37巻4号(2020年07月発行)

特集:糖尿病:異所性脂肪に刮目せよ!
―その意義と食事・運動・薬剤による最適解を考える―

37巻4号

特集にあたって

田村好史/順天堂大学大学院 スポーツ医学・スポートロジー
順天堂大学大学院 代謝内分泌内科学
順天堂大学国際教養学部 グローバルヘルスサービス領域

1. 骨格筋における異所性脂肪蓄積とインスリン抵抗性
─骨格筋におけるAdipoRシグナルを中心に─

岩部真人・岩部美紀・山内敏正/東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科

 これまでブラックボックスであった糖・脂質代謝における運動効果の分子メカニズムが近年明らかになってきている.そのひとつとして,アディポネクチン/アディポネクチン受容体1(AdipoR1)による調節機構が挙げられる.アディポネクチン/AdipoR1経路は運動を模倣する経路であり,アディポネクチンやAdipoR1の増加薬,アディポネクチン受容体活性化薬は"運動模倣薬"となる可能性がある.筆者らの研究を交え,アディポネクチン受容体活性低分子化合物(AdipoRon)の開発,AdipoRの立体構造解明の過程を解き明かす.

2. 心臓脂肪・血管周囲脂肪と心臓血管病

島袋充生/福島県立医科大学 糖尿病内分泌代謝内科学講座

 心臓血管周囲の異所性脂肪は「心臓脂肪・血管周囲脂肪」と総称され,心外膜脂肪(心臓上脂肪)(EAT)は心臓血管病において特に病的意義が大きい.左冠動脈前下行枝EAT厚は冠動脈疾患の危険因子であり,Framinghamリスクスコア(FRS)を組み合わせることで,その有無と重症度を簡便に予測できる可能性が報告されている.高度肥満者の減量手術前後で体重,腹部脂肪,異所性脂肪,心臓周囲脂肪の変化を調べた報告,ならびに減量手段と体重および心臓周囲脂肪量の減少率を調べたメタ解析を紹介し,心臓に蓄積する異所性脂肪の病態理解を深める.

3. 肝臓の異常脂質蓄積

中川 嘉/富山大学 和漢医薬学総合研究所 複雑系解析分野
島野 仁/筑波大学 医学医療系 内分泌代謝・糖尿病内科

 抗ウイルス薬の登場により,これまで慢性肝疾患の主な治療対象であったウイルス性慢性肝炎患者が減少し,一方生活習慣病に伴う脂肪肝,さらに進展した肝炎や肝線維化などの病像が加わった非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者が増加している.本稿では非アルコール性脂肪肝形成に関わる分子メカニズムについて,中性脂肪合成経路を活性化する転写因子SREBP,脂肪酸酸化を活性化する転写因子PPARα,へパトカインFGF21,脂質代謝を制御する新規転写因子CREBHなど,脂質代謝に関わる遺伝子発現調節の視点から概説する.

4. 膵臓における脂肪蓄積と糖尿病

小澤純二・下村伊一郎/大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学

 膵臓における脂肪蓄積は最近注目され始めた異所性脂肪蓄積のひとつであり,糖尿病の発症ないし膵β細胞機能障害といった病態だけでなく,発がんなどと深く関わりうる.豊富な自験例を中心に,その他の報告も含めて膵臓における脂肪蓄積に関わる病態,主に肝臓における脂肪蓄積との違い,糖尿病病態・耐糖能異常との関わりを述べる.さらにはGLP-1受容体作動薬およびSGLT2阻害薬といった肝臓における脂肪蓄積軽減作用が明らかな薬剤の膵臓における可能性についても言及する.

5. 異所性脂肪における脂肪組織の役割と内臓脂肪

坂本竜一・小川佳宏/九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学分野

 脂肪組織はエネルギーの需給状況に応じてダイナミックに変化し,その過程は一般に「脂肪組織のリモデリング」と定義されている.過剰エネルギーの貯蔵に細胞数増加で対応できれば,脂肪細胞サイズが閾値に達することなく,脂肪組織本来のインスリン感受性・抗炎症状態が維持される("healthy expansion").脂肪組織のhealthy expansionを増強する――つまり,過剰に蓄積した異所性脂肪を本来ためるべき脂肪組織に再分布させて異所性脂肪蓄積を改善させるという逆転の発想により,生活習慣病の発症・進展を予防できる可能性がある.

6. 異所性脂肪蓄積に対する食事・運動・薬物療法

田村好史/順天堂大学大学院 スポーツ医学・スポートロジー
順天堂大学大学院 代謝内分泌内科学
順天堂大学国際教養学部 グローバルヘルスサービス領域

 異所性脂肪蓄積の原因は複数想定されており,そのひとつの機序として食事組成や身体活動が直接影響する経路がある.高エネルギー食や栄養素の組み合わせ(特に糖質と脂質)および運動不足は骨格筋細胞内脂質(IMCL)や肝内脂質(IHL)を増加させる因子であり,一方エネルギー制限と体重減少はIHLを低下させる.また有酸素運動はIMCLを消費・減少させうると考えられる.チアゾリジン誘導体・SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬などもIMCLやIHLに対する効果を示しており,異所性脂肪を改善させる食事・運動・薬物療法に関して,豊富な先行研究もふまえ詳細に概説する.

連載・その他

・ FORUM
・ OVERSEAS
・ SERIES 糖尿病と保険診療
・ SPOT 糖尿病と母と子と
・ 糖尿病の療養指導Q&A
・ STUDY  続・そこが知りたかった 糖尿病の大規模臨床試験
・ ESSAY  鉄・輪だより―鉄人糖尿病ドクターによる銀輪の旅―
・ REPORT  子どもたち/ AYA世代の糖尿病―活動・実践ダイアリー―
・ CIRCLE リス☆カン フライデーレポート

●A4・120ページ 本体\2,700+税 1984年より発行 医歯薬出版(03-5395-7610)
 出版社ホームページ→PRACTICE

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「日本糖尿病学会・日本循環器学会 合同ステートメントの背景」 第63回日本糖尿病学会年次学術集会レポート(3)
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「運動療法の現在と今後」 第63回日本糖尿病学会年次学術集会レポート(2)
糖尿病プラクティス