「基礎インスリン療法」に抵抗感を抱く2型糖尿病患者 克服する方法は? 日本イーライリリー・日本ベーリンガーインゲルハイム調査
2018.05.29
「基礎インスリン療法」は効果的な治療法だが、多くの2型糖尿病患者は抵抗感を抱いている。
開始するために必要なものは、医療者が「注射への不安を払拭」するために適切に説明することだと、日本イーライリリーと日本ベーリンガーインゲルハイムが実施した国際観察研究「EMOTION」で示された。
開始するために必要なものは、医療者が「注射への不安を払拭」するために適切に説明することだと、日本イーライリリーと日本ベーリンガーインゲルハイムが実施した国際観察研究「EMOTION」で示された。
第61回日本糖尿病学会年次学術集会
日本ベーリンガーインゲルハイム
第61回日本糖尿病学会年次学術集会
基礎インスリン療法を開始するために必要なことは?
日本イーライリリーと日本ベーリンガーインゲルハイムは、5月に東京で開催された第61回日本糖尿病学会年次学術集会で、「2型糖尿病患者におけるインスリン療法に対する抵抗感の克服に関する調査(EMOTION):日本人部分集団解析」を発表した。 「EMOTION」は、成人の2型糖尿病患者を対象に、「基礎インスリン療法」を開始するときに感じた抵抗感をいかに克服したかを調査した、日本を含む7ヵ国で実施された国際観察研究だ。 調査の結果から、基礎インスリン療法を開始することに抵抗感をもつ2型糖尿病患者が治療を開始するには、医療者が患者に対し治療効果だけでなく、「注射への不安の払拭」についての説明を確実に行なうことが効果的であることが示された。基礎インスリン療法に抵抗感を抱く患者は多い
2型糖尿病患者では、注射に対する恐怖心などから、基礎インスリン療法の開始に抵抗感を抱くことはよくみられ、実際に医療者から基礎インスリン療法開始を勧められでも、約30%の患者が治療を拒否したという報告もある。 インスリンによる治療が必要であるにもかかわらず、治療開始が遅れた場合、血糖コントロールが悪化し合併症への進展が促されるおそれがある。この心理的抵抗感による障壁を克服するために、医療者がどのような対応をすれば良いかを調べた研究は多くはなかった。 そこで、イーライリリー・アンド・カンパニーとベーリンガーインゲルハイムは、基礎インスリン療法への抵抗感の克服を助け、治療開始に寄与する医療者の言動や出来事を特定することを目的に、日本を含む7ヵ国の594例の2型糖尿病患者を対象に、国際観察研究「EMOTION」を実施した。 この研究では、基礎インスリン療法に対し治療を開始した当初は消極的であったが、現在は治療を継続している成人の2型糖尿病患者を対象に、医療者によるどんな助けが効果的だったかを知るために、45項目で構成される質問票を用いて、オンラインで調査を実施した。 また、経験があると回答された項目についてはそれぞれ、治療開始を決断する助けになった度合いについても4段階で評価した。もっとも効果的なのは「注射手順の丁寧な説明」
その結果、45項目のうち、基礎インスリン療法開始に「非常に助けになった」「ある程度助けになった」と回答した患者の割合がもっとも高かったのは、「注射手順の丁寧な説明」(82.8%)だった。医療者による「注射への不安の払拭」が必要
これらの結果では、日本人および外国人患者ともに、医療者による「注射への不安の払拭」に関する言動が治療開始の助けになったとの回答が多い傾向が示された。 その他、基礎インスリン療法開始の助けとなったと回答された項目では、「インスリンを一生続ける必要がないかもしれないことを説明」「前向きな出来事があり糖尿病管理を改善すべきと実感」「インスリンに関するパンフレットや資料の提供」が日本人患者で特徴的に上位にみられた。 今回の調査結果は、医療者が状況に応じて、患者の気持ちに寄り添いながらインスリン注射や注射手順の説明を行うことが重要であることを示すもので、基礎インスリン療法に対する心理的抵抗感をぬぐえない2型糖尿病患者に対し、そのバリアーを克服するために医療者ができる働きかけ方についての重要な情報を示すものといえる。何が2型糖尿病患者を後押ししたか? インタビューも予定
「2型糖尿病患者におけるインスリン療法に対する抵抗感の克服に関する調査」(EMOTION)は、基礎インスリン療法開始を後押しする要因を明らかにすることを目的に、日本、英国、カナダ、スペイン、ドイツ、ブラジル、米国の7ヵ国の2型糖尿病患者を対象に、2016年から行なわれている国際観察研究。 第一段階では、基礎インスリン療法開始を後押しした要因を抽出するための予備的な質的インタビューを実施。 第二段階である、今回の調査は第一段階で得られた結果等から作成した調査票を用いて、基礎インスリン療法開始を後押しした因子を評価するため、定量的調査が実施された。7ヵ国の2型糖尿病患者に関する結果は、2017年の国際糖尿病連合(IDF)世界会議で発表し、また、日本人の2型糖尿病患者に関する日本人部分集団解析は、2018年の第61回日本糖尿病学会年次学術集会で発表された。 今後、第三段階の調査として、基礎インスリン療法開始を後押しした要因について、より詳細な情報を収集するための深層インタビューを予定している。 日本イーライリリー日本ベーリンガーインゲルハイム
第61回日本糖尿病学会年次学術集会
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]