クローズドループインスリンポンプで幼児の血糖コントロールも改善
この研究は、英国、ドイツ、オーストリア、ルクセンブルクの7つの医療機関が参加する、多施設共同無作為化クロスオーバー試験として実施された。各施設で従来型のインスリンポンプによる治療を受けていた1~7歳の1型糖尿病患児74人(平均年齢5.6±1.6歳、HbA1c7.3±0.7%)が参加。無作為に2群に分け、1群は従来型ポンプ、ハイブリッド型クローズドループポンプの順、他の1群はその反対の順に、各条件で16週間治療し、血糖コントロールへの影響を比較した。
なお、ハイブリッド型クローズドループインスリンポンプ(新型ポンプ)は、皮下に留置したセンサーで連続的に血糖値を測定し、血糖値を正常域に維持するために必要なインスリン量をアルゴリズムが判断し、適量のインスリンを自動的に持続注入する。一方、従来型のインスリンポンプは、インスリン注入速度を自分で(幼児の場合は保護者が)設定して用いる。
本研究では、血糖値が治療目標(70~180mg/dL)内にあった時間の割合が、新型ポンプ使用時の方が8.7ポイント(95%信頼区間7.4~9.9)有意に高かった。また、高血糖(180mg/dL超)の時間の割合は新型ポンプ使用時の方が有意に低かった〔-8.5ポイント(同-9.9~-7.1)〕。さらに平均血糖値〔-12.3mg/dL(同-14.8~-9.8)〕やHbA1c〔-0.4%(同-0.5~-0.3)〕も新型ポンプ使用時の方が低く、有意差が存在した。低血糖の時間の割合は両条件で有意差がなかった(P=0.74)。
新型ポンプ使用時の人為的なインスリン注入量の調整は、限られた時間でのみ行われていた。具体的には、使用時間の95%(四分位範囲92~97)は、クローズドループ状態での使用だった。なお、クローズドループ状態での使用中に、1件の重症低血糖が発生した。その他、治療とは関連がないと考えられる重篤な有害事象が1件発生した。
本論文に対して米ハーバード大学のLynne L. Levitsky氏は、「Ware氏らの研究結果は、幼児の糖尿病管理における主要な問題を、新たなテクノロジーで解決できるという希望を示している」との付随論評を寄せている。
[HealthDay News 2021年1月21日]
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