金沢大学がAIを活用した糖尿病性腎症重症化予防の共同研究を開始 日本人に最適な予防法を開発

2019.08.21
 金沢大学と東芝は、糖尿病性腎症の重症化を予防する共同研究を開始した。金沢大がこれまでの研究で得た知見や情報を、東芝のAI(人工知能)で解析。腎臓病が重症化する仕組みや最適な予防法を2020年度までに解明することを目指す。
 人工透析治療を導入する前に、疾病を早期治療できる可能性がある。

AIで糖尿病性腎症の重症化予防

 金沢大学医薬保健研究域医学系の和田隆志教授らの研究グループと、東芝、東芝デジタルソリューションズは、糖尿病性腎症の重症化メカニズムの解明により精密医療の実現を目指す共同研究を開始した。

 金沢大学がもつ、長期経過観察をともなう腎生検で診断した糖尿病性腎症例の臨床・病理情報を用いて、同大学の高度な医学的な知見と同社のAI(人工知能)の活用により、糖尿病性腎症の重症化メカニズムの解明を目指して研究開発を行う。

 腎生検は、腎臓の組織の一部を採り、顕微鏡で評価する検査方法で、タンパク尿、血尿、腎機能低下などの腎臓病患者に正確な診断を付け、最適な治療法を決定するために効果的とされている。

 共同研究では、同社のアナリティクスAI「SATLYS(サトリス)」を活用することで、糖尿病性腎症重症化メカニズムを解析する。さらに、患者を複数のパターンに分け、リスクごとに詳細に層別化・体系化された最適な予防法を示すことで、患者のQOL向上を目指す。

 「サトリス」は、検査データなどから、識別、予測、要因推定、異常検知、故障予兆検知からバリューチェーンの最適化、プロセスの自動制御までを引き出すAIサービス。数万次元超のビッグデータを解析可能で、AIがどこに注目して推論したかを可視化する機能が特徴となる。
 日本は、世界第2位の人工透析大国であり、透析患者数は国民の約380人に1人、約33万人にも及ぶ。中でも、糖尿病性腎症に起因する透析患者数がもっとも多く、全体の4割以上を占める。

 人工透析が必要になると、透析治療によりQOLが低下するだけでなく、1人当たり年間約500万円の医療費負担、国全体では年間約1.6兆円の公的医療費が必要となる。このため、糖尿病性腎症の重症化を予防することは健康寿命を延ばすだけではなく、医療保険財政を健全化する点からも喫緊の課題となっている。

 東芝は2019年度から医療事業に本格的に再参入し、遺伝子解析や重粒子線がん治療分野で競争力をもち、AIを活用した個別化医療や精密医療で事業拡大を目指している。

金沢大学医薬保健研究域
東芝アナリティクス AI 「SATLYS(サトリス)」

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