糖尿病の運動療法に新展開 運動により増えるアディポカインが糖代謝を改善 ジョスリン糖尿病センター

 運動の効果はよく知られているが、米国のジョスリン糖尿病センターが分子レベルで運動の新たな効能を明らかにした。運動により脂肪細胞に劇的な変化が生じ、ポジティブな健康効果をもつアディポカインが血中に放出されるという。
TGF-β2による2型糖尿病の新たな治療法の開発を目指す
 研究は、ジョスリン糖尿病センター部長・上級研究員のローリー グッドイヤー氏らによるもので、「Nature Metabolism」オンライン版に2月11日付で掲載された。

 脂肪細胞はアディポカインと呼ばれるタンパク質を分泌している。アディポカインは肥満にともない増加し、多くは代謝に悪影響をもらたす。

 研究グループは、アディポカインの負の影響とは対照的に、運動に反応して脂肪細胞から分泌され耐糖能を改善する、「TGF-β2(transforming growth factor beta 2)」というアディポカインを特定した。

 TGF-β2には、耐糖能異常を改善するだけでなく、肥満マウスに投与すると血中脂質を低下させるなど、代謝を改善する作用があるという。

 「これまでは筋肉のプラス効果にのみ着目していたが、最近の研究で脂肪組織が運動に反応して有益な代謝効果をもたらすことが分かってきた。運動により重要で劇的な効果をもつタンパク質の分泌が増える」と、グッドイヤーは言う。

 研究グループは、人間とマウスの両方で一連の分子実験を行い、男性で運動後に応答能が増大するアディポカインとしてTGF-β2を特定した。追加試験で、脂肪組織において運動にともなう血流増加により、このTGF-β2のレベルが上昇することを確認した。

 TGF-β2が有益な代謝作用を促進することを確認するため、マウスにTGF-β2を投与する実験を行い、脂肪酸摂取の増加にもかかわらず耐糖能が改善するという、正の代謝作用を得られることを確認した。

 次に、マウスに高脂肪食を与え2型糖尿病にし、TGF-β2を投与したところ、高脂肪食による負の効果が逆転させた。「運動により分泌されるアディポカインが、身体に有益な代謝作用を及ぼすことが確認できた意義は大きい」と、グッドイヤー氏は言う。

 もうひとつの重要な発見は、運動中に放出される乳酸が一連のプロセスにおいて不可欠であることが分かったことだ。乳酸は運動中に筋肉から放出され、脂肪細胞へと移動して、TGF-β2の放出を惹起するという。

 TGFβ2の安全性を確認できれば、TGF-β2を使った高血糖の潜在的な治療法と、最終的には2型糖尿病の新たな治療法を開発できる可能性がある。

 「今回の研究は、運動やその代謝効果の考え方に革新的な変化を起こすとみられる。重要なのは、脂肪細胞が運動において重要な役割を果たしていることだ」と指摘している。

Protein Released from Fat Following Exercise Improves Glucose Tolerance, and Health(ジョスリン糖尿病センター 2019年2月11日)
TGF-β2 is an exercise-induced adipokine that regulates glucose and fatty acid metabolism(Nature Metabolism 2019年2月11日)
[Terahata]

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