non-HDLコレステロール高値は心血管疾患の長期リスク上昇と関連 45歳未満からの介入が重要

2019.12.19
 45歳未満の被験者において、血中non-HDLコレステロール(non-HDL-C)値は、アテローム硬化性心血管疾患の長期リスクと強い関連があることが明らかにされた。
 血中のnon-HDL-C値およびLDL-C値の上昇は心血管疾患(CVD)の危険因子であり、その発症を予測する上で重要な役割を果たす。non-HDL-C値を低下するための早期・集中的な介入が、アテローム硬化性心血管疾患の初期兆候を逆転する可能性が示された。
 研究成果は「ランセット」に2019年12月3日付で掲載された。

non-HDL-CとCVDの長期リスクについての過去最大の研究

 研究は、19ヵ国の40万人近くの被験者を1970~2013年に追跡調査したもの(追跡期間中央値13.5年)。non-HDL-Cと心血管疾患(CVD)の長期リスクについて調査した過去最大の包括的な分析となった。

 コレステロール値と心血管危険因子の数に応じ、45歳未満の男女が75歳までに致命的・非致命的な心疾患を発症するリスクは12〜43%、脳卒中を発症するリスクは6〜24%と幅があることが示された。

 高non-HDL-Cの男女で、non-HDL-C値を半分に低下すると、心疾患リスクが低下することも明らかになった。45歳未満で、開始値が143.2〜185.8mg/dLで、2つ以上の心血管リスク因子がある場合、non-HDL-C値を半分に低下することで、心疾患リスクは女性で16%から4%に、男性で29%から6%にそれぞれ低下するという。

 研究は、ドイツのUniversity Heart & Vascular Center Hamburgの循環器部門のFabian Brunner氏らによるもの。

non-HDL-C値が2倍になると、CVD長期リスクは女性で34%に、男性で44%に上昇

 研究チームは、欧州、オーストラリア、北米の19ヵ国、計44件の住民ベースコホートの52万4,444例のデータを解析し、リスク評価・モデリング試験を行った。追跡期間は最大で43.5年、中央値は13.6年だった。

 これまで血中脂質値とCVDの長期発生の関連、および脂質低下治療とCVDアウトカムの関連について明らかになっていない。

 そこで研究チームは、心血管リスクとnon-HDL-C値の関連について調べ、心血管イベントを長期的に抑制するモデル作成も行った。

 ベースラインでCVD歴がなく、CVDのデータを確実に入手できる39万8,846例の被験者を対象に解析。

 主要複合エンドポイントはアテローム硬化性心血管疾患で、冠動脈性心疾患イベントまたは虚血性脳卒中の発生と定義した。期間中に5万4,542件の心血管エンドポイントが発生した。

 30年間の心血管イベント発生率は、non-HDL-C値の増加にともない上昇することが示された。解析した結果、non-HDL-C値が100.6mg/dL未満から220.6mg/dL以上に増加することで、心血管イベント発生率は女性では7.7%から33.7%へ、男性では12.8%から43.6%へと有意に増加した。

 たとえば、45歳未満で、non-HDL-C値が143.2〜185.8mg/dLで、追加の心血管リスク因子を2つ以上もつ女性では、75歳までにCVDイベントを発症する比率が16%であり、60歳以上の女性では12%と推定されることが判明した。

 同じ特性の45歳未満の男性では推定リスクは29%で、60歳以上の男性では21%に上る。

 「45歳未満でnon-HDL-C値が高いと、血液中の有害な脂質に長い期間さらされており、CVDリスクが上昇している可能性がある。また、CVD歴のない60歳以上では、同年齢の人において健康的である可能性がある」と、German Research Center for Environmental HealthのBarbara Thorand教授は言う。

早期介入でnon-HDL-C値を低下すると効果が最大に

 研究チームはさらに、non-HDL-C値を50%低下した場合のリスク低下を推定するモデルを作成した。

 その結果、75歳までに心血管イベントリスクは低下し、そのリスク低下は早期にコレステロール値が低下するほど大きいことが判明した。

 たとえば、non-HDL-C値が143.2~185.8mg/dLで、2つ以上のリスク因子をもつ45歳未満の人では、non-HDL-C値を半分にすることで、女性ではCVDリスクを16%から4%に、男性で29%から6%にそれぞれ減少できる可能性がある。

 60歳以上の人では、女性ではCVDリスクを12%から6%に、男性で21%から10%にそれぞれ減少できるという。

 「一般診療では10年以上後のCVDリスクについて評価されるが、これでは若年者の生涯リスクを過小評価してしまう可能性がある」と、German Center for Cardiovascular ResearchのStefan Blankenberg教授は言う。

 「今回の研究は、一次予防として、脂質低下の介入を45歳未満のより低い年齢から開始する必要性について洞察をもたらすものだ。この年齢からの脂質低下療法が長期的に利益をもたらすかを、臨床試験で確かめる必要がある」。

 「non-HDL-C値により生涯リスクを推定するモデルは、若年者の行動変容に向けた動機付けを与えるのに役立つ可能性がある」と、英国のクイーンズ大学ベルファスト校のFrank Kee教授は述べている。

The Lancet: First long-term estimates suggest link between cholesterol levels and risk of heart disease and stroke(Lancet 2019年12月5日)
Application of non-HDL cholesterol for population-based cardiovascular risk stratification: results from the Multinational Cardiovascular Risk Consortium(Lancet 2019年12月3日)

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