インスリンなどジスルフィド結合を含むタンパク質の高効率生産に役立つ薬剤を開発

2018.12.20
 東京農工大学や東北大学の研究グループが、タンパク質が正しく機能するために必要不可欠な酸化的フォールディングというステップを促進する低分子「グアニジンチオール(GdnSH)」を開発した。従来使われているグルタチオンより効率が高く、今後インスリンや抗体などジスルフィド結合を含むタンパク質の高効率生産に役立つと期待される。

酸化的フォールディング効率を大きく高めるのに成功

 研究は、東京農工大学大学院工学研究院応用化学部門の村岡貴博准教授、岡田隼輔氏と東北大学学際科学フロンティア研究所の奥村正樹助教、松﨑元紀学術研究員、東北大学多元物質科学研究所の稲葉謙次教授らの研究グループによるもの。研究成果は英国王立化学会が発行する「Chemical Communications」に掲載された。

 細胞内では、免疫グロブリンやインスリンをはじめ生体機能維持に重要なタンパク質が大量に生産される。タンパク質が正しく機能するためには、酸化的フォールディングと呼ばれる、ジスルフィド結合形成を伴う立体構造の形成が欠かせない。

 ジスルフィド結合は、システイン残基の側鎖に存在するチオール(SH)の硫黄原子同士が酸化され、共有結合でつながったもの(-S-S-)で、SS結合とも呼ばれている。タンパク質中では構造の安定化や酵素の活性制御などに関わっている。

 酸化的フォールディングはうまく行かないことがあり、インスリンや抗体などジスルフィド結合を含むタンパク質の高効率な生産が困難なケースがある。

 そこで細胞内ではこの酸化的フォールディングを促進するため、グルタチオンという低分子が広く使われるが、インスリンや抗体など健康維持に必須なタンパク質の高効率な生産に対処するためにより促進効果が高い薬剤が求めらてれている。

 研究グループが開発した低分子「グアニジンチオール(GdnSH)」は、グアニジノ基とチオールを組み合わせており、グアニジノ基の正電荷がチオール(SH)を負電荷のチオレートアニオン(S-)に変化させやすい。この性質により、GdnSHが高効率な酸化的フォールディング促進剤として働くことを確認した。

 GdnSHのような薬剤は、小胞体内の酸化的フォールディング効率を大きく高めることで、今後インスリンや抗体などジスルフィド結合を含むタンパク質の高効率生産に役立つと期待される。

Coupling effects of thiol and urea-type groups for promotion of oxidative protein folding(Chemical Communications 2018年11月27日)

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