第61回日本糖尿病学会年次学術集会
運動は糖尿病治療の基本
第61回日本糖尿病学会年次学術集会とノボ ノルディスク ファーマは、年次学術集会の併設プログラムとして、5月25日にラン&ウォークイベント「Changing Diabetes Sunset RUN & WALK in Tokyo」を共催した。
同イベントは、糖尿病治療に欠かせない運動療法の実践と普及、健康増進を目的に行われている。2010年の年次学術集会から開始して、今回で8回目を数える。
イベントには学会参加者とその家族、330人が参加し、準備運動としてのラジオ体操、そして、ウォーキングやランニングを通して、糖尿病治療の基本である運動療法を実践した。
参加者は、徳川家の菩提寺として有名な増上寺周辺の緑豊かなコース(3.3Km)を、ライトアップされた東京タワーを思い思いに眺めながら、ウォーキングやランニングを行った。
ウォーキングで血糖値が下がる
ウォーキングなどの運動により、ブドウ糖や脂肪酸が消費され、血糖値が低下する。運動を続けると、血中のブドウ糖の量を調整するインスリンが効きやすい体質になる。
運動にはほかにも「体重が減る」「血圧が下がる」「中性脂肪が減る」「心肺機能が向上する」など、さまざまなメリットがある。透析療法を受けている人でも、適度な運動により透析効率が上がるという報告がある。
体が消費しているエネルギーのうち、大きな割合を占めているのは日常生活での動きだ。運動が苦手な人や、運動をしたくても忙しくてできない人などは、日常生活の中でこまめに動くことでも消費エネルギーを増やすことができる。
「掃除」「子どもと遊ぶ」「外に出る」「階段を使う」「コピーは自分でとる」などを習慣も、積み重ねればかなりのエネルギー量になり、血糖や体重のコントロール効果を期待できる。
運動は特別なものでなくとも効果がある
「運動は爽快感をもたらし、活動的な気分になるなど、メンタルな面でも効果を期待できます。心身のバランスが良くならないと、血糖コントロールの指標となるHbA1cはなかなか改善しません」と、第61回日本糖尿病学会年次学術集会会長の宇都宮一典先生(東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授)は強調する。
高齢者の中には体力が低下してすぐにはウォーキングができないという人も少なくない。その場合、運動療法は軽いものから始め、運動の強度や量を徐々に上げていくと効果的だ。また、先述した日常生活でのさまざまな種類の運動を組み合わせることで、体力が向上し、要介護の予防につながる。
「体重や血糖などのコントロールに加えて、ご高齢の方にとっては体力維持も大きな目標になります。1日の歩数の目標を決めたり、運動ジム通いを始めるといった特別なことをしなくても、運動は日常で行うことができます」と、宇都宮先生は述べている。
「家の近所を歩き回る、こまめに体を動かすなど、無理なく維持できる運動をみつけて、筋力が低下しないようにすることが大切です」。
ただ歩くだけでも効果がある
「現代の日本には運動をする習慣のある人とない人の格差があると感じています。運動をしない習慣は、食べ過ぎや不規則な生活など、負の循環につながりやすい」と、宇都宮先生は指摘する。
「運動というと、スポーツを思い浮かべるかもしれませんが、歩くだけでも効果があるのです。運動習慣のない人は、日常生活で少しでも体を動かすことを意識して、自分が楽しいと感じることを始めて欲しい」と、アドバイスしている。
スルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬、インスリン製剤で治療をしている人は、「食事を抜いたとき」や「激しい運動をしたとき」などに低血糖が起こることがあるので、注意を要する場合がある。
しかし、薬物療法を適切に行っていれば、低血糖はそう頻繁に起こるものではない。
網膜症や腎臓病、心臓病など合併症のある人でも注意が必要だが、適切に治療をすれば多くの場合で運動は効果的だ。気になる人は、事前に医師や医療スタッフに相談しておくことが大切だ。
デンマークに本社を置くノボ ノルディスクは、「Changing Diabetes」(糖尿病を克服する)という目標を掲げ、糖尿病の受診、診断、薬物治療、療養の各段階における障壁を軽減するためのさまざまな活動に、世界で取り組んでいる。