糖尿病網膜症の患者はうつ病のリスクが高い うつ病の19%に網膜症が関連

2016.07.08
 重度の糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫は失明や視力障害のリスクを高めるだけでなく、うつ病や不安症のリスクも高めることが、メルボルン大学のGwyneth Rees氏らの調査で明らかになった。結果は「JAMA Ophthalmology」オンライン版に発表された。

網膜症が心理的な健康を低下させる危険因子に

 糖尿病網膜症(DR)は糖尿病の細小血管合併症として一般的にみられる、無症状の非増殖性段階(NPDR)と前兆となる増殖性段階(PDR)によって特徴づけられる進行性の眼疾患だ。

 PDRステージは「糖尿病黄斑浮腫」(DME)とともに、糖尿病患者の失明の主因となっている。DMEは糖尿病のどの病期においても起こりえる疾患だ。

 Rees氏らは、糖尿病の眼疾患の合併と心理的な負担についての関連を明らかにするため、罹病暦が13年(中央値)の糖尿病患者519名を対象に調査した。

 被験者のDRとDMEの進行度と重症度を特定するために、包括的な眼検査と視力検査を行い、同時にうつ病と不安症の症状の有無についても評価した。

 うつ病の陽性判定を受けた患者は80人(15%)、不安症の陽性判定を受けた患者は118人(23%)だった。多因子の影響を考慮し調整し解析した結果、進行したNPDR/PDRは独立してうつ病の症状に結び付けられることが判明した。

 うつ病あるいは不安症の病歴は61%でうつ病の徴候に影響しており、うつ病の兆候の全体の19%で進行したNPDRあるいはPDRが関連していた。一方、DMEはうつ病の症状と結び付けられなかった。

 「進行したPDRは中程度あるいは進行した視力障害を引き起こし、DMEを除いて、糖尿病患者のうつ病を引き起こす単独のリスク要因となることが示された」と、Rees氏は述べている。

 「進行した糖尿病網膜症は心理的な健康を低下させる危険因子となり、その進行を抑えることがうつ病を予防するめに有用である可能性がある」と指摘している。

Vision-Threatening Stages of Diabetic Retinopathy Associated with Higher Risk of Depression(JAMA Network 2016年7月7日)
Association Between Diabetes-Related Eye Complications and Symptoms of Anxiety and Depression.
JAMA Ophthalmology, 2016; DOI: 10.1001/jamaophthalmol.2016.2213

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