【新型コロナウイルス】PCR検査「無症状でも保険適用に」と要望 京大病院と府立医大病院が共同声明

2020.04.16
 京都府立医科大学附属病院と京都大学医学部附属病院は、PCR検査に関する共同声明を発表した。院内感染を防ぐ水際対策として、無症状の患者がPCR検査をした場合にも保険を適用することなどを求めている。趣旨に賛同する他の医療関係団体にも同様の声明を出すよう訴えている。

医療行為にもとづき院内感染が発生すると医療崩壊につながる
「院内感染を防ぐ水際対策」が必要

 患者および医療者双方にとって安全な診療環境を保持するために、京都府立医科大学附属病院と京都大学医学部附属病院は以下のことを要望している。

1院内感染を防ぐ水際対策として、無症候の患者に対する新型コロナウイルスのPCR検査を保険適用(ないし公費で施行可能)にしていただきたい
COVID-19に関しては無症状であっても、手術や分娩、内視鏡検査あるいは救急医療などの診療実施前に、院内感染を予防するための水際対策として保険医療等の公費でPCR検査を行えるようにすることを強く要望いたします。
2PCR検査に必要な個人防護具と試薬を確保していただきたい
3賛同する他の医療団体も声明を出していただきたい

 両病院は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大している現状に対し、無症候のCOVID-19ウイルス保有者に対する手術や分娩その他の診療にともない、患者ならびに医療者への感染拡大が起こり、感染症治療および通常医療が未曽有の崩壊に陥ることを懸念している。

 無症候性のCOVID-19ウイルス保有者が医療行為を受けた場合、次のようなリスクがある――。
・ 無症候性ウイルス保有者に対して気管内挿管やエアロゾルが発生するような医療行為が行われることで、医療従事者や周囲の患者が感染する可能性
・ 無症候性ウイルス保有者が通常分娩することによって、生まれてきた新生児が感染する可能性
・ 無症候性ウイルス保有者が自覚無く入院することで、他の免疫不全患者や高齢者に感染が広がる可能性
・ 無症候性ウイルス保有者自身が手術後に肺炎等を発症し、生命予後が悪化する可能性

 もし医療行為にもとづき院内感染が発生した場合には、感染が拡大するだけでなく、診療機能の抑制・停止に直結する。各病院で「院内感染を防ぐ水際対策」が遅れれば、未曽有の医療崩壊につながるとしている。

 このリスクを低減させるために、欧米ではすでに、検査や手術前に新型コロナウイルスのスクリーニングPCR検査を行い、医療者への曝露や院内感染を防ぐための取組みが開始されている。

 一方、日本での現行の新型コロナウイルスPCR検査は、症状がある患者に対して、新型コロナウイルス感染症を診断する目的で施行された場合にのみ保険適用となっている。無症状の患者に対して、スクリーニング目的で施行した場合は全額自己負担(1人あたり約2万円)になる。

 政府は4月8日の時点で、1日あたり1万2,000件の検査件数を確保し、今後は2万件まで増加すると発表しているが、その対象は症状のある患者に限定されているため、実際にPCR検査を受けることができる件数は限定されている。

 つまり、保険適用の範囲が有症状者に限定されているために、現在のPCR検査のキャパシティー一杯までPCR検査が行われていないというのが現状だ。

 日本でも、流行地域の病院において、病院の経費を使用して検査を行うという自衛策をとる施設も出ているが、病院経営を逼迫させる要因にもなる。

 入国管理においては、日本国内でのCOVID-19の蔓延を避けるための水際対策として、無症状であっても、入国者全員に、PCR検査が公費で行われている。

 両病院は、COVID-19の院内感染を予防するための水際対策として、無症状であっても、手術や分娩、内視鏡検査あるいは救急医療などの診療実施前に、PCR検査を公費で行えるよう(保険適用)にすることを要望している。

 「本声明は決して無症状の方に対するPCR検査を無制限に拡大することを推奨しているわけではありません。限られた医療のリソースは院内感染を予防するための必要性に基づいてのみ使用すべきです」と、京都大医学部付属病院の宮本享病院長は強調している。

 「日本国内全ての地域における医療体制破綻や医療従事者の感染を防ぎ、全ての疾患の治療体制の継続に向けて、できうる限りの努力をする覚悟です」としている。

京都府立医科大学附属病院
京都大学医学部附属病院

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