつきがあることを明らかにした。
 代表的な合併症である糖尿病腎症のための尿アルブミンまたは蛋白の検査を受けた患者は、都道府県別全体では19.4%で、最高が31.6%、最低が10.8%となり、20.8ポイントの開きがあった。
レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)のデータを解析
 研究グループは、全国で行われた保険診療のほぼ全ての情報が含まれる大規模データ「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」を用いて、2015年度に糖尿病薬の定期処方を受けている外来患者が、日本糖尿病学会のガイドラインで推奨されている検査を年1回以上受けている割合を測定した。

 NDBは、電子化レセプトのほぼ全てを含む大規模データベースであり、このデータを用いることで、全国の診療実態について知ることができる。

 その結果、約415万人の患者のうち、血糖コントロール指標(HbA1cまたはグリコアルブミン)を測定したのは96.7%だった。

 一方で、網膜症検査を受けたのは46.5%、尿定性検査を受けたのは67.3%、尿アルブミンまたは蛋白の定量検査を受けたのは19.4%であることが判明した。

 血糖コントロール指標の測定は良好であるものの、網膜症検査と尿検査の実施割合が低く、また詳細な解析においては都道府県別・施設別のばらつきがあることが明らかになった。

 これまで、一部の保険者や施設における適切な検査の実施割合は報告されいるが、全国の状況を調べた研究は今回がはじめて。

 研究は、杉山雄大(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センター 医療政策研究室長、筑波大学医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野 准教授、東京大学大学院 医学系研究科 社会医学専攻 公衆衛生学分野 特任研究員)、大杉満(国立国際医療研究センター 研究所 糖尿病情報センター長)、門脇孝(東京大学大学院 医学系研究科 糖尿病・生活習慣病予防講座 特任教授、帝京大学医学部附属溝口病院 病態栄養学講座 常勤客員教授)らによるもの。
尿アルブミンまたは蛋白の定量検査の実施率は19.4%
 解析した結果、網膜症検査を受けた患者は46.5%(都道府県別範囲:37.5-51.0%、認定有無別:44.8%(認定無し)対59.8%(認定有り))だった。

 診療報酬から尿検査の施行を観測できる200床未満の病院と診療所で診療を受けた患者のうち、尿定性検査を受けたのは67.3%(都道府県別範囲:54.1-81.9%、認定有無別:66.8%対92.8%)、尿アルブミンまたは蛋白の定量検査を受けたのは19.4%(都道府県別範囲:10.8-31.6%、認定有無別:18.7%対54.8%)だった。

 施設別指標の分布をみると、網膜症検査、尿検査の実施割合のばらつきがとくに大きく、尿定量検査は認定無しのほとんどの施設で行われていないと同時に、認定教育施設でも実施割合の低い施設が少なからずあることが判明した。

糖尿病患者における年1回以上の検査実施割合(糖尿病診療の質指標)
 全体(%)都道府県学会施設認定有無
最低(%)最高(%)認定無し(%)認定有り(%)
HbA1c・グリコアルブミン96.7%95.1%98.5%96.7%97.4%
網膜症46.5%37.5%51.0%44.8%59.8%
尿定性(200床未満のみ)67.3%54.1%81.9%66.8%92.8%
尿蛋白・アルブミン定量(200床未満のみ)19.4%10.8%31.6%18.7%54.8%
糖尿病医療のプロセスを向上するために
 ヘルスサービスリサーチや医療政策と呼ばれる研究分野では、医療の質を測定することを通じて、医療の質を向上させることを目指しいる。

 医療の質の評価は、良い診療を受けるための設備や人員が揃っているか(ストラクチャー)、行うべき処置や治療が行われているか(あるいは行われるべきでない治療が行われていないか)(プロセス)、合併症発症率がどうなっているか(アウトカム)に分けることができ、これらは相互に関連しているとされている。

 適切な検査や処方が行われているかどうかは、プロセス指標にあたる。

 これまで国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センターでは、一部の保険者から提供されたレセプト(診療報酬明細書)情報を用いて、糖尿病診療のプロセス指標を測定し、その推移を調べてきたが、全国における状況を調べた研究は今回がはじめてとなる。。

 なお、今回の研究は200床以上の施設における尿検査の実施割合が反映されていない、都道府県や施設間における合併症の重症度の違いが考慮されていないなど限界もあり、また、尿アルブミン定量検査に関しては、検査頻度や病名によっては診療報酬が償還されない場合もあり、そのことが影響して検査がなされない可能性もあるという。

 「これらの数値は糖尿病診療の質指標と捉えることができます。今後も定期的に診療の質指標を測定・公開することで、診療の質向上や、適切な医療政策の立案に役立てることが期待されます」と、研究グループは述べている。

国立国際医療研究センター 研究所 糖尿病情報センター
Variation in process quality measures of diabetes care by region and institution in Japan during 2015-2016: an observational study of nationwide claims data(Diabetes Research and Clinical Practice 2019年5月28日)
[Terahata]

関連ニュース

2019年08月22日
「SGLT2阻害薬」はケトアシドーシスに注意 「患者への説明も含めた十分な対策が必要」と呼びかけ 日本糖尿病学会
2019年08月21日
金沢大学がAIを活用した糖尿病性腎症重症化予防の共同研究を開始 日本人に最適な予防法を開発
2019年08月21日
神経障害性疼痛の痛みの原因物質を特定 痛みシグナルを伝達する末梢神経・脊髄後角に着目 大阪大
2019年08月21日
糖尿病における創傷治癒遅延の分子メカニズムを解明 CCL2が創傷治癒を促進 和歌山医大
2019年08月21日
「10月8日は、糖をはかる日」講演会2019 参加者募集開始!
2019年08月21日
「10月8日は、糖をはかる日」2019年写真コンテスト作品募集開始!
2019年08月13日
メトホルミンの禁忌は重度の腎機能障害患者(eGFR30未満)のみに 厚労省が安全性情報
2019年08月09日
「吸入インスリン」の第2相および第3相試験の結果を発表 MCIあるは軽度のアルツハイマー病の患者が対象 AAIC 2019
2019年08月08日
DPP-4阻害薬「スイニー」にLDLコレステロール低下作用 スタチン服用中のハイリスク2型糖尿病患者で
2019年08月08日
FDAが初の経鼻グルカゴン製剤を承認 重症低血糖治療の新たな選択肢

関連コンテンツ

編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
ページのトップへ戻る トップページへ ▶