新たな基礎インスリン「グラルギン U300」が夜間低血糖を減少 「ランタス」と同等の血糖コントロール
2015.06.12
日本人患者を対象に行った、「U300」(インスリン グラルギン[遺伝子組換え]注射剤、300U/mL)、または「ランタス」(インスリン グラルギン[遺伝子組換え]注射剤、100U/mL)を比較した臨床試験の結果が発表された。「U300」は「ランタス」と同等の血糖コントロールを維持し、夜間低血糖を減少させるという結果が得られた。
U300はランタスと比較して、同等の血糖コントロールを達成
サノフィは、日本人患者を対象に行った、「U300」(インスリン グラルギン[遺伝子組換え]注射剤、300U/mL)、または「ランタス」(インスリン グラルギン[遺伝子組換え]注射剤、100U/mL)を比較した臨床試験の結果を発表した。この試験について、ボストンで開催された第75回米国糖尿病学会(ADA)学術集会で発表された。 「U300」の商品名は「Toujeo」で、2015年6月11日時点で日本では未承認となっている。 今回発表されたのは、「U300」または「ランタス」を合計12ヵ月間にわたり投与した「EDITION JP 1継続投与試験」および「EDITION JP 2継続投与試験」の結果。 試験期間全体を通じて、U300は、ランタスと比較して、同等の血糖コントロールを達成し、夜間低血糖(1型糖尿病患者の試験では血糖値54mg/dL未満、2型糖尿病患者の試験では血糖値70mg/dL以下)の発現率を低下させた。1型糖尿病患者対象の試験 夜間低血糖が減少
血糖コントロールが不良の日本人1型糖尿病患者を対象に行った「EDITION JP 1試験」では、12ヵ月の試験期間中における夜間低血糖の曝露人年当たりの発現件数および1回以上の夜間低血糖を起こした患者数の割合は、両投与群間で同等だった。 より低い閾値(重症または血糖値54mg/dL未満)での夜間低血糖の曝露人年当たりの発現件数は、ランタス群に比べU300群で38%のリスク低下が認められた(RR 0.62、95% CI:0.39~0.97)。 この閾値での1回以上の夜間低血糖を起こした患者数の割合においてもランタス群に比べ、U300群で21%のリスク低下が認められた(RR 0.79、95% CI:0.64~0.98)。2型糖尿病患者対象の試験 夜間および24時間低血糖が減少 体重も減少
基礎インスリンと経口血糖降下薬の投与を受けても血糖コントロールが不良の日本人2型糖尿病患者を対象とした「EDITION JP 2試験」では、夜間低血糖(重症または血糖値70mg/dL以下)の発現率は低くなり、1回以上の夜間低血糖を起こした患者数の割合は27%のリスク低下した(RR 0.73、95% CI:0.55~0.97)。 さらに、夜間および1日(24時間)の曝露人年当たりの低血糖発現件数は、U300の方がランタスよりも一貫して低くなった(夜間:RR 0.41、95% CI:0.18~0.92、24時間:RR 0.64、95% CI:0.44~0.94)。 また、「ランタス」の投与を受けた患者では体重が微増したのに対し、U300の投与を受けた患者では体重がわずかに減少した(U300群:0.7 kg減、ランタス群0.5 kg増)。 「EDITION JP 2継続投与試験から得られたデータから、U300が日本人の2型糖尿病患者において持続的な血糖コントロールを達成することが明らかになった。この試験で得られた低血糖の発現率低下と体重に関する新たな知見は、日本人の2型糖尿病患者が長期的な目標を達成するためにU300が役立つ可能性を示唆している」と、横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教室の寺内康夫教授は述べている。 サノフィ[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]