AI(人工知能)による糖尿病性腎症の自動判断ツールを開発 蛍光画像から100%の正解率で診断

2019.12.05
 岡山大学病院腎臓・糖尿病・内分泌内科の研究グループは、AI(人工知能)による糖尿病性腎症の自動判断ツールを開発したと発表した。蛍光画像では診断が困難な糖尿病性腎症を、腎臓専門医による診断では正解率は67.5%だったが、AI(人工知能)により100%の正解率で診断できることを確認した。

糖尿病性腎症のAI診断の正解率は100%

 研究は、岡山大学病院腎臓・糖尿病・内分泌内科の喜多村真治講師らの研究グループによるもの。研究成果は、11月に岡山コンベンションセンターで開催された「第31回日本糖尿病性腎症研究会」で発表された。

 糖尿病性腎症は臨床経過や合併症、3種類の腎病理画像(蛍光顕微鏡画像、光学顕微鏡画像、電子顕微鏡画像)から診断されるが、蛍光画像からの診断は難しく、医師は通常、光顕画像、電顕画像から診断を行う。研究グループは、診断困難な蛍光画像から糖尿病性腎症をAI(人工知能)により診断しえるかを検証し、トレーニング画像から作成したプログラムによりテスト画像で診断できるAIを開発した。

 AI診断の正解率が100%だったのに対して、腎臓専門医が行ったテスト画像による診断では正解率は67.5%であり、人間の目では気付きにくい糖尿病性腎症の診断の補助がAIによってできる可能性が示唆された。

AIにより蛍光画像のみで糖尿病性腎症を判別できる可能性

 研究グループは、同大学病院倫理委員会での承認後、2012年1月~2018年12月に同院で腎生検を行い診断した患者885例のうち、腎移植症例や複数の腎症の合併症例、不確実な診断を除いた症例を抽出し、その患者の臨床経過、蛍光画像、光顕画像、電顕画像により腎臓専門医が糖尿病性腎症と診断した31症例と、対照に腎臓専門医が2018年度の糖尿病性腎症以外と診断した52症例を用いた。

 通常、糖尿病性腎症の診断には、光顕画像や電顕画像から判断し診断するが、今回の研究では判断が困難な蛍光画像を用いた。その各症例から、腎生検蛍光画像(IgG、IgA、IgM、C3、C1q、フィブリノーゲンの6画像)を用いて、ディープラーニング(深層学習)による機械学習を行い、テスト画像で正解率を算出した。同時に、テスト画像を用いて同院所属の腎臓専門医5名からも、診断の正解率などを算出した。

 その結果、プログラムは419通り作成した。過学習などが少なく、エラー率が減少したプログラムの中で評価を行った39個のプログラムでは正解率83.28±11.64%、適合率80.56±21.83%、再現率79.87±15.65%だった。正解率、適合率、再現率とも100%のプログラムは5通り作成できた。一方、腎臓専門医のテスト画像での診断率は、正解率67.50±6.12%、適合率62.62±3.85%、再現率67.26±9.96%だった。

 新たな技術を社会生活に取り入れて社会的課題を解決するsociety5.0が内閣府より提唱されている。今回の研究により、ディープラーニングにより、蛍光画像のみでも糖尿病性腎症を判別できる可能性があることが分かった。AI(人工知能)は人間の目では判断が困難な特徴の抽出が可能であり、人間の目では気付きにくい診断の補助がAI(人工知能)でできる可能性がある。

 「糖尿病性腎症をAIにより診断ができることは、糖尿病性腎症の精確な診断への第一歩です。開発はまだまだ発展途上であり、さらなる改善に努めていきます」と、喜多村氏は述べている。

岡山大学病院腎臓・糖尿病・内分泌内科

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