グラルギンとDPP-4阻害薬の併用 HbA1cが1.6%改善 ALOHA2スタディ

2013.12.13
 日本人の2型糖尿病患者への持効型インスリン製剤「ランタス」(グラルギン)とDPP-4阻害薬の併用療法により、HbA1cが投与前に比べて1.6%低下したとする「ALOHA2 スタディ」の結果が発表された。DPP-4阻害薬と基礎インスリンの併用療法によって、空腹時血糖(FPG)と食後血糖(PPG)の双方も有意に低下した。

 これを受けて、東京医科大学内科学第三講座主任教授の小田原雅人氏は、「DPP-4阻害薬時代におけるインスリン療法の新たなエビデンス」と題して、都内で開催されたメディアセミナーで講演した。小田原教授は「空腹時血糖値を低下させることでインクレチン効果が高まり、食後高血糖値も大きく低下する」と指摘した。

6割がグラルギンとDPP-4阻害薬を併用

 ALOHA2 スタディは、グラルギンとDPP-4阻害薬を含む経口血糖降下薬の併用療法を行う24週間の前向き観察研究で、対象となったのは日本人の2型糖尿病患者(20歳以上、グラルギン投与開始直前の4週間以内のHbA1c 6.5%以上)だ。

 ALOHA2 スタディに先行して実施されたALOHAスタディは、DPP-4阻害薬の発売前に実施されたため、グラルギンと併用する経口血糖降下薬にDPP-4阻害薬は含まれていなかった。今回のALOHA2 スタディは、DPP-4阻害薬を含んでいる点が前回と異なる。

 有効性の解析対象は1,629例(平均年齢61.8歳、罹病期間10年未満34.7%、BMI 25.0、HbA1c 9.58%、FPG 204mg/dL)。投与された経口血糖降下薬の内訳は、SU薬(71.45%)、DPP-4阻害薬(60.65%)、ビグアナイド薬(48.62%)、チアゾリジン薬(16.51%)、α-グルコシダーゼ阻害薬(30.08%)、グリニド薬(6.69%)だった。

高い患者の満足度 アドヒアランスは91%が「指示通り」

 24週間追跡した結果、平均HbA1cは9.56%から7.94%(-1.61%、P<0.0001)、FPGは203.0mg/dLから148.6mg/dL(-54.4mg/dL、P<0.0001)、PPGは267.0mg/dLから192.5mg/dL(-74.5mg/dL、P<0.0001)と、いずれもベースラインに比べて有意な低下が認められた。

 平均体重は65.65kgから66.14kg(+0.5、P<0.0001)で、大きな変化はなかった。また、副作用は103例(6.32%)に認められた。主な副作用は低血糖症であり、内訳は重症が7例(0.43%)、症候性は35例(2.15%)、夜間6例(0.37%)。

 また、グラルギンとDPP-4阻害薬などの併用療法では、患者の満足度も高いことが示された。糖尿病治療満足度質問表(DTSQ)により患者の総合満足度を評価したところ、21.9であったスコアは25.5と有意に改善していた(P<0.0001)。

 EQ-5Dインデックススコア(活動での障害、日常生活の管理、痛み、不快感、不安感など5項目を点数化)と、EQ-VASスコア(EQ-5Dインデックスを視覚的に評価)でも評価。EQ-5Dインデックススコアはベースラインの0.890から0.909に改善し(P=0.0005)、EQ-VASスコアも61.51から69.35と有意な改善がみられた(P<0.0001)。

 さらに、担当医師がアドヒアランスを、「指示通り」「時々遵守できず」「遵守できず」の3区分で評価したところ、91%が「指示通り」に行っていることが分かった。

DPP-4阻害薬の登場によりインスリン導入が遅れている

 2009年に最初のDPP-4阻害薬が発売され、その2年後にはインスリンとの併用療法が可能になった。DPP-4阻害薬とインスリン製剤の作用機序は異なることから、両薬剤の併用による上乗せ効果も期待されている。

 日本人糖尿病患者は欧米人に比べて糖尿病発症初期からインスリン分泌が低下しているため、インスリン分泌を適度に刺激するDPP-4阻害薬は日本人向きの薬であるといえる。一方で、DPP-4阻害薬の効果に期待するあまり、インスリンを導入する時期が遅れている傾向がみられるという。

 小田原教授は、「DAWN JAPAN スタディ」でインスリン療法に対する患者の抵抗感などを理由に、インスリンが適切な時期に導入されていない点が明らかになったことを指摘。「HbA1c 8%以上の患者では空腹時血糖値の是正が必要。それによりインクレチン効果はより高まる」との考えを示した。

 ALOHA2 スタディでも、ベースラインの平均血糖値は9.58%と高かった。「HbA1c 8%の段階でインスリンを導入することで、確かな血糖降下作用を得られる。実際にインスリンを導入した患者の多くで治療の満足度は高い。適切な時期にインスリン導入を図るべきであり、いかに導入時期を早めるかが今後の課題となる」と、小田原教授は強調した。

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