ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明 名古屋大

 名古屋大学の研究グループが、実験動物モデルを解析して、情動ストレスが高尿酸血症を促進する機序を明らかにした。ストレスが高尿酸血症の発症に関与することが知られているが、これまでその機序は不明だった。
情動ストレスは慢性内臓脂肪炎症を引き起こす
 情動ストレスは、高血圧、2型糖尿病などや、メタボリックシンドロームの発症・増悪に関与する。高尿酸血症・痛風も、例えば、夜勤などの職業・生活ストレスが増悪因子であること知られているが、原因は明らかではなかった。

 高尿酸血症は、尿酸の産生の亢進あるいは排泄の低下のため血中の尿酸値が上昇する病態で、30歳以上の男性では30%が罹患しているとされる。血液中の尿酸値が高くなると、高血圧、2型糖尿病や慢性腎臓病の頻度も高くなる。

 尿酸の濃度が上昇すると体内で結晶化し、関節や腎臓などで蓄積し、炎症の原因となり、関節において痛風発作を、腎臓において尿路結石や腎機能障害を引き起こす。

 これまで、研究グループはマウス拘束ストレスモデルを解析して、情動ストレスがメタボリックシンドロームと同様に、内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし、インスリン感受性、血栓傾向を増悪させることを報告してきた。

ストレスがXORを活性化、酸化ストレスを産生
 プリン体が代謝され尿酸が生成されるが、その代謝においてxanthine oxidoreductase(XOR)という酵素が重要な役割を果たしている。

 XORはプリン体代謝で最終段階の尿酸を産生する酵素。xanthine dehydrogenaseとxanthine oxidaseという2つの形態をとるが、後者は活性酸素も産生する。

 XORは肝臓、脂肪などにおいて、尿酸を最終代謝産物として産生するほか、酸化ストレスを産生する。

 マウス拘束ストレスモデルの解析を行ったところ、ストレスはXORを、内臓脂肪、肝臓、小腸で活性化させることが判明。XORの活性が上昇した結果、血中尿酸値増加、酸化ストレスの増加を認めた。

 これに伴い、内臓脂肪組織において、活性酸素を作り出す酵素であるNADPHオキシダーゼは増加し、superoxide dismutase(SOD)という活性酸素を除去する酵素は減少していた。その結果、脂肪組織と血液中において酸化ストレスは増加し、炎症性サイトカインの発現も増加した。

 今回の研究では、国際的に汎用されるマウス拘束ストレスモデルを解析した。同モデルでは、マウスを径3cmの容器で緩やかに拘束してストレスを与える。これまでの検討で、拘束を1日2時間、2週間繰り返し行うと、内臓脂肪に慢性炎症をきたすことを確認している。

 メタボリックシンドロームにおいては、細胞が肥大した結果、ストレスの病態においてはトホルモン(コルチゾル)や自律神経の刺激が、脂肪融解を惹起して遊離脂肪酸が増加する。

 遊離脂肪酸はマクロファージ、単球といった免疫担当細胞を活性化してTNF-αやIL-6などの炎症性サイトカイン(免疫システム細胞から分泌される生理活性タンパク)を脂肪組織より産生させる。

 脂肪組織と免疫細胞が相互作用の悪循環に入り、マクロファージ、単球の浸潤と炎症性サイトカン増加が続く状態が慢性内臓脂肪炎症だ。
XORが高尿酸血症の治療標的 フェブキソスタットが抑制
 尿酸代謝改善治療薬「フェブキソスタット」はXORを抑制し、尿酸値を低下させるのみならず、ストレスによって増悪した内臓脂肪炎症、糖代謝、血栓傾向を改善し、ストレスによって増悪していたインスリン感受性も改善することが判明した。

 血栓症の原因のひとつに、血液を凝固させる凝固因子という蛋白の増加が挙げられる。ストレスにより、凝固因子である組織因子と「PAI-1」(plasminogen activator inhibitor-1)が内臓脂肪において増加していたが、febuxostat投与で、これも用量依存性に減少した。

 出血を防ぐために、血液内は凝固因子という血液を凝固させるタンパク、あるいは一度できた血栓(凝固した血液の塊)が再び溶けことを抑制するタンパクが備わっている。前者のひとつが組織因子であり、後者のひとつがPAI-1だ。

 これまで研究グループは、マウス拘束ストレスモデルの解析で、ストレスは内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし、インスリン抵抗性、血栓症の原因となることを示してきた。

 ストレスは、自律神経、ストレスホルモンを介して、内臓脂肪の分解により、遊離脂肪酸の血中濃度を上昇させる。遊離脂肪酸は脂肪細胞を刺激して炎症性サイトカンの分泌を促し、脂肪組織において炎症を惹起する。

 高尿酸血症自体は自覚症状がない。しかし、今回の研究により、ストレスを感じることの多い現代人こそ、高尿酸血症を治療することで糖尿病・血栓症を予防・抑制できる可能性が示唆された。

 研究は、名古屋大学医学部附属病院検査部の竹下享典講師、名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学の室原豊明教授、メメット・イスリー大学院生、名古屋大学医学部附属病院検査部の松下正教授、修文大学の丹羽利充学長らの研究グループによるもの。英国科学誌「Scientific Reports」に4月28日付けで掲載された。

Xanthine oxidase inhibition by febuxostat attenuates stress-induced hyperuricemia, glucose dysmetabolism, and prothrombotic state in mice(Scientific Reports 2017年4月28日)
[Terahata]
編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
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