「トルリシティ」が幅広い2型糖尿病患者の主要心血管イベントを有意に減少 REWIND試験

2019.06.19
 イーライリリー・アンド・カンパニーは、週1回投与のGLP-1受容体作動薬「トルリシティ(一般名:デュラグルチド)」の心血管アウトカム試験である「REWIND」試験の結果を発表した。詳細は、第79回米国糖尿病学会学術集会で発表され、「Lancet」に掲載された。

週1回投与のトルリシティが血糖コントロールと心血管リスクを長期的に改善

 「REWIND」試験はGLP-1受容体作動薬の心血管アウトカム試験としては最長(中央値5.4年)の、心血管疾患の既往がない患者を主体とした試験。2型糖尿病成人患者9,901例を対象に、3ポイントMACEの発現リスクに対する影響を、標準治療に追加したトルリシティ1.5mgとプラセボで比較した。

 同試験の主要評価項目はMACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中から成る複合評価項目)の初発。副次評価項目は、主要評価項目を構成する各要素、網膜症または腎症から成る複合臨床微小血管障害、不安定狭心症による入院、心不全による入院または緊急来院、および原因を問わない死亡。

 その結果、主要心血管イベント(MACE)の発現率が12%有意に低下し、心血管疾患の既往の有無に関わらず3ポイントMACEの低下が示され、心血管リスクの低下は試験期間を通じて維持された。

 同試験は、これまでの心血管アウトカム試験と比較し、日常診療でみられている2型糖尿病患者により近い集団で検討されている。参加者全員が心血管リスク因子を有していたが、心血管疾患の既往がある参加者は31%のみだった。さらに同試験では、ベースラインHbA1cがこれまでの糖尿病心血管アウトカム試験の中で最も低いレベル(中央値7.2%)であり、男女比もバランスがとれていた(女性46.3%、男性53.7%)。

 試験全体でトルリシティが示したリスク低下(ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.79-0.99)は下記のサブグループにおいても示された。
・ 心血管疾患の既往歴あり:ハザード比:0.87、95%信頼区間:0.74-1.02
・ 心血管疾患の既往歴なし:ハザード比:0.87、95%信頼区間:0.74-1.02
・ ベースラインHbA1cが7.2%またはそれ以上:ハザード比:0.86、95%信頼区間:0.74-1.00
・ ベースラインHbA1cが7.2%未満:ハザード比:0.90、95%信頼区間:0.76-1.06
・ 女性:ハザード比:0.85、95%信頼区間:0.71-1.02
・ 男性:ハザード比:0.90、95%信頼区間:0.79-1.04

 トルリシティによる3ポイントMACEの有意な減少には下記3つの要素全てが寄与していた。
・ 心血管死(ハザード比:0.91、95%信頼区間:0.78-1.06)
・ 非致死性心筋梗塞(ハザード比:0.96、95%信頼区間:0.79-1.16)
・ 非致死性脳卒中(ハザード比:0.76、95%信頼区間:0.61-0.95)

 さらにトルリシティは、微小血管アウトカム、特に腎アウトカムを改善させた(ハザード比:0.87、95%信頼区間:0.79-0.95)。腎アウトカムの分析結果は、長期的なトルリシティの使用が2型糖尿病患者における腎疾患の進行抑制に関連していることを示唆している。

 心血管アウトカムを評価した長期追跡の結果に加え、同試験では糖尿病治療におけるトルリシティの有効性を裏付けるエビデンスが示された。トルリシティはプラセボと比較し、中央値7.2%のHbA1cをベースラインから低下させた(HbA1c:-0.46%(トルリシティ)、+0.16%(プラセボ)、体重:-2.95kg(トルリシティ)、-1.49kg(プラセボ))。

 トルリシティの安全性プロファイルは他のGLP-1受容体作動薬と一致した。トルリシティの投与中止に至った有害事象で最もよくみられたものは胃腸障害だった。

 同試験のチェアであり、マクマスター大学 教授およびハミルトン・ヘルス・サイエンシズ公衆衛生研究所副所長であるハーツェル ガーシュタイン氏は「REWIND試験は幅広い患者の治療にデュラグルチドを追加することによる恩恵を示唆している」と述べている。

 なお、デュラグルチドの適応症は2型糖尿病であり、日本におけるデュラグルチドの承認用量は0.75mg週1回投与のため、同試験の内容は承認用量外となる。

Dulaglutide and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes (REWIND): a double-blind, randomised placebo-controlled trial(The Lancet 2019年6月9日)

トルリシティ皮下注0.75mgアテオス 添付文書

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方 糖尿病の各薬剤を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 血糖推移をみる際のポイント!~薬剤選択にどう生かすか~
妊婦の糖代謝異常(妊娠糖尿病を含む)の診断と治療 糖尿病を有する女性の計画妊娠と妊娠・分娩・授乳期の注意点 下垂体機能低下症、橋本病、バセドウ病を有する女性の妊娠・不妊治療
インスリン・GLP-1受容体作動薬配合注 GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド) CGMデータを活用したインスリン治療の最適化 1型糖尿病のインスリン治療 2型糖尿病のインスリン治療 最新インスリン注入デバイス(インスリンポンプなど)
肥満症治療薬としてのGLP-1受容体作動薬 肥満症患者の心理とスティグマ 肥満2型糖尿病を含めた代謝性疾患 肥満症治療の今後の展開
2型糖尿病の第1選択薬 肥満のある2型糖尿病の経口薬 高齢2型糖尿病の経口薬 心血管疾患のある2型糖尿病の経口薬

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料