増殖糖尿病網膜症に対する「エミクススタト」の第2相試験 VEGF濃度の軽度改善

2018.01.16
 窪田製薬ホールディングスは、同社の子会社のアキュセラ・インク(米国)が実施した、増殖糖尿病網膜症治療薬の候補である「エミクススタト塩酸塩」の効果を評価するための第2相試験で、網膜症に関連するバイオマーカーが改善したと発表した。

増殖糖尿病網膜症に対する「エミクススタト」の第2相試験

 同試験は、2016年4月から2017年11月まで、米国で増殖糖尿病網膜症の患者18名を対象に実施した多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験。

 被験者にエミクススタトあるいはプラセボを1日1回、12週間にわたり経口投与し、エミクススタト投与群は5mgから40mgへの漸増試験を行った。評価項目には、増殖糖尿病網膜症に関連する各種バイオマーカーの変化と、網膜出血や血管新生、視力への効果が含まれる。

 その結果、エミクススタト投与群ではプラセボ投与群に比べ、網膜症の発症や悪化に関連するバイオマーカーであるVEGF(血管内皮増殖因子)濃度の軽度改善が認められた。他のバイオマーカーには大きな変化は認められなかった。

 副作用としては、これまでの試験と同様に暗順応の遅れや軽度の色視症などの症状が認められたが、予後への影響はなく、安全性は確認されている。これらは杆体の働きを抑えるエミクススタトの薬理作用によるものと考えられる。

「エミクススタト」が視覚サイクルを調節 網膜の代謝を軽減し酸素需要を減らす作用

 眼球の奥にある網膜には、脳に映像を認識させるために光を電気信号に変える働きをする「視覚サイクル」がある。「RPE65」と呼ばれる分子内反応を触媒する異性化酵素は、視覚サイクルに不可欠な酵素。エミクススタトは、このRPE65に特異的に作用し、その働きを抑制する。これにより、網膜疾患の原因と考えられているビタミンA由来の毒性代謝産物の生成や網膜が低酸素状態になるのを防ぐと考えられている。

 網膜は暗い環境下では視覚サイクルによる代謝が高く、より多くのエネルギーと酸素を消費する。増殖糖尿病網膜症は、慢性的な高血糖により血流が悪くなり、網膜が低酸素状態になり、酸素を供給するために病的な血管新生を引き起こしたり、眼底出血が生じたりする疾患。

 血管新生は、糖尿病による眼疾患のもっとも進行した段階の病態にみられ、視力喪失につながる。「エミクススタト」には視覚サイクルを調節する働きがあり、網膜の代謝を軽減するとともに網膜の酸素需要を減らす。暗環境下で酸素消費量を軽減させるエミクススタトの効果は非臨床試験にて示されている。既存の硝子体内注射などの侵襲的な治療法とは異なり、「エミクススタト」は経口で投与できる。

 世界の増殖糖尿病網膜症の罹患数は1,900万人超で、2020年までには約2,200万人に達すると予想されている。糖尿病網膜症罹患者数は世界で1億500万人で、糖尿病有病者数4億1,500万人の25%以上に相当する。

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