38巻2号(2021年03月発行)

特集:社会的スティグマへのアドボカシー活動の現状
―糖尿病とともに無理なく不利なく暮らせるために―

38巻2号

糖尿病をもつ人への社会的スティグマに対するアドボカシー活動

山田祐一郎/関西電力病院 糖尿病・内分泌代謝センター

1. 世界における糖尿病のアドボカシーの現状

津村和大/川崎市立川崎病院 臨床研究支援室/病態栄養治療部

 患者や家族,そして医療者が漠然と感じていたスティグマ(stigma)の概念を明確に共有し,これを克服するためのアドボカシー(advocacy:権利擁護)活動が,日本糖尿病協会と日本糖尿病学会の合同委員会のもと推進され,糖尿病医療は大きな転換点を迎えている.医療におけるアドボカシーの歴史や,世界における糖尿病のアドボカシー活動を紹介し,スティグマを取り除くために糖尿病医療の現場で求められる視点や,これからの患者教育・医療者教育のありかたについて概説する.

2. 「生活習慣病」というラベルの歴史と国内外の動向,そして功罪

橋本英樹/東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 保健社会行動学分野

 日本語の「生活習慣病」という訳語は,個人の嗜好・能力・意思を超えて影響する社会・経済・文化の影響を軽視している.すでに国際的には,「健康の社会的決定要因」を考慮した糖尿病診療の確立に向けて進んでいる.糖尿病と闘う人々とそれをささえる糖尿病診療専門家が,「生活習慣病」という不適切なラベルを捨て去る必要があるのだ.「生活習慣病」概念の起源とその見直しの歴史を振り返り,「生活習慣病」という用語がもたらした功罪と今後の課題を明らかにする.

3. 「糖尿病」という病名と糖尿病への偏見

庄嶋伸浩・山内敏正/東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科

 死に至る病であった糖尿病が,治療法の進歩により健常人と同等に生存できることは明らかである.その一方で,糖尿病は患者本人が生活習慣を改善すれば治癒するとの誤解があるため偏見を生んでいる.「糖尿病」という病名に含まれる"尿"に否定的な印象があり,病名により不利益をこうむる可能性もある.Diabetes Mellitusを糖尿病と訳した歴史的背景をひもとき,他疾患における病名変更の効果にも触れながら,なぜ糖尿病という病気は偏見を生み出してきたかを探る.

4. 看護においてスティグマはどう考えられてきたか

黒江ゆり子/岐阜県立看護大学

 人間は,自分がよく知らない病気について,不安に思ったり,警戒したり,脅えたりする.その病気とともに生きている人々と自分とを区別し,それがスティグマにつながる.保健医療職者は,自分たち自身が病気とともにある人々にスティグマを付与しているかもしれない事実を戒め,語りを聴く技をもって,一人ひとりのケアを丁寧に実施する必要がある.本稿では,糖尿病におけるスティグマが看護のなかでどのように捉えられてきたのかを数々の研究による知見から紹介し,どのようなケアが必要なのかを思索する.

5. 実臨床における糖尿病患者のもつスティグマ

田中永昭/関西電力病院 糖尿病・内分泌代謝センター

 糖尿病患者のスティグマについては「糖尿病治療ガイド2020-2021」で取り上げられ,治療目標達成のためには看過できない問題とされている.われわれ医療従事者は糖尿病患者と共通の目標に向かってともに歩むべき責務を負っているにもかかわらず,支援どころか反対にスティグマを与えてしまったとしたら,糖尿病患者は大きな失望を感じることであろう.糖尿病の実臨床において医療従事者がスティグマに関与しうる要因と,医療従事者がスティグマを患者に付与せずに目標達成を支援する方策について検討する.

6. Self-stigma(セルフスティグマ)が糖尿病療養に及ぼす影響

加藤明日香/東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 保健社会行動学分野

 1960年代,米国の社会学者・Goffmanがすでに糖尿病スティグマの存在とその特徴について言及していた.その後,精神疾患やHIV/AIDS領域などでスティグマ研究が開始され,糖尿病においては,2010年以降ようやく中心的な研究課題となった.糖尿病スティグマの主な研究対象は,experienced stigmaとperceived stigmaであったが,日本においてはself-stigmaが中心的な研究課題とされてきた.2020年は糖尿病スティグマの研究全体が飛躍的に進展し,多くの新しい知見が得られた.2型糖尿病患者のスティグマに焦点を当て,糖尿病療養に与える影響についてself-stigmaを中心に最新のエビデンスを紹介する.

連載・その他

・ 医師・医療スタッフが行く 全国病院・クリニック訪問
・ FORUM
・ OVERSEAS
・ SERIES 糖尿病と保険診療
・ SPOT 歯科と歯周と糖尿病と
・ 糖尿病の療養指導Q&A
・ FROM DIABETES STAFFS
・ STUDY 続々・そこが知りたかった 糖尿病の大規模臨床試験
・ ESSAY 鉄・輪だより―鉄人糖尿病ドクターによる銀輪の旅―
・ REPORT 子どもたち/ AYA世代の糖尿病―活動・実践ダイアリー―

●A4・120ページ 本体\2,700+税 1984年より発行 医歯薬出版(03-5395-7610)
 出版社ホームページ→PRACTICE

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