薬局薬剤師による糖尿病支援プログラム「RxING Registry Japan」を開始 薬剤師が糖尿病医療に積極的に参加

2018.08.24
 薬局薬剤師による糖尿病患者支援のWebプログラム「RxING Registry Japan」が今年6月から日本で始まった。薬剤師が糖尿病患者の支援に積極的に関わることで、HbA1cの改善など治療成果の向上が期待されている。

薬剤師が糖尿病治療に積極的に関わるとHbA1cが改善

 「RxING Registry Japan」研究は、カナダのアルバータ大学が開発したツールを活用し、薬局薬剤師が糖尿病患者に生活習慣改善の支援を実施し、その効果を検証する臨床研究。カナダではすでに実施されており、将来的にはカナダの全薬局で導入が検討されている。

 ツールは患者支援のツールでありながら、データベースでもある。来局した糖尿病患者の処方薬、検査値などのデータを専用のWebサイトに入力すると、エビデンスに基づきその患者の心血管疾患発症リスクを表示。何をどう改善すればそのリスクがどれだけ低くなるのかが示される。

 薬局薬剤師はこのツールを活用し患者の生活習慣改善を支援する。患者データは経時的に記録され、薬剤師による患者支援の効果について検証できるシステムにもなっている。参加薬局は既に90薬局以上に到達。200薬局の参加を目標に研究を進める計画だ。

 日本版では、日本オリジナルで実施された薬局での介入研究「COMPASS」プロジェクトで使われた、「薬局版 動機づけ面接」の研修もこのプログラムに組み込まれている。薬剤師が薬局で糖尿病患者を支援する知識とスキルを学ぶ貴重な機会となる。

 「COMPASS」研究は、糖尿病患者に対する調剤薬局薬剤師の介入研究で、英語名は「Community Pharmacists for Diabetes patients Intervention Study in Japan」。

 薬剤師による日本初のランダム化比較試験で、2011年3月から全国の90薬局で実施された。薬剤師が糖尿病患者に積極的に関わる介入群と、HbA1c値を確認するだけの対照群とで、登録患者の血糖値変化などを調査した。

 参加薬剤師に「動機づけ面接」や「情報提供用資料の使い方」を事前に学んでもらい、1回3分程度の時間、糖尿病患者に対し情報提供や言葉かけを実施した。その結果、対照群と比較して薬剤師が積極的に関わることで、HbA1c0.5%改善の成功率が約2倍になることが示された。

 アルバータ州で、アルバータ大学のRoss Tsuyuki教授らのグループが薬局薬剤師に参加を得て行った「RxING Registry」研究は、薬剤師職域の糖尿病治療への積極的な参与が促され、そのエビデンスから医療者や市民からの信頼を得ているという。

 アルバータ州では、カナダの他州に先駆けて薬剤師が医師から完全に独立して処方できるようになっている。今後この研究は、日本を皮切りに、ニュージーランドやアイルランドなど世界数ヵ国で実施する計画も進められている。

RxING Registry Japan
「RxING Registry Japan」研究(国立病院機構 京都医療センター 予防医学研究室)

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