選択性が高く副作用の少ないDPP-4阻害薬の開発へ 酵素の立体構造を解明

 糖尿病薬であるDPP-4阻害薬のオフターゲットであり、炎症性細胞死に関与するヒトDPP-8、DPP9の類縁酵素の立体構造を高分解能で明らかにしたと、岩手医科大学が発表した。
DPP-4阻害薬の副作用を引き起こす「DPP-8/9」
 経口糖尿病薬として、ヒトDPP-4を分子標的とするグリプチン類の処方機会が急増している。

 DPP-4の類縁酵素のヒトDPP-8/9は、オフターゲットへの影響によりグリプチン類などの阻害薬で阻害され、副作用発現を引き起こすことから、DPP-8/9の立体構造解明が待たれている。

 また、DPP-8/9の阻害が炎症性カスパーゼ1の活性化を引き起こし、炎症性細胞死の一種であるパイロトーシスを引き起こすメカニズムも近年明らかになってきた。

 しかし、ヒトDPP-8/9が、どのようにカスパーゼ1の不活性型前駆体であるプロカスパーゼを活性化するのか明らかになっていない。
DPP-4の化合物の結合する構造を解明
 ヒトDPP-4は、血糖依存的にインスリン分泌を促進するグルカゴン様ペプチド1などのインクレチンの不活性化に関与している。このことから、DPP-4の作用を妨げる化合物は、インスリン分泌を持続させ、2型糖尿病治療薬として使われている。

 一方で、ヒトはDPP-8/9といったDPP-4によく似た構造をもつDPPを持ち、それらの阻害は薬の副作用の原因のひとつとなっていることが知られている。

 今回の研究の対象となったジペプチジルアミノペプチダーゼ(Dipeptidyl aminopeptidase; DPPもしくはDAP;EC3.4.14)は、おもに基質であるオリゴペプチドのN末端から2番目のアミノ酸残基を認識し、ジペプチドを産生する酵素。

 これまでに、Pseudoxanthomonas mexicana由来DAP IVとその近縁のStenotrophomonas maltophilia由来DPP-4の化合物の結合していない構造が2008年に決定されていたものの、化合物の結合している構造は解かれていなかった。
「DPP-8/9」の類縁酵素の立体構造を解明
 今回、化合物の結合した構造では、化合物の結合していない構造ではみえていなかった20アミノ酸残基ほどの領域が、αヘリックスという二次構造をとり、基質の認識に重要な役目をしていることが分かった。

 また、微生物DPP-4は、ヒトDPP-4に似ている酵素と考えられていたが、今回明らかにした二次構造を指標に、他のヒトDPPや微生物DPPなどと比較したところ、ヒトDPP-8/9に類似していることも分かった。

 この成果について研究グループは、「DPP-8/9を阻害せずDPP-4を選択的に阻害する副作用の少ない糖尿病薬、DPP-8/9を選択的に阻害することで抗腫瘍効果を有する薬剤および微生物DPP-4を選択的に阻害するような抗菌薬の開発への貢献が期待される」と述べている。

 この研究は、岩手医科大学薬学部の阪本泰光准教授、昭和大学薬学部の田中信忠准教授、長岡技術科学大学の小笠原渉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。

岩手医科大学薬学部
Crystal structures of a bacterial dipeptidyl peptidase IV reveal a novel substrate recognition mechanism distinct from that of mammalian orthologues(Scientific Reports 2018年2月9日)
[Terahata]

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