37巻2号(2020年03月発行)

特集:糖尿病と心不全の新パラダイム
-かつての常識はもはや通用しない?-

37巻2号

特集にあたって

■小川佳宏/九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学
■筒井裕之/九州大学大学院医学研究院 循環器内科学

1.糖尿病における心筋障害のメカニズム

■松島将士/九州大学病院 循環器内科

 糖尿病は心不全の危険因子であるとともに増悪因子でもある.糖尿病は高血糖・高インスリン血症・インスリンシグナル異常を中心に,エネルギー代謝異常・酸化ストレス・ミトコンドリア機能異常・炎症などを介して心筋細胞肥大・細胞死・間質線維化を引き起こし,拡張障害・収縮障害に至る.本稿では,これら糖尿病による心筋障害のメカニズムを経時的に概説する.

2.糖尿病治療と心不全の予後に関する大規模臨床試験

■田中敦史・野出孝一/佐賀大学医学部 循環器内科

 ここ数年,糖尿病治療薬を用いた大規模臨床試験において心不全関連アウトカムが評価されるようになっている.なかでもSGLT2阻害薬を用いた大規模臨床試験において,同薬に高い心不全予防効果がある可能性が示唆された.これまでの糖尿病における心不全予防戦略を紹介しつつ,EMPA-REG OUTCOME,CANVAS Program,DECLARE-TIMI 58,CREDENCE,DAPA-HFといった大規模臨床試験の概要と意義をまとめ,SGLT2阻害薬の新たな可能性に触れる.

3.糖尿病合併心不全の治療戦略

■坂東泰子/名古屋大学 循環器内科

 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドラインである「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」や国外のガイドラインも踏まえ,心不全の進展ステージ(ステージA~D)に沿って糖尿病合併心不全患者に対する治療戦略を解説する.また日々の診療で特に注意すべき症状の評価や併存疾患についても具体的に言及する.

4.糖尿病と心不全に共通する骨格筋異常

■絹川真太郎/北海道大学大学院医学研究院 循環病態内科学

 糖尿病と心不全には,きわめて類似性が高い骨格筋異常が存在する.糖尿病と心不全,双方の側面から骨格筋異常の表現型や分子機序を筆者自身の豊富な研究例を通して詳細に解説する.さらに心不全における骨格筋異常の治療法としてDPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬の可能性を示唆する.心不全の運動耐容能低下や骨格筋異常に重要な役割を果たしている脳由来神経栄養因子(BDNF)についても述べる.

5.日常診療における糖尿病患者の心機能評価

■大西勝也/大西内科ハートクリニック

 糖尿病患者における心不全の診断,心機能の評価の前提として必要な心血行動態の概念について,心臓のポンプ機能の指標である"心機能曲線",左室駆出率が保たれた心不全である"HFpEF"の解説から解き明かす.次いで,日常臨床において循環器非専門医が循環器専門医にコンサルトするべきタイミングやBNPおよびNT-proBNPといった心不全の診断の指標となるバイオマーカー,さらには最重要な診断的検査といえる心エコーについて具体的かつ詳細に解説する.

6.糖尿病治療薬の作用機序と心不全治療効果

■相良理香子/九州大学病院国際医療部 国際診療支援センター
       九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学
■園田紀之・小川佳宏/九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学

 糖尿病治療薬が心不全に与える影響について,薬剤の種類ごとにその作用機序及び,各薬剤の心不全に対する安全性や注意点を大規模臨床試験やメタ解析の結果をもとに解説する.現時点では,SGLT2阻害薬が心不全予防に推奨されている糖尿病治療薬であり,逆に心不全増悪のリスクがあるチアゾリジン薬は心不全患者に対して使用を控えることが望ましい.

連載・その他

・医師・医療スタッフが行く全国病院・クリニック訪問
・FORUM
・PUBLICATION
・OVERSEAS
・SERIES 糖尿病と保険診療
・SPOT 糖尿病と母と子と
・糖尿病の療養指導Q&A
・STUDY  続・そこが知りたかった 糖尿病の大規模臨床試験
・ESSAY  鉄・輪だより―鉄人糖尿病ドクターによる銀輪の旅―
・REPORT  子どもたち/ AYA世代の糖尿病―活動・実践ダイアリー―
・CIRCLE リス☆カン フライデーレポート
・CONGRESS
・WHITE BOARD

●A4・120ページ 本体\2,700+税 1984年より発行 医歯薬出版(03-5395-7610)
 出版社ホームページ→PRACTICE

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