SGLT2阻害薬が示すアルブミン尿抑制効果 朝の家庭血圧の改善が臨床的作用機序に 横浜市立大

 横浜市立大学は、SGLT2阻害薬が示すアルブミン尿抑制効果に、朝の家庭血圧の降圧が重要であることを明らかにした。SGLT2阻害薬の朝の家庭血圧改善効果が、糖尿病性腎臓病進行阻止の鍵となるアルブミン尿抑制効果に寄与するという。
 SGLT2阻害薬の新たな臨床的作用機序として、高血圧治療ガイドラインで重要とされる朝の家庭血圧の改善作用が示された。
SGLT2阻害薬が糖尿病性腎臓病を抑制する機序を解明
多施設共同の契約型医師主導臨床介入研究を実施
 研究は、横浜市立大学循環器・腎臓・高血圧内科学の金口翔助教、涌井広道講師、田村功一主任教授、内分泌・糖尿病内科学の寺内康夫主任教授、臨床統計学の山中竹春主任教授ら研究グループが、横浜市立大学附属病院次世代臨床研究センター(Y-NEXT)の支援を受けて行ったもの。研究成果は、「Cardiovascular Diabetology」に掲載された。

 これまでの日本人2型糖尿病患者を対象とした大規模研究(JDCS研究)で、アルブミン尿高値、HbA1c高値、血圧高値、喫煙が糖尿病腎症進展の危険因子となること、とくにアルブミン尿を呈する患者では糖尿病性腎臓病が進行するリスクが8.45倍に上昇することが報告されている。

 同様に日本人2型糖尿病患者を対象とした研究で、心血管病のリスクは、アルブミン尿が改善した患者で75%低下したのに対し、悪化した患者では逆に約2.6倍に増加することが報告されている。したがって、2型糖尿病におけるアルブミン尿は心血管腎臓病の源流として、重要な早期治療の標的に位置付けられている。

 研究グループは、高血糖改善効果だけではなく多面的な臓器保護作用についてのエビデンスも集積しつつあり臨床的に重要性が注目されているSGLT2阻害薬による臓器保護作用の本態解明を目的として、糖尿病におけるアルブミン尿に対する改善効果とその機序について、とくに血圧への影響に着目した。

 アルブミン尿を呈する2型糖尿病性腎臓病患者85人を対象に、Y-AIDA研究(ダパグリフロジンのアルブミン尿抑制効果に関する多施設共同試験)を実施。SGLT2阻害薬の効果について、主要評価項目としてアルブミン尿への影響について検討するとともに、糖代謝指標(空腹時血糖、HbA1c)、血圧指標(診察室血圧、家庭血圧)などに与える影響についても多面的に解析した。

 その結果、SGLT2阻害薬の24週間投与により、主要評価項目のアルブミン尿の減少が認められた。また、副次評価項目の、肥満指数(BMI)、診察室血圧、空腹時血糖、HbA1cにおいても改善を認めた。そして、通信システムによる自動通信機能を利用しての家庭血圧測定の結果では、朝(起床後)血圧、晩(就眠前)血圧、夜間就眠中血圧、そして家庭血圧変動指標の改善が認められた。さらに重回帰分析の結果では、朝の家庭血圧の改善がSGLT2阻害薬によるアルブミン尿の抑制に関連することが判明した。

 この結果は、2型糖尿病に対する糖尿病治療薬SGLT2阻害薬は、とくに朝の家庭血圧の改善効果が、糖尿病性腎臓病進行の原因となるアルブミン尿を抑制する効果に関連していることを示している。
 SGLT2阻害薬は、高血糖改善作用以外の直接的な臓器保護作用は想定されていなかったにもかかわらず、ヒトを対象とした最近の大規模臨床試験において予想を超えた多面的な臓器保護作用の可能性が示されつつある。

 今回の研究では、臓器保護作用の機序に依然として不明な点が多いSGLT2阻害薬について、血圧、とくに最近予後との強い関連性が示されている家庭血圧の改善作用という、新たな臨床的作用機序のエビデンスを示した。

 2型糖尿病は高血圧を合併することが多く、また、日本人には食塩感受性高血圧も多くみられる。最新の高血圧治療ガイドライン2019(日本高血圧学会)では、利尿薬は主要選択薬とされ、糖尿病合併高血圧に対する第一選択薬降圧薬としても、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB・ACE阻害薬)、Ca拮抗薬、利尿薬が、併用療法を含めて推奨されている。

 「SGLT2阻害薬は降圧利尿薬の分類には該当しないが、家庭血圧指標を改善しうる次世代の"降圧薬"としても有用である可能性が示された。これまでもナトリウム利尿効果、降圧効果、そして心血管腎臓病の抑制効果が報告されている。SGLT2阻害薬が糖尿病合併高血圧での治療薬として有用である可能性についてはJSH2019でも言及されている」と、研究グループは述べている。

 今回の研究は、横浜市立大学初の契約型医師主導多施設共同介入研究として企業(アストラゼネカ、小野薬品工業)と締結された産学連携契約のもと資金提供を受け、同大循環器・腎臓・高血圧内科学教室、同大内分泌・糖尿病内科学教室、同大臨床統計学教室、同大附属病院次世代臨床研究センターとの共同研究体制により、同大附属病院に加えて、同大附属市民総合医療センター病院、済生会横浜市南部病院、横浜南共済病院とともに実施された「2型糖尿病におけるダパグリフロジンのアルブミン尿抑制効果に関する多施設共同試験(Y-AIDA 研究)」の成果だ。

横浜市立大学循環器・腎臓・高血圧内科学
Improved home BP profile with dapagliflozin is associated with amelioration of albuminuria in Japanese patients with diabetic nephropathy: the Yokohama add-on inhibitory efficacy of dapagliflozin on albuminuria in Japanese patients with type 2 diabetes study (Y-AIDA study)(Cardiovascular Diabetology 2019年8月27日)
[Terahata]

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編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
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