2型糖尿病女性の低用量アスピリン療法に認知症予防効果 認知症リスクが42%低下 男性では差はなし

2019.12.12
 脳卒中や心血管疾患の再発予防のために行われている「低用量アスピリン療法」が、2型糖尿病患者の女性の認知症発症リスクを低下させる可能性があることが、兵庫医科大学などの研究で示された。

低用量アスピリンの認知症予防効果を解明

 研究は、兵庫医科大学臨床疫学の森本剛教授および、国立循環器病研究センターの小川久雄理事長、奈良県立医科大学の斎藤能彦教授、熊本大学副島弘文准教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は「Diabetes Care」電子版に掲載された。

 JPAD(日本人2型糖尿病患者における低用量アスピリン療法の心血管疾患一次予防:Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis with Aspirin for Diabetes)研究は、日本全国163施設が協力し2002年に開始された。

 研究グループは、JPAD研究に参加し研究に同意した日本人2型糖尿病患者2,536人を対象に、「低用量アスピリン」を服用するグループ1,259人と「低用量アスピリン」を服用しないグループ1,277人にランダムに分けて、2002~2017年の約15年間の認知症発症の有無について追跡調査した。

 対象者2,536人のうち、128人が認知症を発症した。発症率の性差について分析したところ、低用量アスピリン(81~100mg/日)の服用の有無で認知症発症のリスクを比較したところ、男性患者ではリスクに差はみられなかったが、低用量アスピリンを服用し続けた女性患者ではリスクが42%低下した。
 日本における認知症有病者は、2012年の時点で462万人と年々増加傾向にあり、認知症の発症遅延や発症リスクの低減が重要となっている。とくに、糖尿病を持病としてもつ高齢者の場合は、高血糖の状態が続くことで認知機能が低下しやすく、アルツハイマー型認知症には約1.5倍、脳血管性認知症には約2.5倍なりやすいという報告もある。

 「今回の研究では、女性にのみ効果が認められましたが、今後研究を進めて、低用量アスピリンの認知症予防効果を解明していくことで、将来的に認知症予防薬として活用されることが期待されます」と、研究者は述べている。

兵庫医科大学臨床疫学
Sex Difference in Effects of Low-Dose Aspirin on Prevention of Dementia in Patients With Type 2 Diabetes: A Long-term Follow-up Study of a Randomized Clinical Trial(Diabetes Care 2019年12月4日)

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