38巻1号(2021年01月発行)

特集:糖尿病と感染症
―新型コロナウイルスの時代を生き抜く―

38巻1号

糖尿病と感染症―新型コロナウイルスとともに生きる時代に

森 保道/虎の門病院 内分泌代謝科 糖尿病・代謝部門
野田光彦/国際医療福祉大学市川病院 糖尿病・代謝・内分泌内科

1.糖尿病患者における感染症の現況―オーバービュー

長谷川 諒・森 信好/聖路加国際病院 感染症科

免疫機構は自然免疫と獲得免疫とに大別され,自然免疫では「バリア」と「好中球」が,獲得免疫では「液性免疫」と「細胞性免疫」が重要である.これらの免疫についてその役割や機能を紹介しつつ糖尿病患者の免疫状態をサマライズし,また糖尿病における感染症発症と増悪のメカニズムや糖尿病患者に多い感染症とその治療・予防の課題について詳述する.

2.糖尿病とウイルス感染症
 2-1.糖尿病とウイルス感染症―総論

山室亮介・荒岡秀樹/虎の門病院 臨床感染症科

糖尿病と関連するとされるウイルスの種類は,それほど多くはない.また,糖尿病患者においてウイルスへの自然免疫・獲得免疫がどう変化しているのか,正確にはいまでもわかっていないものの,部分的な理解は徐々に進んでいる.糖尿病とウイルス感染症の関係に加え,特に臨床で遭遇する機会が多いインフルエンザ,水痘・帯状疱疹をはじめとしたウイルス感染症の疫学・病態・治療と予防について解説する.

 2-2.糖尿病と新型コロナウイルス感染症―糖尿病医の視点から

坊内良太郎/国立国際医療研究センター 糖尿病内分泌代謝科/糖尿病研究センター糖尿病情報センター

糖尿病患者は非糖尿病患者より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症リスクが高いという明確なデータは存在しない一方,COVID-19の重症化リスクが非糖尿病患者よりも高いとする研究成果が蓄積されてきており,入院後の適切な血糖管理が重症化リスクを下げる可能性が高いと考えられている.また,COVID-19の治療薬には,糖代謝に影響を及ぼすものが存在する.糖尿病合併症や生活様式の多様な変化も含め,糖尿病専門医の視点から見たCOVID-19の特殊性,糖尿病患者の診療における注意点などを概説する.

 2-3.糖尿病と新型コロナウイルス感染症―感染症医の視点から

萩原真生/愛知医科大学 分子疫学・疾病制御学寄附講座
山岸由佳・三鴨廣繁/愛知医科大学病院 感染症科

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療における薬物について,個々の薬剤のエビデンス,用法・用量,投与時の注意点を提示した資料がウェブ上で公開されている.「日本版敗血症診療ガイドライン2020(J-SSCG2020)特別編COVID-19薬物療法に関するRapid/Living recommendations 第二版」は,国内におけるCOVID-19への効果が期待される主な薬物療法について現時点での推奨度を示している.これまでにCOVID-19に関して得られている知見から,糖尿病患者におけるCOVID-19の治療の特殊性と予防について,感染症専門医の視点から解説する.

3.高齢者糖尿病における感染症対策―市中肺炎,誤嚥性肺炎を中心に

宮下修行・尾形 誠・福田直樹・矢村明久
/関西医科大学 内科学第一講座 呼吸器感染症・アレルギー科

高齢者肺炎の多くは誤嚥性肺炎と考えられる.肺炎による死亡者の多くは65歳以上の高齢者であり,肺炎発症のリスク因子として基礎疾患の有無が重要である.糖尿病を保有する高齢者が肺炎に罹患すると入院を契機に身体機能が低下し,日常生活動作が低下する例が多い.高齢者糖尿病における呼吸器感染症について著者自身の検討も交え,予防の重要性,さらには予防に不可欠なインフルエンザワクチンおよび肺炎球菌ワクチンの特徴や接種の効果を解説する.

4.糖尿病と尿路・性器感染症―SGLT2阻害薬使用時の注意点を含めて

小内友紀子/ときわ会常磐病院 泌尿器科

尿路感染症を考える際は,治療が必要な「症候性尿路感染症(urinary tract infection:UTI)」と,治療が不要な「無症候性細菌尿(asymptomatic bacteriuria:ASB)」とを分けて考える.米国・日本いずれのガイドラインでも,糖尿病患者においてはASBのスクリーニングや治療を行わないことが推奨されている.また,わが国の市販後調査ではすべてのSGLT2阻害薬で尿路・性器感染症が報告されており,SGLT2阻害薬使用時の注意点について解説する.さらに尿路・性器感染症の臨床上注意すべき対応策についても,具体的に提示する.

5.糖尿病と軟部組織・骨感染症

富田益臣/下北沢病院 足病総合センター/糖尿病センター

新型コロナウイルス感染症の感染リスクを避けて医療機関の受診を控える人が増え,糖尿病足病変が悪化・治療遅滞に至る例も多い.糖尿病患者では骨軟部組織感染症の頻度が高く,糖尿病足病変の主な基礎病態は糖尿病性神経障害,末梢動脈疾患などによる血流障害,易感染性の三者であり,視力障害,独居,経済状況など幅広い要素も関与する.コロナ禍における対応もふまえ,軟部組織・骨感染症,特に糖尿病足病変の診断とトリアージ,遠隔診療での注意点を中心に記載する.

6.糖尿病とHIV感染症

関谷綾子/東京医科大学 臨床検査医学分野
都立駒込病院 糖尿病内科

HIV感染症は,抗HIV薬(ART)の著しい進歩,および1日1剤のみで治療可能な配合剤(STR)の上市により,長期療養時代が到来している.70歳以上のHIV感染者のうち約半数が糖尿病・高血圧・脂質異常症を合併しており,その適切な管理が現場に求められている.「HIV+糖尿病合併時の代表的な血糖降下薬の選択」に関して各種血糖降下薬の組み合わせや特徴を解説し,「最新のトピックス」として,今後糖尿病に影響を与えうるARTでの体重増加についても紹介する.

連載・その他

・ 医師・医療スタッフが行く 全国病院・クリニック訪問
・ 特別寄稿
・ FORUM
・ OVERSEAS
・ SERIES 糖尿病と保険診療
・ SPOT 歯科と歯周と糖尿病と
・ 糖尿病の療養指導Q&A
・ STUDY 続々・そこが知りたかった 糖尿病の大規模臨床試験
・ ESSAY 鉄・輪だより―鉄人糖尿病ドクターによる銀輪の旅―
・ REPORT 子どもたち/ AYA世代の糖尿病―活動・実践ダイアリー―
・ CIRCLE リス☆カン フライデーレポート
・ CONGRESS
・ WHITE BOARD

●A4・120ページ 本体\2,700+税 1984年より発行 医歯薬出版(03-5395-7610)
 出版社ホームページ→PRACTICE

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