「汎用型高強度インターバル運動」で脳を活性化 認知症予防のための運動処方の開発を加速

 運動には、認知症を予防する効果があることが分かってきた。楽しくできる効果的な運動である「インターバル運動」は、脳を活性化し、気分を快適にすると注目されている。「インターバル運動」は、認知機能と脳内神経基盤を高めることが、筑波大学などの研究で明らかになった。
少しキツくても休み休みの運動で
認知機能アップ
 運動を習慣として続けると、身体の健康だけでなく、記憶力や注意・集中、計画・判断などの脳機能も改善できる。運動は認知症の予防策にもなると注目を集めている。

 筑波大学体育系の征矢英昭教授、邊坰鎬助教、ポーランドグダ二スク体育大学のSylwester Kujach助教、中央大学理工学部の檀一平太教授らの国際共同研究グループは、「インターバル運動」の効果を脳のメカニズムから解明する研究を発表した。

 「インターバル運動」は、高強度の運動と運動のあいだに低強度の運動や短い休息を挟む運動法。運動に慣れていない人でも無理な続けられ、運動意欲を向上させるのに効果的な運動として期待されている。

 これまでは、健康維持・増進のためには、ややキツイと感じる程度の中強度の運動が推奨されてきた。しかし、「運動する時間がない」「運動自体が楽しくない」などの理由で、運動習慣がない成人が7割に及んでいる。

 高強度の運動と低強度の運動を交互に繰り返す「インターバル運動」であれば、短期間で体脂肪を減らし、心肺機能を向上させ、筋肉をつけることができるという。

 2週間程度のトレーニングで筋肉のミトコンドリア機能を改善して、エネルギー効率を高められることが確かめられており、糖尿病の人にも有用な運動として注目を集めている。

運動習慣のない人でも効果的に行える運動法を開発
 征矢教授らは過去の研究で、糖尿病においても、中強度の有酸素運動により脳内のエネルギー代謝が改善し、認知機能の低下を抑えられることを確かめている。血糖コントロールが不良の状態が続くと、認知症のリスクが高まるが、運動が認知症の予防に役立つことが判明した。

 「インターバル運動」は2型糖尿病のほかにも、過体重や肥満、冠状動脈疾患(CAD)などの患者や、心筋代謝障害のリスクが高い高齢者に対して、持久力の増進や病態の改善効果をもたらすことが明らかとなってきた。

 しかし、従来の「インターバル運動」は、アスリートの体力向上を目的とした強度の高い運動で、体力の低い人や高齢者が行うのは難しかった。最近の研究では、「インターバル運動」の強度を低くすることで、体力のない人でも安全に行える新たな運動モデルとなることが分かっている。

 征矢教授らは「インターバル運動」が認知機能においても効果的であることを確かめるために実験を行った。実験では、光を使った脳機能イメージング法である「光トポグラフィ」と、実行機能を評価できる「ストループテスト」を行った。

 「光トポグラフィ」は光機能イメージング法とも呼ばれ、近赤外光を利用し、脳神経活動によって引き起こされる局所的な脳血流の変化をモニターする計測法。「ストループテスト」とは、"文字の意味"と"文字色"のように、それぞれ意味の異なる情報を同時に表示し、情報に反応するまでの時間や正確さを測るテスト。難易度を増すことで、脳内の情報処理にかかる負荷が分かる仕組みになっている。
「脳フィットネス」で認知機能と脳内神経基盤が高まる
 研究グループは、運動習慣がない25人の健常成人を対象に実験を行った。事前に持久性体力(漸増運動負荷試験)を測定し、参加者の最大有酸素運動力(MAP)の60%に相当する負荷を算出した。

 その後、参加者に運動と安静の2つの条件を無作為に割り当てられた順序で行ってもらった。「運動条件」では、2分間50W負荷でのウォーミングアップ後、MAPの60%負荷での自転車漕ぎ運動30秒と休息30秒を繰り返す「インターバル運動」を8セット行ってもらった(総運動時間6分)。「対照条件」である安静時には、運動の代わりに10分間の座位安静を保ってもらった。

 運動と対照のそれぞれの条件の前と15分後には、実行機能を評価できるストループテストを行い、課題中には、前頭前野の外側部を覆うように光トポグラフィを装着し、脳活動を表す指標として酸素化ヘモグロビンの濃度変化を計測した。

 その結果、「インターバル運動」を行うと、ストループ処理を反映する反応時間が、運動により有意に短縮していた。「インターバル運動」により、実行機能を反映するストループ処理の能力を高められることが分かった。

 次に、脳の活動部位を調べ、脳活動を詳しくみたところ、運動後には左の前頭前野背外側部の活動が高まっていた。この部位は脳の実行機能を担う中心的な領域であり、注意・集中や、ワーキングメモリなどに関わっている。

 また、運動によって覚醒度が増加しており、脳活動の亢進や課題をこなす成績の向上と一致していることも分かった。
「インターバル運動」が脳を活性化 誰でも行える効果的な運動
 「汎用型高強度インターバル運動」は、2型糖尿病、うつ病や認知症など、体力が低下している人でも安全に効果を高められる運動療法。研究グループはこの運動法の脳に対する影響をはじめて解明した。

 これにより、誰でも行える運動である「インターバル運動」が、実行機能を向上し、そのために必要な脳の部位(左脳の前頭前野背外側部)の活動を活性化することが明らかになった。

 これまで脳の実行機能の向上は低・中強度の運動を続けることで得られることが分かっていたが、「インターバル運動」でも十分な効果を得られることを示された。

 今回の研究は、体力レベルが低い糖尿病患者や高齢者などをターゲットにした認知症予防を目的とした新たな運動処方の開発を加速させると期待される。

 研究グループは今後、この運動効果を糖尿病患者などでも実際に得られるか、また、記憶など他の認知機能にも効果があるかという点も重要な課題として研究を続けるという

A transferable high-intensity intermittent exercise improves executive performance in association with dorsolateral prefrontal activation in young adults(NeuroImage 2017年12月5日)
筑波大学 体育系
筑波大学 運動生化学 征矢研究室
[Terahata]
編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
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