SGLT2阻害薬「高齢者への使用では注意が必要」 順天堂大・綿田教授が講演

2014.04.18
 アストラゼネカと小野薬品工業は4月17日、共同セミナー「糖尿病の新しい治療オプション SGLT2阻害剤」を開催。順天堂大学医学部内科学代謝内分泌代謝学講座の綿田裕孝教授が、臨床データを中心に、2型糖尿病治療の新たな選択肢であるSGLT2阻害薬について展望を語った。

フォシーガは世界ではじめて承認・発売 2年間の使用実績

 同セミナーは3月24日、販売承認申請を提出していた選択的SGLT2阻害薬「フォシーガ(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)」が2型糖尿病を効果・効能として、厚生労働省より承認を取得したことを受けて開催されたもの。同剤はアストラゼネカと小野薬品工業が「フォシーガ錠 5mg、10mg」という名で販売。ブリストル・マイヤーズが製造し、2社に対して供給を行う。

 SGLT2阻害薬は、これまでの糖尿病治療薬とは作用機序がまったく異なる薬として注目を集めている。血液中の過剰なグルコースを尿とともに体外へ排出させ、糖の血中濃度を低下する働きがあり、インスリンを介さずに空腹時血糖および食後高血糖を改善する。体重減少や血圧低下の作用も報告されている。

 綿田教授は、国内糖尿病患者の平均HbA1c値は、2009年のDPP-4阻害薬などの登場でやや低下したものの、まだ半数は合併症予防の目標値である7.0%未満を達成できていないことを説明。食生活の変化などにより肥満傾向も徐々に進んでいるとして、「SGLT2阻害薬は内臓脂肪が認められる患者には良い治療が期待できる」と述べた。

 国内第3相試験では、ベースライン値から52週のHbA1cは、フォシーガ単独投与で0.66%、併用投与で0.68%、それぞれ低下し、HbA1c値が悪いほど平均変化量は拡大した。体重の52週の平均変化量は、フォシーガとSU薬の併用では1.75kg、フォシーガとDPP-4阻害薬との併用では2.42kg減少した。「内臓脂肪、皮下脂肪の両方を低減させる効果がある。欧米人はもちろん、肥満が増えている日本人にとっても、大きな特性といえます」と、綿田教授は解説した。

 SGLT2阻害薬は国内では6成分が相次いで発売される予定で、先行するアステラス製薬の「スーグラ錠」が4月17日に販売を開始。3月に承認を取得した「フォシーガ」など3成分がこれに続く見込みだ。

 このうちフォシーガは世界ではじめて承認・発売されたSGLT2阻害薬で、EUでは2012年に承認され2年間のデータがある。「SGLT2阻害薬の作用機序は既存の2型糖尿病治療薬と全く違い、これまでのどの糖尿病治療薬とも併用できる。1日1回投与で、フォシーガは朝投与の制限がなく患者さんにあった服用ができるという点もメリットとなる。長期にわたる血糖コントロールの実現が期待できる」と綿田教授。

自覚症状のあらわれにくい高齢者では注意が必要

 一方で、「SGLT2阻害薬は、その作用機序から感染症(性器感染症・尿路感染症)と浸透圧性利尿による頻尿・脱水への注意が必要となります」と指摘した。糖尿病患者では感染を伴いやすいので、陰部を清潔に保つよう指導する必要があるという。

 また、日本に多いやせ型の患者や、副作用の脱水症状を自覚しにくい高齢者への投与は限定して使用すべきだとした。SGLT2阻害薬の継続投与によって増加する尿量は1日あたり200~600mLであり、尿量の増加によりヘマトクリット値がわずかに上昇するという。「頻脈や起立性低血圧などの体液量減少の兆候は、まれではあるが報告はあるため、自覚症状のあらわれにくい高齢者では注意が必要です」と指摘。

 特に注意を要するリスクとして、「高齢化により筋肉量は低下するので、高齢者への使用では、骨格筋分解によるサルコペニアに注意が必要」とし、「潜在的リスクに十分注意して、適正使用を徹底する必要がある」との考えを強調した。

アストラゼネカ
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