糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第38回 心不全の進展抑制が期待される
「経口血糖降下薬」

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 64(2020年5月1日号)

 糖尿病患者さんに多い心不全は、改善増悪を繰り返す「予後不良疾患」のため軽んじてはなりません。慢性心不全の新たな治療薬として注目されるのがSGLT2阻害薬です。糖尿病患者の大規模臨床試験で心血管死などの複合イベントが検討されたSGLT2阻害薬はエンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジンです。

■エンパグリフロジンとカナグリフロジン

 エンパグリフロジンは初めて心不全予防効果が証明されたSGLT2阻害薬です。EMPA-REG OUTCOME試験(文献1)ではハイリスク糖尿病患者の心不全入院リスクが35%、全死亡が32%低下しました。現在は糖尿病の有無に関わらないHFrEF患者(左室駆出率低下慢性心不全)3,730人対象の「EMPEROR HF-Reduced試験」が2020年6月終了予定です。また同様にHFpEF患者(左室駆出率保持慢性心不全)5,750人が対象の「EMPEROR HF-Preserved試験」は2020年10月終了予定です。次に、糖尿病患者10,142人が対象のカナグリフロジンのCANVAS試験(文献2)は、3-point MACEで14%有意に低下、心不全入院を33%、有意差は無いが全死亡を13%低下させました。続いてのCREDENCE試験でも心不全入院を39%有意に低下させ、心腎連関改善が注目されます(文献3)。

■ダパグリフロジン

 DECLARE-TIMI58試験(文献4)は17,160人の糖尿病患者対象の心不全入院等を一次評価項目とし、27%の有意なリスク減少を示しました。なお糖尿病・非糖尿病のHFrEF患者4,744人を対象としたDAPA-HF試験(文献5)では26%の有意なリスク低下で、糖尿病の有無に関わらず有効性が証明されました。現在進行中の試験にはHFpEF患者4,700人が対象のDELIVER試験があり、DAPA-HFと同じ評価項目で、2021年6月発表予定です。

■新たな期待と留意点

 循環器専門医からSGLT2阻害薬は注目され、近い将来「非糖尿病心不全患者」に適応拡大されるかもしれません。しかし血糖降下薬を非糖尿病患者に使用するには、正常血糖ケトーシス、糖質過剰制限、大量飲酒、長距離走時など、安全のための慎重な処方が極めて大切と考えます。

参考文献

  • 1)Zinman B et al. N Engl J Med.37(224):2117-2128, 2015
  • li> 2) Neal B.et al. N Engl J Med. 377(7):644-657, 2017 li> 3) 加藤光敏 BOX&Net. No.62. 第36回P10, 2019 li> 4) Wiyiott S.D. N Engl J Med. 380(4): 347-375, 2019 li> 5) McMurray J.J.V. et al. N Engl J Med. 381(21): 1995-2008, 2019

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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