「リナグリプチンは単独療法・併用療法でHbA1cを低下」京大・稲垣氏

2013.04.11
 今年3月に「2型糖尿病」の効能・効果を取得したDPP-4阻害薬リナグリプチン(商品名:トラゼンタ)の記者会見が、都内で行われた。共同販売を行っている日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーが主催した。

 トラゼンタは「2型糖尿病」の効能・効果の取得により、▽スルホニル尿素薬、▽チアゾリジン薬、▽ビグアナイド薬、▽α-グルコシダーゼ阻害薬、▽インスリン製剤、▽速効型インスリン分泌促進薬との併用が可能になった。

 トラゼンタの今回の新効能・効果の取得は、2010年7月9日付で発出された「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に基づく国内臨床試験の結果を受けたもの。併用療法に関する縛りのない「2型糖尿病」に拡大する動きは、各社で活発化しており、今年2月にノバルティス ファーマがエクアで承認取得したほか、田辺三菱製薬と第一三共が共同販売しているテネリアも2月末に承認申請している。

 会見では、京都大学大学院糖尿病・栄養内科学教授の稲垣暢也氏が、今回の承認の根拠となったトラゼンタの併用療法長期投与試験の結果を解説した。

 トラゼンタと血糖降下薬の併用時の評価を行った臨床試験は、(1)ビグアナイド薬(n=82)、(2)速効型インスリン分泌促進薬(n=66)、(3)チアゾリジン薬(n=74)との併用の他、(4)トラゼンタ+SU薬(143例)vsビグアナイド薬+SU薬(n=63)、(5)トラゼンタ+α-グルコシダーゼ阻害薬(n=85)vsビグアナイド薬+α-グルコシダーゼ阻害薬(n=61)―の5つが実施された。いずれも52週の治療期間が設けられた。

 1次評価項目の有効性については、ベースラインからHbA1cが低下し、12週、24週、36週まで低下が続き、その後52週の終了まで維持された。ベースラインHbA1c8.0%以上のサブグループを解析したところ、ベースラインからのHbA1cの平均変化量は、(1)ビグアナイド薬(-1.11%)、(2)速効型インスリン分泌促進薬(-1.10%)、(3)チアゾリジン薬(-1.05%)、(4)SU薬(-0.81%)、(5)α-グルコシダーゼ阻害薬(-1.18%)であった。

 2次評価項目の安全性については、なんらかの有害事象、薬剤との因果関係によると判断された有害事象、重度の有害事象などの発現率に各併用試験に差はなかった。低血糖については、(4)のSU薬併用試験でのみ多く認められた(143例中21例、14.7%)。

 稲垣氏は、対照群(ビグアナイド薬+SU薬)との間に低血糖の発現に差がなかったことを指摘。SU薬の併用において低血糖の発現頻度が高かったのは、SU薬によるものとの考えを示した。

 リナグリプチンは他のDPP-4阻害薬とは異なり、キサンチン骨格を有するユニークな薬剤だ。DPP-4受容体に対する親和性が高く、1日1回5mgという低用量でDPP-4阻害作用をもたらす。

 また、トラゼンタは、他のDPP-4阻害薬と異なり、胆汁排泄型である点が特徴となる。排泄経路が腎臓ではなく、主に糞中に未変化体や不活性代謝物として排泄されることから、腎機能が低下している患者にも用量調節の必要がない。

 ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)で治療中のアルブミン尿を呈する2型糖尿病患者対象の海外試験では、トラゼンタ投与24週後に血糖値が有意に改善した(プラセボ群とのHbA1cの差:-0.71%、P<0.0001)。尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の有意な低下も認められた(プラセボ群に対する変化量-29%、P=0.0305)。

 さらに、2型糖尿病患者における心血管疾患の発症抑制の点でも期待されている。日本を含む海外の第3相ランダム化試験のメタ解析から、心血管イベント発生リスク[ハザード比(HR)0.34,95%CI 0.16~0.70,P<0.05]の有意な減少が報告されている。

 心血管イベントを個別にみても、非致死性脳卒中(HR 0.11、95%CI 0.02~0.51)、非致死性心筋梗塞(同0.52、0.17~1.54)、不安定狭心症による入院(同0.24、0.02~2.34)、心血管死(同0.74、0.10~5.33)のいずれも、対照群に比べてリナグリプチン群で有意に低いことが示された。

 これらのエビデンスをふまえ稲垣氏は、トラゼンタは腎機能や肝機能が正常または低下している症例、高齢者、既存薬で効果不十分な症例例など、さまざまなタイプの2型糖尿病患者に、1日1回1錠で使える薬剤であるとの認識を示した。

日本ベーリンガーインゲルハイム
日本イーライリリー

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