インクレチン関連薬の安全性対策について 厚生労働省『医薬品・医療機器等安全性情報』

2010.12.27
 厚生労働省は24日、『医薬品・医療機器等安全情報』No. 275を発行した。この中で、新規作用機序のインクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)について、市販直後調査期間中に集積された国内の副作用報告等から、主にインクレチン関連薬とスルホニル尿素(SU)薬との併用についての注意事項と、インスリン製剤からGLP-1受容体阻害薬への切り替えについての安全対策が示された。

1.インクレチン関連薬とスルホニル尿素(SU)薬との併用における
低血糖の発現についての安全対策

  対 象:DPP-4阻害薬GLP-1受容体作動薬

 DPP-4阻害薬「シタグリプチンリン」について、販売開始から約4カ月間の市販直後調査中に、低血糖を発現した症例が29例報告され、因果関係を否定できないと評価された症例が25例あった。このうち21例ではSU薬を併用しており、SU薬の用法・用量で定められている維持用量を超え、最大用量を併用していたものが8例あった。

 このような状況から、専門家による検討を踏まえ、2010年4月27日に、シタグリプチンリンの使用上の注意の「慎重投与」「重要な基本的注意」「重大な副作用」の項の低血糖に関する記載に、以下について追記し、さらなる注意喚起を図るよう、改訂指示を行った。

  • 1.とくにSU薬と併用する場合に低血糖のリスクが増加すること
  • 2.SU薬との併用において重篤な低血糖症状が現れ、意識消失を来す例も報告されていること
  • 3.SU薬による低血糖のリスクを軽減するため、SU薬と併用する場合には、SU薬の減量を検討すること

 なお、2010年4月時点で、その他のインクレチン関連薬は販売開始直後あるいは販売開始前であったが、作用機序などを考慮した結果、これらの薬剤についても同様の注意喚起が必要であると考えられ、同日に使用上の注意の改訂指示を行った(医薬品・医療機器等安全性情報No.269(2010年5月26日発行)参照)。

2.インスリンからGLP-1受容体作動薬への切り替えに伴う
糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖の発現についての注意喚起

  対 象:GLP-1受容体作動薬

 GLP-1受容体作動薬「リラグルチド」は、GLP-1受容体に結合することで、インスリンの分泌を促進して血糖値を下げる薬剤であるため、インスリン分泌能のない1型糖尿病患者への投与は禁忌である。また、インスリン治療が不可欠な2型糖尿病患者への投与には注意が必要である。

 しかし、リラグルチド発売後、約3カ月間の市販直後調査中に、糖尿病性ケトアシドーシスを発症し死亡した症例が2例報告された。これらの症例は、いずれもインスリンからリラグルチドへの切り替えを行っていたことから、ただちに製造販売業者から医療機関に対して、上記の適正使用を徹底するための情報提供を行うよう指示した。

 この後、情報提供に伴って類似の副作用症例が収集され、2010年10月7日までに糖尿病性ケトアシドーシスが4例(うち死亡2例)、高血糖16例が報告された。これら20例のうち、17例がインスリンからリラグルチドに切り替えた後に発現したものであった。

 このような状況から、専門家による検討を踏まえ、2010年10月12日に、使用上の注意の「重要な基本的注意」において、以下を追記する改訂指示を行った(糖尿病治療薬「ビクトーザ皮下注18mg」に関する医薬関係者向け注意喚起等について(厚生労働省))。

  • 1.リラグルチド(遺伝子組換え)はインスリンの代替薬ではないこと
  • 2.投与に際しては、患者のインスリン依存状態を確認し、投与の可否を判断すること
  • 3.インスリン依存状態の患者で、インスリンからリラグルチド(遺伝子組換え)に切り替え、急激な高血糖および糖尿病性ケトアシドーシスが発現したこと

 また、添付文書の改訂に加えて、製造販売業者から医療機関に対して、インスリン依存状態の患者へはインスリンからリラグルチド(遺伝子組換え)への切り替えは行わないこと、既に切り替えを行った患者に対しても、血糖コントロールの状態を確認するなど、インスリン治療に戻す必要のある患者に対して必要な処置を行うことを徹底するための情報提供を直ちに実施するよう指示がなされた(ビクトーザの安全性に関する情報(2010年10月、ノボ ノルディスク ファーマ))。

 その後、2010年10月27日に承認されたGLP-1受容体作動薬「エキセナチド」についても、販売開始時からリラグルチドと同様に、添付文書においてインスリンからの切り替えにかかわる注意喚起を実施することとしている。

医薬品・医療機器等安全性情報 No. 275(厚生労働省)

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