世界糖尿病デー 「インスリン50年賞」インスリン治療を続けて50年

 インスリン治療を50年以上継続している糖尿病患者を表彰する「リリー インスリン50年賞」の表彰式が、世界糖尿病デーを前に、11月7日ホテルオークラ東京で開催された。第15回にあたる今年は15名が受賞した。
「リリー インスリン50年賞」日本では119人が受賞
 「リリー インスリン50年賞」は、米国でイーライリリー社が1974年に設立した。これまでに米国を中心に1万4,000名以上の患者が受賞している。日本でも2003年より表彰が開始され、これまでに119名の患者が受賞した。

 第15回となる今年は15名が受賞した。50年以上にわたる糖尿病やインスリン治療の道のりを振り返りながら、糖尿病患者への励ましのメッセージを熱く語った。受賞者には、名前を刻印した銀製のメダルと、世界糖尿病デーのシンボルカラーの「青いバラ」のコサージュが贈られた。
「インスリン50年賞」メダルとコサージュ

第15回「リリー インスリン50年賞」表彰式
※15名が受賞し、うち11名が表彰式に参加。公開を了承した受賞者の情報のみ公開されています。
今回授賞された方々
奥野直子さん(東京都、インスリン治療歴50年)、小野愛美さん(滋賀県、インスリン治療歴50年)、木村卓司さん(東京都、インスリン治療歴50年)、小林孝さん(山梨県、インスリン治療歴53年)、金久仁夫さん(秋田県、インスリン治療歴50年)、髙田薫さん(東京都、インスリン治療歴50年)、乕谷昌子さん(東京都、インスリン治療歴51年)、廣前道子さん(長野県、インスリン治療歴50年)、藤井安重さん(鳥取県、インスリン治療歴50年)、本多広太郎さん(富山県、インスリン治療歴50年)、山本千惠子さん(愛媛県、インスリン治療歴50年)、渡部藤枝さん(愛媛県、インスリン治療歴58年)、渡邉龍一さん(新潟県、インスリン治療歴50年)

「リリー インスリン50年賞」のこれまでの受賞者プロフィールは下記サイトで紹介されています。
インスリン療法を続けて50年 これから始める人に元気と勇気を
 「リリー インスリン50年賞」の受賞者は、インスリン製剤の進歩に歩調を合わせるようにして人生を歩んだといえる。受賞者がインスリン療法を開始した1960年代には、糖尿病患者は現在では考えられないような多くの困難を乗り越えなければならなかった。

 50年間インスリン治療を続けるために、患者とその家族、主治医や医療スタッフが三人四脚で取り組んだ。受賞者の主治医からは「インスリン治療を頑張っていらっしゃる方、インスリン治療をこれから始めようという方に、インスリン50年賞を受賞した方々のお姿を見てもらうことで、元気と勇気を感じてもらえれば幸いです」というコメントが聞かれた。

 受賞者のひとりは29歳のときに1型糖尿病を発症。「この病気になっていなかったら違う人生があったかもしれないと考えることもありますが、生きていくのに自由度が低くなったと思ったことは、ほとんどありませんでした」「自分の一生は自分で導くもの。自分の体は自分で守ります。病は十人十色、病気の状態を知っているのは自分自身です」と話した。

 もうひとりの受賞者は8歳で1型糖尿病を発症。その後、臨床検査技師の資格を取得し、糖尿病療養指導士も取得し、現在は糖尿病患者の教育入院を担当している。「好きなものを食べられないことはストレスになる。そんなときは、いつでも食べられないわけではないと話しています。同じ糖尿病患者さんにストレスを感じない、自分なりの生活方法について話しています。病気だからといって諦めず、自分らいし人生を大いに楽しんで欲しい」と言った。

 18歳で1型糖尿病を発症した受賞者は「インスリン注射を続け、血糖値をコントロールすれば、普通の人と同じように生活できる」と主治医から励まされ、治療に積極的に取り組むようになった。「以前に比べ1型糖尿病についての理解は広がっていますが、治らない病気なので、病気と仲良く末永く付き合っていきたい」「息子は結婚して2人の元気な子供に恵まれている。息子夫婦から幸せをたくさんもらっています」と言う。
50年前のインスリン療法は多くの困難を伴った
 インスリン製剤や注入器は50年間にめざましく進歩し、インスリン療法を開始・継続する患者の負担は軽くなっている。現在は、患者の病態や治療に合わせて、作用の現れる時間や持続する時間の異なるさまざまなタイプのインスリン製剤が開発されており、インスリン製剤の選択肢は広がっている。

 インスリンは20世紀最大の医薬品の発明ともいわれる。インスリンは1921年にカナダのトロント大学のフレデリック バンティングとチャールズ ベストによって発見された。その翌年にイーライリリー社がはじめてインスリンの製剤化に成功。1923年に世界で最初のインスリン製剤「アイレチン」が発売され、治療に使われるようになった。当時インスリンはミラクル(奇跡)の薬といわれるほど貴重だった。

 日本でインスリン自己注射の保険適用が始められたのは1980年代になってからのこと。それまでは自宅でのインスリン自己注射は認められておらず、注射は原則として病院など医療機関で行わなければならなかった。また、血糖自己測定が保険適用になったのは、1986年になってからだ。
インスリン療法はめざましく進歩している
 インスリン製剤も、速効型インスリンや中間型インスリンしかなく、現在治療に使われている使いやすいペン型注入器や、注入器とインスリン製剤が一体になったキット製剤も当時はなかった。インスリン療法を行っている患者は、バイアル(注射剤を入れるための容器)から製剤を吸い出して注射をした。当時の注射針は太く長く、注射には痛みが伴い、使用するごとに煮沸消毒が必要だった。

 イーライリリー社が遺伝子組換えによる世界初の医薬品ヒトインスリンを発売したのは1982年のこと。さらに同社は、1996年に超速効型インスリンアナログであるインスリンリスプロを、1999年にインスリンリスプロ混合製剤を発売した。

 現在では、健康な人のインスリン分泌パターンを再現するために、多種多様なインスリン製剤が使われている。インスリン療法は個々の病状や生活に合わせて、より安全に行える時代になった。より生理的なインスリン動態に近づけたインスリン製剤も開発され、多くの糖尿病患者の血糖コントロールに役立てられている。

 注射針も31G(0.25mm)、32G(0.23mm)といったきわめて細く短いものが使われており、インスリン療法を始めた患者からは「痛みを感じないので驚いた」という声がよく聞かれる。

 日本糖尿病協会理事長で関西電力病院総長の清野裕先生は、「お元気に50年間インスリン治療を続けてこられたことは大変に貴重なことで敬服いたします。皆様の貴重な体験を、ぜひとも後へ続く若い患者さんに伝えていって欲しい。現在の日本は糖尿病治療の選択肢が増えており、適切に自己管理すれば、糖尿病でない人とほとんど変わらない寿命をまっとうすることが可能です」と、受賞者たちの姿に感動の意をあらわした。

 日本糖尿病学会理事で東京慈恵会医科大学主任教授の宇都宮一典先生は、「50年賞を受賞した患者さんと主治医の先生方に、心から敬服とお祝いを申し上げます。50年前は糖尿病の治療選択肢は非常に乏しくご苦労も多かったと思いますが、本日皆様のお顔を拝見して、感謝と喜びの表情にあふれていることに非常に感激いたしました。糖尿病医療の進歩を多くの患者さんが享受できるようにしていくことが、今後の医療の課題です」と述べた。

「リリー インスリン50年賞」のこれまでの受賞者プロフィールは下記サイトで紹介されています。
[Terahata]

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