糖尿病にともなう認知機能障害や老化にともなう認知機能低下はアミロイドβ変化とは独立に惹起 国立長寿医療研究センター

2019.08.27
 脳インスリンシグナルの変化は、2型糖尿病および老化にともなうアミロイド非依存型の認知機能低下に連動する一方、アルツハイマー病では、認知機能低下以前のアミロイド上昇に関与することを、国立長寿医療研究センターが解明した。

1型・2型糖尿病にともなう認知機能障害は
アミロイドβの変化とは独立に惹起される

 研究は、国立長寿医療研究センター統合加齢神経科学研究部の王蔚研究員、田之頭大輔研究員、田口明子部長らが、理化学研究所脳神経科学研究センター・神経老化制御研究チームの斉藤貴志副チームリーダー(現・名古屋市立大学大学院医学研究科 認知症科学分野)、西道隆臣チームリーダーと共同で行ったもの。研究成果は「Nutrients」に発表された。

 研究チームは、1型・2型糖尿病にともなう認知機能障害および老化にともなう生理的な認知機能低下は、アミロイドβ(Aβ)の変化とは独立に惹起されることを明らかにした。

 さらに、アルツハイマー病(AD)患者死後脳で発見されたインスリンシグナル主要調節因子、インスリン受容体基質1(IRS1)のセリンリン酸化の増加は、2型糖尿病および老化にともなう認知機能低下に連動する一方で、ADでは、認知機能低下より前に生じるアミロイドの増加に関連することが示された。

 これらから、脳IRS1セリン残基の活性化を介した変化は、アミロイド非依存型認知機能低下の指標およびADにおけるAβ増加反映マーカーとなる可能性が考えられる。

 近年、糖尿病が認知機能障害のリスク要因となることが広く知られるようになり、糖代謝調節経路であるインスリンシグナルの脳での役割と認知機能との関係に関心が高まっている。

 今回の研究結果を基盤にした脳IRS1およびセリンリン酸化を介した変容と認知機能の相関についてのさらなるメカニズムの解明により、認知機能障害の新たな予防・治療法の開発に貢献することが期待される。
国立長寿医療研究センター統合加齢神経科学研究部
Serine Phosphorylation of IRS1 Correlates with Aβ-Unrelated Memory Deficits and Elevation in Aβ Level Prior to the Onset of Memory Decline in AD(Nutrients 2019年8月17日)

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