肥満に対する新たな薬理学的アプローチを発見 骨から分泌されるGluOCが脂肪細胞の細胞死をコントロール

 骨が全身の糖・脂質代謝を活性化する内分泌機能でもあることが注目されている。福岡歯科大学の研究グループは、低カルボキシル化ないしは無カルボキシル化されたオステオカルシン(GluOC)が脂肪細胞を細胞死へと導くシグナル経路の発見した。
 このGluOCは膵島β細胞、肝臓、骨格筋、小腸、脳、性腺などさまざまな臓器に作用することが報告されている。研究グループは脂肪細胞におけるGluOCの影響がその濃度により異なることを分子レベルでで解明した。
肥満に対する新たな薬理学的アプローチとなる可能性
 骨は造血やミネラルの貯蔵庫としても重要な器官だが、最近の研究で全身の糖・脂質代謝を活性化する内分泌機能でもあることが分かってきた。この骨の内分泌機能を担うのが骨に含まれる「オステオカルシン(OC)」だ。

 OCはGlaタンパクであり、分子内に3ヵ所のカルボキシル化される領域があるが、ホルモンとしての機能をもつのは低カルボキシル化ないしは無カルボキシル化したOCだ。研究グループはこれを「GluOC」と呼び、これまでGluOCの糖・脂質代謝に対する影響を解析するために脂肪細胞株(3T3-L1細胞)を使用しその効果を検証してきた。

 その結果、低い濃度のGluOCは脂肪細胞において糖・脂質代謝活性化ホルモンであるアディポネクチンの発現を亢進させる効果があることを突き止め、その発現に至るまでのシグナル経路について明らかにした。

 この研究の過程で、GluOCを高濃度にすると、逆にアディポネクチンの分泌量が見かけ上、低下することを見出した。その時に約3割の脂肪細胞が細胞死することも発見。この高濃度GluOCによる細胞死は細胞膜の破綻、核の膨化および脂肪滴の小型化などを伴い、ネクローシス様の細胞死であっため、GluOC刺激により誘導されるネクローシスであることからネクロトーシスであると考えた。
 この細胞死が誘発されるシグナル経路を解析する中で発見したユニークな点はGluOCが作用した脂肪細胞に隣接する脂肪細胞に対して細胞死が誘導されるという点だ。つまり、GluOCが作用する脂肪細胞自体はアディポネクチンの発現が亢進し、代謝に有利な性質を獲得するが、同時に細胞膜上にFasLという細胞死を導く因子の発現を亢進させ、このFasLが隣接した脂肪細胞に働いて細胞死を誘導するというものだ。

 つまり、GluOCはすべての脂肪細胞に細胞死をもたらすのではなく、間引きするようにその細胞数を減少させ、生き残った多くの脂肪細胞は代謝活性の高い性質になると考えられるという。

 今回の研究は、メタボリックシンドロームの根源である肥満に対する新たな薬理学的アプローチとなる可能性がある。研究は福岡歯科大学組織学分野の大谷崇仁助教と稲井哲一朗教授、同大学の平田雅人客員教授および九州大学歯学研究院の松田美穂准教授らの研究グループによるもの。詳細は英国のオンライン科学雑誌「Cell Death & Disease」電子版に掲載された。

福岡歯科大学
Osteocalcin triggers Fas/FasL-mediated necroptosis in adipocytes via activation of p300(Cell Death & Disease 2018年12月13日)
[Terahata]

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