EMPA-REG OUTCOME試験の新しいデータを発表 SGLT2阻害薬が腎アウトカムを改善 ADA2016

2016.06.17
 心血管疾患を有する2型糖尿病患者を対象に、エンパグリフロジンを標準治療に上乗せしたところ、腎疾患の新規発症または悪化のリスクを、プラセボと比較して39%低下させたことが明らかになった。
 エンパグリフロジンは、標準治療に上乗せした場合に腎アウトカムを改善する可能性が認められたはじめてのSGLT2阻害薬となった。このEMPA-REG OUTCOME試験の結果は「The New England Journal of Medicine」に掲載され、第76回米国糖尿病学会(ADA2016)で発表された。

腎疾患の進行を抑制するエビデンスが認められたはじめてのSGLT2阻害薬

 EMPA-REG OUTCOME試験は、世界42ヵ国、7,000人以上の心血管疾患の既往歴を有する2型糖尿病の患者を対象とした長期多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験。標準治療にエンパグリフロジン(10 mgまたは25 mg、1日1回投与)を上乗せした場合の効果について、標準治療にプラセボを上乗せした場合と比較して評価した。標準治療は、他の糖尿病治療薬および心血管治療薬(血圧やコレステロールの治療薬を含む)だった。同試験の主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中のいずれかの初回発現までの時間と定義さた。

 中央値3.1年の観察期間において、エンパグリフロジンは、プラセボと比較すると、心血管死、非致死的心筋梗塞、または非致死的脳卒中のリスクを14%有意に低下させた。心血管死のリスクは、プラセボと比較して38%低下し、非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中のリスクに有意差は認められなかった。

 また、エンパグリフロジンはプラセボと比較し、それぞれのイベントにおいて次の有意な変化をもたらした。
・ 腎置換療法(透析など)の開始を55%減少
・ 血中クレアチニン(通常、腎臓によって濾過される老廃物)の倍化を44%減少
・ マクロアルブミン尿への進行を38%減少

 さらにエンパグリフロジンは、時間の経過に伴う腎機能の低下に関しても、プラセボと比較して有意に抑制した。同試験に参加した患者の大部分は、2型糖尿病に伴う腎疾患に対して推奨される標準治療薬(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬)を既に服用していたが、このような標準治療に上乗せした場合でも、エンパグリフロジンの腎に対する効果が認められた。

 事後に行った部分集団解析の結果によると、ベースライン時における腎機能障害もしくはアルブミン尿の有無に関わらず、エンパグリフロジンによる一貫した腎アウトカムのリスク低下が認められた。また、ベースライン時の腎機能障害の有無を問わず、重篤な有害事象および治験薬の中止に至った有害事象に関しては、エンパグリフロジンとプラセボとの間で同程度だった。腎疾患による死亡は、エンパグリフロジン群で3例(0.1%)発現し、プラセボ群では発現しなかった。

 「全世界の2型糖尿病患者の2人に1人は腎疾患を発症し、腎不全を経て最終的には透析が必要な状態に至るおそれがある。この事実をふまえると、本試験の結果は臨床的に非常に重要だ。糖尿病は、患者が透析治療に至る最大の原因となっており、この重大な医学的ニーズへの対処が期待できる新規治療薬は必要不可欠だ」と、ドイツ・ヴュルツブルク大学病院の腎臓病・高血圧部門主任クリストフ・ワナー教授は述べている。

第76回米国糖尿病学会(ADA2016)

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