遺伝的素因にかかわりなく食事の質が2型糖尿病リスクに関連

2022.05.16
 食事の質が良くないと、遺伝的背景にかかわりなく2型糖尿病のリスクが約30%上昇する可能性が明らかになった。逆の言い方をすれば、糖尿病になりやすい体質であっても、食習慣に気を付けることでそのリスクを抑制できると言える。米マサチューセッツ総合病院のJordi Merino氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS Medicine」に4月26日掲載された。

 2型糖尿病は、遺伝的素因に生活習慣の負荷が加わり発症すると考えられている。しかし、それら両者の負荷が相乗的に作用するのかは不明。Merino氏らは、2型糖尿病発症に対するそれら2つの影響の相乗効果がどの程度のものか評価を試みた。

 検討には、1986~2016年にわたる女性看護師対象の疫学調査「Nurses' Health Study(NHS)」と、「NHS II」の1991~2017年のデータ、および男性医療従事者対象の疫学調査「Health Professionals Follow-up Study(HPFS)」の1986~2016年のデータを用いた。これらはいずれも前向きコホート研究。合計解析対象者数は、利用可能な遺伝子データの記録があって、ベースライン時点で糖尿病や心血管疾患、またはがんに罹患していなかった3万5,759人。

 2型糖尿病発症の遺伝的リスクは、ゲノムワイド関連解析(GWAS)に基づく多遺伝子リスクスコアなどで評価した。食事の質は、代替健康食指数(alternate healthy eating index;AHEI)で評価。Cox比例ハザードモデルにて、潜在的な交絡因子を調整した後、2型糖尿病の発症ハザード比(HR)を計算した。

 90万2,386人年の追跡で4,433人が2型糖尿病と診断された。多遺伝子リスクスコアが1標準偏差高いごとに2型糖尿病発症リスクが29%高く〔HR1.29(95%信頼区間1.25~1.32)、P<0.001〕、かつ、AHEIが10低いごとに13%リスクが上昇する〔HR1.13(同1.09~1.17)、P<0.001〕という関係が認められた。遺伝的リスクにかかわりなく、高い食事の質と比較すると低い食事の質の場合、2型糖尿病のリスクが約30%高かった。また、食事の質の低さと遺伝的リスクの高さが2型糖尿病発症に関与する程度は、各因子のリスクの合計と同程度であった。

 これらの結果は、2型糖尿病の発症に対して遺伝的素因と食事の質は独立して関与していることを示している。すなわち、遺伝的背景の強さにかかわらず、健康的な食生活によって、糖尿病発症リスクの低下につながることを示唆している。著者らは、「われわれの研究結果は、2型糖尿病発症リスクが高い個人を特定するには、遺伝的リスクの評価に加えて、ライフスタイルのモニタリングが重要であることを強調するものだ」と結論付けている。

 なお、一部の著者が製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。

[HealthDay News 2021年4月28日]

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