米国糖尿病学会(ADA)と米国心臓学会(AHA)が共同で心血管疾患の予防キャンペーンを開始

2018.11.30
 米国糖尿病学会(ADA)と米国心臓学会(AHA)が共同で、キャンペーン「心臓から糖尿病を知ろう(Know Diabetes by Heart)」を開始した。
 糖尿病患者のエンパワーメントを引き上げるために、実践的なオンラインツールと情報を提供するという。

米国では心臓病が原因で80秒に1人が入院

 米国糖尿病学会(ADA)と米国心臓学会(AHA)が、心臓病と糖尿病との関連を広く社会にアピールするため、啓発キャンペーン「心臓から糖尿病を知ろう(Know Diabetes by Heart)」を開始し、ホームページの公開を開始した。

 心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患は、2型糖尿病患者の死因のトップになっている。糖尿病とともに生きる人は、そうでない人に比べ、心血管疾患で死亡する可能性が2倍に上昇する。しかし、患者の多くはそのことを知らない――。

 米国では、心臓病が原因で入院する糖尿病患者は80秒に1人、脳卒中が原因で入院する糖尿病患者は2分に1人に上る。また、60歳代の2型糖尿病患者では、心血管疾患により平均余命が平均12年短縮されている。

 しかし、米国で実施された45歳以上の2型糖尿病患者を対象としたオンライン調査によると、自分の心臓病や脳卒中のリスクについて、かかりつけの医師や医療スタッフと話し合っている患者は半分しかいなかった。

患者の多くは毎日の治療や管理が苦痛だと感じている

 「糖尿病の心血管疾患の関係は深く、どちらも深刻な公衆衛生上の問題となり、社会を脅かしている。ひとつの組織だけで対処できることではない」と、AHAのナンシー ブラウン氏は言う。

 「ADAとAHAのコラボレーションにより、糖尿病患者を教育するための実践的なツールと情報を提供できるようになる。2型糖尿病患者にインスピレーションを与え健康を改善するために、効果的なソリューションを開発できる」としている。

 ADAとAHAの調査では、2型糖尿病患者の多くは毎日の治療や管理が苦痛だと感じていることが示された。また患者の多くは、家庭で責任を果たしたいという欲求を抱き、自分を理解してもらえる家族や友人などのコミュニティとの結びつきを求めており、これらが行動変容を起こす動機となりうることも示された。

 「多くの患者は、日々続く糖尿病の自己管理を煩わしいと感じ、合併症に対する不安や恐怖、不満などを募らせている。一方で、患者の自己効力感を高めることが糖尿病治療の質を高めるために必要であることが示されている。合併症のリスクと予防策について十分な情報を提供することが、患者を意欲を高めることにつながる」と、ADAのトレーシー ブラウン氏は言う。
2型糖尿病とともに生きる人は心臓病や脳卒中のリスクが高い。リスクを減らすため必要なことを解説している。

心血管疾患のリスクを下げるために今何ができるか?

 「心臓から糖尿病を知ろう」では、2型糖尿病患者を教育し、動機付けを与えるために、段階的に参加できる対話式コンテンツが多く用意されている。患者の疑問に医師や療養指導士が答えることで、患者のエンパワーメントを引き上げられるよう工夫されている。

 患者の代表的な疑問、「自分は心臓病や脳卒中を心配するべきだろうか?」「リスクを下げるために今何ができるだろう?」「対策した結果としてどのような違いが生じたか、知る方法はあるだろうか?」という問いに答えている。

 ADAのオンラインコミュニティへのアクセスでき、全米各地で開催される糖尿病教室に関する情報を受けられる。蓄積されたコンテンツは、ADAが発行する雑誌「Diabetes Care」でも紹介される。また、病院や診療所などで糖尿病診療に携わる医療従事者向けに、最新のエビデンスやガイドラインを解説するコンテンツも用意される。

 このキャンペーンでは、ベーリンガーインゲルハイム、イーライリリー・アンド・カンパニー、ノボ ノルディスク、サノフィがスポンサーとして支援し、2型糖尿病患者に心血管疾患リスクについて知ってもらい、合併症のリスクを低減する方法を学んでもらうためのツールが開発される予定だ。

KnowDiabetesbyHeart.org
米国糖尿病学会(ADA)

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