「酸化ストレス」が減ればインスリン抵抗性は改善 脂肪組織の「酸化ストレス」が病的な肥満の原因
2018.04.20
大阪大学は、肥満であっても、酸化ストレスを除去すれば、肝臓の脂肪蓄積が減り、インスリン抵抗性が改善できることを明らかにした。
脂肪組織の酸化ストレスを減らす方法を開発すれば、肥満や2型糖尿病の新たな治療法となる可能性がある。
脂肪組織の酸化ストレスを減らす方法を開発すれば、肥満や2型糖尿病の新たな治療法となる可能性がある。
「脂肪肝」が糖尿病の原因のひとつ
糖尿病リスクが高まる原因のひとつとして「脂肪肝」(肝臓内に溜まる脂肪)が注目されている。 脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪に蓄積すると考えられてきたが、それ以外の肝臓、筋肉、膵臓などにも第3の脂肪ともいうべき「異所性脂肪」として蓄積し、インスリン抵抗性やインスリン分泌に関わっていることが分かってきた。 大阪大学は、肥満状態の脂肪組織では、増加した酸化ストレスによって脂肪肝などの異所性脂肪が蓄積が生じ、2型糖尿病の発症につながることを解明した。 酸化ストレスを抑制できれば、肥満であっても健康的でいられ、糖尿病などを予防・改善できる可能性がある。 研究は、大阪大学大学院医学系研究科の福原淳範寄附講座准教授(肥満脂肪病態学)、奥野陽亮助教(内分泌代謝内科学)らの研究グループによるもので、米国科学誌「Diabetes」に発表された。酸化ストレスを抑制すれば脂肪肝が改善
食べ過ぎや運動不足により肥満になると、血糖値を下げるインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が起こりやすくなる。 大阪大学の研究グループは、脂肪組織の酸化ストレスを抑制すると、インスリン抵抗性が改善され、肥満であっても健康的でいられるようになることを、マウスを使った実験で確認した。 脂肪細胞は「アディポサイトカイン」と呼ばれる生理活性物質を分泌している。アディポネクチンや炎症性サイトカインなどさまざまなものがあり、肥満になると、その分泌などに異常が起こり、肥満に伴う2型糖尿病や慢性炎症、動脈硬化などを発症しやすくなる。 肥満状態になった脂肪では、酸化ストレスが増加することが知られている。研究グループはこれまでに、肥満になると脂肪組織の酸化ストレスが増加し、肥満に伴う代謝異常が起こりやすくなることや、酸化ストレスがアディポサイトカインのコントロール異常を引き起こすことを明らかにしている。 研究グループは、脂肪組織特異的に酸化ストレスを制御したマウスを作出し実験を行い、脂肪の酸化ストレスは健康的な脂質蓄積を抑制し、肝臓への脂肪蓄積を増やし、インスリン抵抗性を悪化させることを明らかにした。健康的な脂肪蓄積が新たな治療に
肥満は過食や運動不足により引き起こされる。肥満といっても、インスリン抵抗性や代謝異常を合併する病的な肥満と、これらを合併しない健康的な肥満がある。 大阪大学の研究グループは、何が病的な肥満と健康的な肥満を区別しているかを解明しようとしている。 研究グループは、脂肪細胞特異的に発現するaP2遺伝子の転写制御領域を用いて、2種の抗酸化酵素(カタラーゼとSOD1)を過剰発現させることで、脂肪細胞の酸化ストレスを除去した遺伝子改変マウスを作成し、実験を行った その結果、脂肪細胞の酸化ストレスが減ると、脂肪が増えても肝臓への脂肪蓄積は減少し、インスリン抵抗性が改善することが分かった。 次に、脂肪細胞特異的に発現するアディポネクチン遺伝子の転写コントロール下に、Cre遺伝子を発現する遺伝子改変マウスを作成し、実験を行った。 その結果、脂肪が減少しても、肝臓への脂肪蓄積が増加すると、インスリン抵抗性が悪化することが分かった。 そのメカニズムとして、酸化ストレスによって、脂質の合成に関連する遺伝子の転写調節を行う転写因子の抑制されることで、脂質合成酵素の発現量が減少することを説明している。 脂肪の酸化ストレスを標的にし、代謝異常を起こさないようすれば、健康的な脂肪蓄積を誘導でき、肥満や2型糖尿病の新たな治療法の開発につながる可能性がある。 大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学Oxidative stress inhibits healthy adipose expansion through suppression of SREBF1-mediatedlipogenic pathway(Diabetes 2018年4月4日)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]