血糖自己測定(SMBG)の再評価が始まっている SMBGは糖尿病の管理を向上させる有用なツール

2019.08.01
 海外で血糖自己測定(SMBG)の再評価が始まっている。SMBGは糖尿病の薬物療法を改善するために有用で、患者の意識向上のためにも役立ち、しかも安価という報告が、第79回米国糖尿病学会(ADA)年次学術集会で発表された。

プライマリケア医の大多数がSMBG推奨を支持

 米国糖尿病学会(ADA)は2019年版治療ガイドラインである「Standards of Medical Care in Diabetes」を公表した。詳細は2019年6月に開催された第79回米国糖尿病学会年次学術集会で発表された。

 日本ではインスリン製剤とGLP-1受容体作動薬を使用中の患者や、妊娠中の糖尿病患者の一部で、血糖自己測定(SMBG)に対して医療保険が適用されているが、海外ではSMBGに対する再評価が始まっている。

 ADAのガイドラインではSMBGついて、糖尿病の自己管理および薬物療法を改善するために有用と評価。SMBGは患者の個別の治療達成度を判断するための有用な材料となる。

 インスリンを含む血糖降下薬で治療中の患者において、細小血管性および大血管性の合併症を抑制し、重篤な低血糖を防止するために、とくに糖尿病の長期既往歴のある患者や、HbA1c8%未満を達成していない患者において、患者教育を行い自己管理を改善することが望まれる。

 とくにインスリン療法を行っている患者で低血糖が疑われる場合は、空腹時、食後、運動前、運転前、就寝時などにSMBGを用いて血糖値を評価することが血糖コントロールの改善につながる。ドイツのClinic for Pediatric and Adolescent Diabetesが1型糖尿病患者2万6,723人を対象に実施した試験では、SMBGの回数が1回増えるとHbA1cが0.20%低下することが示された。

 非インスリン療法患者においても、SMBGが糖尿病の自己管理を改善することが報告されている。経口血糖降下薬のみで治療している小児・若年患者699人対象を対象に6ヵ月間調査した「若年2型糖尿病研究(TODAY研究)」では、SMBGの頻度が多い患者ほどアドヒアランスが高く、HbA1cが低下する傾向があることが示された。研究者はSMBGの遵守が糖尿病の自己管理の指標となる可能性を指摘している。

 米国家庭医学会(AAFP)によると、プライマリケア医の大多数は、糖尿病治療において自己管理が大きな比重を占めており、血糖コントロールの改善に必要な糖尿病の日常的な管理能力を高めるために、患者にSMBGを推奨する必要があると考えている。

 SMBGが医療費の削減に貢献できる可能性も示されている。東フィンランド大学の研究では、2型糖尿病患者ではSMBGを中心とする自己管理を徹底することで、年間医療費を最大で280ユーロ(300ドル)から120ユーロ(130ドル)へと60%抑制できることが示された。

Standards of Medical Care in Diabetes - 2019 Abridged for Primary Care Providers(Diabetes Care 2019年1月1日)
Frequency of SMBG correlates with HbA1c and acute complications in children and adolescents with type 1 diabetes(Pediatr Diabetes 2011年1月25日)
Self-Monitoring of Blood Glucose in Youth-Onset Type 2 Diabetes: Results From the TODAY Study(Diabetes Care 2019年2月)
Physicians' Views of Self-Monitoring of Blood Glucose in Patients With Type 2 Diabetes Not on Insulin(Annals of Family Medicine 2018年2月19日)
Self-monitoring induced savings on type 2 diabetes patients' travel and healthcare costs(International Journal of Medical informatics 2018年6月29日)

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