SGLT2阻害薬「フォシーガ」が1型糖尿病に対する治療薬に 「DEPICT」試験で可能性が示される

2018.07.05
第78回米国糖尿病学会(ADA2018)

 アストラゼネカは、SGLT2阻害薬「フォシーガ」(一般名:ダパグリフロジン)の1型糖尿病に対する治療薬としての可能性を示す新しいデータをADAで発表した。
 「フォシーガ」は、インスリン療法に対する経口の補助治療として、1型糖尿病治療のアンメットニーズに対応するとしている。

インスリン療法への補助治療として「フォシーガ」を投与

 アストラゼネカは、成人1型糖尿病患者を対象とした「DEPICT」(Dapagliflozin Evaluation in Patients With Inadequately Controlled Type 1 Diabetes)試験における、短期間および長期間の検証成績を、第78回米国糖尿病学会(ADA)年次総会で発表した。

 今回の新しい発表データには、SGLT2阻害薬「フォシーガ」(一般名:ダパグリフロジン)を、インスリン療法への補助治療として52週間(DEPICT-1試験)および24週間(DEPICT-2試験)投与した際の、有効性および安全性を検証した結果と、両試験から得られた持続的血糖測定(CGM)データの統合解析結果が含まれている。

 DEPICTは、「DEPICT-1」と「DEPICT-2」の2つの臨床試験から構成されている。インスリン治療で血糖コントロールが不十分の患者を対象として、「フォシーガ」5mgまたは10mgが血糖コントロールに及ぼす効果を評価する、24週間の無作為化二重盲検並行群間試験。全症例が24週時およびその後の28週間延長時(合計52週時)で評価される。

HbA1c値および体重の低下、血糖の目標値範囲内達成時間の延長を達成

 「DEPICT-1」試験および日本人症例のデータを含む「DEPICT-2」試験において、ダパグリフロジン群はプラセボ群との比較で、1型糖尿病患者のHbA1c値および体重の低下と、血糖の目標値範囲内達成時間の延長が示された。

 「DEPICT-1」試験(n=747)では、ダパグリフロジン5mgおよび10mgを52週間投与した時のプラセボ群とのHbA1cの変化量の差は、-0.33%(95%CI: -0.49、-0.17)、および-0.36%(95% CI: -0.53、-0.20)だった。また、体重の変化率のプラセボ群との差は、-2.95%(95% CI: -3.83、-2.06)、および-4.54%(95% CI: -5.40、-3.66)だった。

 「DEPICT-2」試験(n=813)では、ダパグリフロジン5mgおよび10mgを24週間投与した時のプラセボ群とのHbA1c値の変化量の差は、-0.37%(95% CI: -0.49、-0.26)、および-0.42%(95% CI: -0.53、-0.30)(ベースライン~8.4、p<0.0001)だった。また、体重の変化率のプラセボ群との差は、-3.21%(95% CI: -3.96、-2.45)、および-3.74%(95% CI: -4.49、-2.99)(p<0.0001)だった。

 「DEPICT-1」および「DEPICT-2」試験の事後統合解析としては、ダパグリフロジン5mgおよび10mgを24週間投与したときのCGMを用いた間質液中血糖濃度の変化量は、プラセボと比較して-15.48mg/dLおよび-18.90mg/dLで、血糖日内変動のターゲットレンジを達成した時間は9.07%(時間にして2時間以上に相当)および10.67%(同2時間30分に相当)延長した。

 さらに平均血糖変動幅(MAGE)は、プラセボと比較して-13.36mg/dLおよび-13.94mg/dL減少し、食後血糖値はプラセボと比較して-8.55mg/dLおよび-12.76mg/dL減少した。低血糖(≤70mg/dLまたは≤54mg/dL)および夜間血糖値(≤70mg/dL)においては、ダパグリフロジンとプラセボの間で顕著な相違はなかった。

重症低血糖の発現は有意差なし、ケトアシドーシスは多い傾向

 重症低血糖の発現は、「DEPICT-1」試験52週間投与において10.5%および8.4% vs 11.5%(ダパグリフロジン5mg群、10mg群、プラセボ群の順、以下同様)、「DEPICT-2」試験24週間投与において6.3%および8.5% vs 7.7%だった。

 独立判定委員会により糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)であることが確実と判定された症例は、両試験を通じてプラセボ群と比較してダパグリフロジン群で数値上多く認められ、DEPICT-1試験52週間投与では4.0%および3.4% vs. 1.9%、DEPICT-2試験24週間投与では、2.6%および2.2% vs. 0%だった。多くのDKAイベントは軽症から中等症で、インスリンのうち忘れやインスリンポンプの不具合が主因だった。

 ダパグリフロジンは現在、欧州および日本において、成人1型糖尿病患者のインスリン治療への経口の補助治療として審査段階にある。

フォシーガ(アストラゼネカ)

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