血糖値をコントロールする脂肪の高活性代謝作用を発見 バンティング賞を受賞
2016.06.20
米国糖尿病学会(ADA)のバンティング賞の今年の受賞者であるBarbara B. Kahn氏(ハーバード大学/ベス イスラエル ディコネス医療センター)の研究は、全身のインスリン感受性を調節するために脂肪細胞が他の組織と通信するメカニズムを特定する先駆的なものだ。
Kahn氏の主要な業績は、「レチノール結合蛋白4」(RBP4)を含む脂肪性グルコーストランスポーターが、インスリン感受性を高めインスリン分泌作用を促進するGLP-1を刺激する反炎症の脂質であり、アディポネクチンの分泌作用の重要なレギュレーターであることを解明したことだ。
脂肪GLUT4過剰発現(AG4OX)マウスでは、脂肪組織におけるGLUT4の選択的発現が全身と耐糖能において劇的な役割を果たしている。脂肪組織のGLUT4の存在量はインスリン感受性と相関する2型糖尿病の早期予測因子となるという。
さらにKahn氏はマウスを用いた実験で「脂肪酸ヒドロキシ化脂肪酸」(FAHFA)の血糖降下作用を確認し、これを同定するの成功した。FAHFAは脂肪酸のセンサー分子であるGPR120受容体と結合し、脂肪細胞のブドウ糖の取り込みをコントロールしている。体内のFAHFAの量を増やすことでGPR120が活性化すると考えている。
「30年前は脂肪組織が異所性脂肪沈着を防ぐストレージデポであることはほとんど知られていなかった。現在ではこれらの新規脂質の作用はヒトにおいても確認されている。これらは代謝酵素によって調節されており、2型糖尿病の新たな治療の標的となる可能性がある」と、Kahn氏は述べている。
バンティング賞を受賞したBarbara B. Kahn氏のインタビュー
第76回米国糖尿病学会(ADA2016)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]